魔法のある世界
大統領
第1話 出会い
魔法。誰もが一度は夢見るであろう。だけど、僕には使えない。僕にあるのは人並みの学力と前世の記憶。何かを成す力など持っていない。転生したのは神の気まぐれなんだと思う。
二度目の人生は可もなく不可もなくといったところ。友人にも恵まれ、両親からは愛情たっぷりに育てられた。今は二十歳。大学に進学するか就職をするか迷ったが、迷った結果フリーター。しかし、両親からは自分のしたい事をしなさいと言われており。特に怒っていることはない。
自分のしたい事。それを考えても答えは見つからない。魔法が使えれば答えは見つかるかもしれないが。
「いや、ないものねだりしてもなぁー。」
と、物思いふける。すると、携帯に着信が知らされる。親友の悠人からだ。取り敢えず三コールしてから電話に出る。
「もしもしどうした?」
「なんか俺の家の近くで凄いことが起こるらしいで。舜も来いよ!」
誘いの電話。ずっと暇人の僕は断る理由も無いので行くことにした。アイツの家までは徒歩で一時間程度。ちゃんと五分前に着くように家を出よう。
移動の合間にこの世界の魔法について考える。人は生まれながらに魔力を持つ者かそうでない者に分かれる。持つ者は魔法使いとなれる。更に、その中でも神の寵愛を受けた者は魔法を別次元の力で行使することが出来る。
「転生して魔法のある世界に産まれたけど。なんで魔法が使えないんだろ、僕は。」
独り言が虚しくも住宅街に木霊する。
あと十分で悠人の家に着くといったところで空気が重くなる。身体に纏わりつき離れない、粘度が高くなったような感じだ。少し行くのが嫌になってきた。すると、背後からしゃがれた声が聞こえてくる。
「そこの君、何処に行くんだい?そっちは危険だよ。」
振り返ると如何にも魔法使いといった服装の人物がいた。
「貴方は一体誰なんだ?なんで危険なんだ。」
疑問をぶつける。だが、僕の言葉には応えない。
「ふむ、どうやら行くようだな。進めば引く事はできない。幸せとは程遠い終わりを迎えるぞ。」
言い終えると闇に消える謎の魔法使い。ヤツの言葉を信じるのであればここは家に戻った方がいいのだろう。だけど、信用に値するかと言われれば否。やっぱり親友の家に向かうべきだろう。
謎の魔法使いが現れてからは空気の重さは消えていた。あれは現実だったのか、それとも幻影だったのか。そんなことを考えていると悠人の家に着いた。きっかり五分前。取り敢えずインターホンを押してアイツを呼び出そう。そう思いインターホンを押す。二、三言葉を交わしていると突然雷が落ちる。何事かと空を見上げると人がいた。住宅街での攻撃系の魔法は禁止されている。それを破ってまで行使するとなると。空にいる人は闇の魔法使いだろう。僕は直ぐに悠人の家にあげてもらう。
「あの浮いてるヤツはなんで魔法を行使したんだ?なんでだと思う、舜。」
そんな事聞かれても分かるわけない。
「お前が僕呼び出したのはこれが理由じゃないのか?」
絶対これが理由だと思いながらも質問を返す。
「俺は舜とゲームする口実でイベントが有るって嘘ついたんだよ。」
なんだそれはと呆れながらも、僕は空を見直すと人は消えていた。一体何だったんだ。
結局悠人とゲームを三時間遊んだ後、外食する事に決めた僕らは外を歩く。すると、また空気が重くなる。
「おい、顔色悪いぞ。」
どうやら僕の心配をしてくれている。しかし、今は言葉を返す気が起きない。背後から感じる気配。いや、気配とはまた別物の圧。それが僕の意識を持っていく。そんな僕を心配して、公園で休む事にした。
「どうしたんだよ。体調悪くなったのか?」
そんな事はない。そう返したいが、口が固く閉ざされてしまっている。悠人もそれ以降は喋りかけてこなかった。
無言の時間が過ぎ去る中、僕らの前でボロボロの少女が止まる。
「あんた達なんでそんな暗いの?なんか私まで暗くなっちゃうじゃない。」
降りかかる声明るく何処までも飛んでいきそうである。
「なんか俺の友達が体調悪そうなんだよ。とゆうかなんで君はそんなにボロボロなんだ?」
悠人が返答する。
「私はさっきまで訳のわかんない奴に襲われてたの。すっごい大変だったんだよ。」
なるほど。てことはあの雷のヤツかな。
「とゆーか体調悪いなら私が治してあげるよ。」
そう言うと彼女は僕の頭に手を置き魔法を行使した。すると一瞬の内に今まであった気持ち悪さが消える。
彼女の名前はヒカリと言うらしい。襲われてた理由は彼女の魔法の力を狙ってのものだったそうだ。
「私は生命の寵愛を受けているの。それはもう凄いんだよ!」
だそうだ。寵愛を受けた者に会うのは人生初。少し、いや、かなりワクワクしている。人口の半分が魔法使いと言われている現在。その中でも選ばれし者というべき存在が目の前にいる。
「初めて寵愛を受けた人に会ったよ。」
僕がそう言うと彼女は光栄に思うべきねと言っている。
三人で話しをしていると、話しは変わるけどとヒカリが話し始めた。
「私をある場所に連れて行って欲しいの!」
なんでも、魔法を使い悪さをしている連中を個人で裁く人達がいるそうだ。
「それぐらいだったら別にいいけど。」
とは言ったものの、移動中に襲われたら為す術はない。
「やっぱり今のは無しでお願いします。」
取り消しを求めたが、彼女は首を振る。
「男に二言はない。でしょ。一回言ったんだったら取り消しはダメだよ!」
ダメだったか。けど襲われたらどうすればいいんだ。本当に死ぬぞ。
「まぁー大丈夫だろ。なんせ寵愛を受けてる彼女がいるんだから。気楽に行こーぜ、舜。」
その発言を聞き、彼女は首を何度も大きく縦に振った。なら、大丈夫かな。
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