血塗れの包丁と女子高生

3話目 眠たい殺人鬼と語る女子高生

「私の親はね、私じゃなくてお姉ちゃんのことしか見てないの。」

「そうか。」

「私は、お姉ちゃんができることはあんまり上手く出来ないの。で、お姉ちゃんはなんでも出来るから、私はなんでも上手くこなせないの。」

「ならお前が悪い。」

「上手くできないって言っても人並みにはできるよ？それでも親はね、人並みにしかできない私を見てくれなくなった。」

「ふーん。」

「褒めるのはお姉ちゃんだけ、私はことある事にお姉ちゃんと比べられて、なんでお前はそんなに出来ないの、それに比べてお姉ちゃんは、って、うるさいの。」

「へぇ、ところでお前の名前は？」

「私は下田 結。みんなからはユイって言われてるよ。」

「へぇ。」

「君は？」

「カイ」

「カイって言うんだ。かっこいいね。」

「話は終わりか？」

「あぁ、ええと、で、それで家には居場所がないの。私が何しても、邪魔とか、なんでいるの？みたいな目で見てくるし、お姉ちゃんは、私のことを馬鹿にしたような話しかたするし。周りの人たちも、お姉ちゃんがすごいからって勝手に決めつけて、私が平凡だから落胆しちゃってって言うのの繰り返し。」

「なぁ、これ聞き続けなきゃ行けないの？眠いんだけど。」

「えっと、その、だから私の親は、私のこと見てくれなくて、私が何しても否定するし、ええと。」

「そんな理由じゃ殺したいって思わねぇ。なんでお前が出来てないから、見なくなった親を殺さなきゃ行けねぇんだ。お前が他に見てくれる人を探せばいいだけだろ。」

「いないよ、そんな人。周りの人ですらお姉ちゃんと比較するのに。」

「お前がそう考えてる間はいないんだろうな。」

「この話聞いてもやっぱり殺す気にはなれないの？」

「ちっともならん。」

そもそもこいつは何が言いたいんだ。私がなんにも出来ないから愛想尽かした親を俺に殺せ？なんだよそれ。

「厄介事押し付けるな。」

「私にとっては厄介事じゃないのに。」

俺にとっては充分厄介事だ。

「ねぇ、殺してくれってのは、諦めるから連れてって？」

もっとめんどくさくなった。

「お前、それさ、親を殺しても俺に連れてってって頼むんだろ？」

「それは、そうだね。」

こいつ、最悪だな。

「なら、連れてってやる。だけど、お前が親を殺せたらな。」

「え、そんなの無理だよ。私には、」

なら、さよならだな。

「それが無理なら連れては行けない。」

「なんで？」

分かれよ。お前が人を殺したことないからって俺が人を殺すのをやめるわけじゃねぇんだ。人を殺したことないやつってのはいざその場面にぶち当たったら躊躇する。それで相手に反撃されたらどうするんだ。足手まといはいらねぇ。

「付いて来るなら覚悟を決めろってことだ。」

「明日には出るんだよね？なら、今日殺さなきゃ行けないの？」

それしかないだろ。なんでこいつはわかってることを聞くんだ。めんどくせぇ。

「ナイフ、貸す。行ってこい。」

「え、ナイフって、うわ！血まみれ！これで殺れってこと？え、1人で？」

はぁ、ダメかもな。もしこいつが捕まったりしたらこのナイフ無くなるのか、ダメだ。それはさすがにダメだ。

「しょうがねぇ、付いてってやるよ。だけどいざとなったら置いていくからな。」

「やった。ありがと！」

ほんとになんなんだよ。寝れなくなったじゃねぇか。