第3話 ぼっちが人と関わりたがらないのは駄目ですか
放課後白井先生に呼び出されることになった俺こと蓮場諒は憂鬱な昼休みを過ごし、午後の授業の殆どを寝過ごしながら放課後を迎えた。
「白井先生と話すと終盤からは自分の仕事の愚痴とかになってくるんだよな。だからあまりあの人とは話す気にはなれないんだよな」
そう自分も愚痴りつつも歩みを進めたくない足をどうにか職員室に向けつつ向かうことにした。
「失礼します、2年C組の蓮場諒です。白井先生に用事があって参りました」
「おお、きたか蓮場。こっちだこっち」
居酒屋で先に来てた上司が言ってそうな言葉だなと思いつつ白井先生の元に向かった。
先に呼び出していた3人組はとうに帰っていたらしくすぐにああ、これは俺の事について話をされるなと内心思いつつ、
「白井先生、どのような用件で自分を呼び出したんですか」
「いや、まあ端的に話すとお前のクラスでの立ち位置についてだな」
ほらやっぱりなと思った俺は、
「なら話すことはありません、別に自分は1人でも平気だし本を読んで学びを深めています」
「本を読んで学びを深めるのは別に良いことだとは思っている。だがもう少しクラスメイトとの関わりを増やしていかないか」
「いや大丈夫です、間に合ってます」
「いや何処が....ったく別にルックスとかは悪くないと思うんだけどな」
「人と関わるのにルックス関係ありますか?」
高1の夏期休暇の際に実家に帰った時も母親から、
『全く、身長も別に低くはないし痩せ型で良物件なのにどうして周りと仲良く出来ないのかしらね』
と言われたことがあるがどれも自分からすると余計なお世話と感じる。
「まあともかくだ、私が言いたいのは人間1人じゃあ生きられないっていうことだよ。まあ独身者である私もどやかくは言えないんだがなハッハッハッ」
最後に自爆&ブーメランをかました先生は笑い半分虚しさ半分と言った表情だった。
「失礼しました」
あの後やっぱり自分の愚痴モードに入った先生を終始宥めながら話を聞いた俺は職員室を後にし、帰路に着いた。時間はもう5時半で1時間半付き合わされていた事になる。
「あ、家の冷蔵庫に牛乳入ってなかった」
自分の普段飲んでいるものが水、牛乳、コーヒー、烏龍茶とほぼ限定されているのでどれか1つ足りないだけで少し味気ないので近くのスーパーで用を済ませている。
「ついでに1週間分の食料品とかも買っておくか。あまり外には出たくないしな」
そう思い俺は野菜、肉、鮮魚コーナーを見てかごの中は埋まっていった。
惣菜も見ておくかと惣菜コーナーに向かうと見覚えのある姿がそこにはあった。
「こーら、お菓子は1つだけって母さんにも言われてただろ」
「えーいーじゃん姉ちゃん買ってよ。たまにはいいでしょー」
あれは昼休みにいた橋下あかりじゃないか、あいつも買い出しかと思いつつ揚げ物コーナーに向かう。
「おっ、今日はタラの芽に春菊の天ぷらか。山菜も悪くはないがこっちの春巻も捨てがたいな」
そうぶつぶつ呟いている彼を異様な目で見ていく客の中に橋下あかりはいた。
「げっ、あいつって今日の昼ん時にいた本読みぼっちの蓮場じゃん。何でこんな所に」
「姉ちゃんどうかしたの?」
「い、いや別に、とりあえず早くお菓子戻してきて!
姉ちゃんは会計しないといけないから」
下の弟に言い聞かせつつあかりはレジに早歩きで向かう。
ピッ、ピッとレジの会計係の人のレジ打ちが遅く焦るあかりは代金を払い終わると即座にマイバックに買った物を入れ始めた。
「何だってあいつがいるのよ。ただでさえ今日の事があったのに、何で外でも気まずくなんなきゃいけないのよ」
「ああ、そりゃどうも悪かったな橋下」
「うわっ、は、蓮場!」
「何でって顔してるな。お前の下の子、迷子になってたぞ」
蓮場の隣には半べそをかく弟の守がいた。
「うぇっ...姉ちゃんどこいったか...ひぐっ.....分かんなくなったんだもん」
「あぁーそんな泣くなよ、守も男の子だろ」
「いや、男子でも感受性が豊かな人なら泣く人もこの世界にはかなりいるだろ」
「別にそんな正論聞きたい訳じゃないんだよ!」
「ああ、そっか。それは悪かったな、それじゃ。弟からあんまり目を逸らすんじゃないぞ。この世じゃ誘拐なんて何処でも起こりうるんだからな」
と言って俺はスーパーを後にしようとするんだが、
「ちょっ...ちょっと待ってよ、お礼くらい言わせてよ」
と彼女にぐいっと服の袖を引かれた。
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