第2話 別れ

 ビルの合間を塗って歩く。ヒカリと出会い半日。魔法使いに襲われる事はなく、杞憂に終わる。着いた場所は寂れたビル。その入り口には小さな看板があり、『堂林探偵事務所』と書かれている。なんだか不気味だ。


 「おじゃましまーす。」

中には人が二人。身長の高い男と低い男。事務所の中は空気が死んでいる。

「何の用だ。」

身長の高い男が無愛想に尋ねてくる。一から接客を教えたくなるほど愛想が無い。なんなら表情が死んでる。

「私を匿って欲しいの!」

ヒカリが用件を伝えると、今度は身長の低い男が理由を聞いてくる。

「何故。何から逃げているんだで。」

ここはヒカリに説明を任せようと、壁にもたれ話を聞く事にする。


 身長の高い男は堂林誠、低い男は金剛力強というそうだ。二人は匿うことを了承し、ヒカリを襲った人物の特徴を聞いていた。

「なるほど。雷を自在に落とす男か。」

そう言うとファイルを取り出してページを捲る。そして、この男かとファイルを差し出している。

「この男!コイツに襲われたの。」

この男は阿留多伎菜津というそうだ。なんでも自然の寵愛を受けているそうで、寵愛を受けた魔法使いの中でもトップレベルに強いんだと。


 堂林曰く、阿留多伎は国落としを目論む組織のNo.2であると。その組織は太陽の寵愛を受けた不知火燈を筆頭に阿留多伎や剣の寵愛を受けたシャルルローランが中心となっているらしい。

「寵愛だらけじゃねーかよ。」

悠人が呟く。世界でも寵愛を受けた者は珍しいが、それが最低三人もいるのが確定している。流石に匿うのは厳しいのでは。と思ったが、堂林と金剛力も寵愛を受けているらしい。

「オレは地獄の寵愛を受けている。金剛力は力の寵愛を受けている。」

なんだか一日で世界が変わったような気がしてきた。


 それからはたわいない話をしていた。魔法や寵愛についても話をした。この世界は魔法を使えないからと差別されることは無い。だが、寵愛という謂わば人とは隔絶した力を持った事による疎外感などがあるそうだ。持つ者の悩みだろう。僕と悠人にはわからない。


 ここに来て二時間。そろそろ帰ると告げ、ヒカリと堂林、金剛力にお別れを伝える。短い間だったが、その時間で僕の知らなかった事を色々知れた。有意義な時間にできた。

「じゃーまたね!舜と悠人。」

僕らはもう出会うことは無いかも知れない。だけど、心の何処かでまた会うかもしれないと少しだけ思った。


 帰り道。来た道をただ戻るだけ。

「魔法使いにも色々あるんだな。」

隣を歩く悠人が言う。中学校までは魔法使いと普通の人は同じ教育を受ける。そこから僕のような人は前世と同じような高校に進み、同じような勉強をしていく。魔法使いは高校から魔法を極める為に魔法学校に進む。


 この世界でも、魔法に憧れる人は沢山いる。けど、僕はその中でも一番と言っていいほどの強い憧れ、羨望を抱いている。前世での僕は今世と変わらず普通の人間だった。突出した才能も無く、勉学も普通。運動神経も普通。そんな普通の人間であった僕にはアニメや漫画、小説等の主人公に憧れを持っていた。特別になりたかった。だけど、僕には、ワタシには…


 「なぁー悠人。僕も魔法使いになりたかったよ。」

反応が無い。隣に目をやると、悠人がいなかった。疑問に思い後ろを振り返ると、そこには首から上を失った彼の身体だけがあった。何が起こっている。

「お前、女は何処だ?」

前から聴こえる声。恐怖に支配された身体はまるで自分の物ではないかのように動かない。

「聞こえてるだろ?早く応えてくれ。」

やっとの思いで声のする方へ顔を向けると、そこには西洋の剣を右手に携えた男がいた。そして、左手には悠人の頭が。

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魔法のある世界 大統領 @apaapaapaaa

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