第4話

「ちょっとまて、そんな危ないのか、ここ」


 冗談じゃない。ただのパソコンのトラブルがとんだ大事になってきた。


「大丈夫、大丈夫、死んだらもとに戻れないだけだから」


「やべえぇじゃないか。俺は帰るぞ」


「いいのかい」


 彼女はにやりと笑う。


。ははは、君は僕とこの世界を楽しむしかないのさ」


「『女王針』は?あの毒のナイフがあれば、問題ないだろ?」


『女王針』とは、彼女の使う毒ナイフの名前だ。


「ここの敵を倒すには、威力につぎ込まないといけないからね。毒ナイフの分のポイントを上乗せしているんだよ」


 『デッド・ワン』では、武器が新規参入者が入り込みやすいように、1000ポイントを上限にされている。プレイヤーは決められた範囲内で自由に武器の性能を設定できる。


「そのハチ柄のライフルのポイント配分はどうなってるんだ」


「『女王蜂』様の手の内を見ようとはフレイム君はスケベだな」


「ちょ、なんてこと言うんだよ」


「はは、冗談だよ、君のそういった強くなるためのハングリー精神は認めいているよ。特別に教えてあげるよ。このライフルは本体300ポイント」


「少し高いな」


 たいていの武器は100ポイントから200ポイントで交換できる。


「まぁ、頑丈さがいるからね。少し防御に振っている威力は700」


「な、ななひゃく!?」


 おそらく対人戦だと一発で相手はおろかステージも吹き飛ばす威力だ。普通ありえない。バトルロイヤルにおいて手数の少なさは戦略の少なさにつながる。1発撃って、はい、おしまいじゃ、生き残れない。たいていはポイントを二つ~三つに分けて、武器を複数もつのが普通だ。


「一発限りのライフルだ。スリルがあっていいだろう。リロードの間は、逃げの一手さ」


「そんなの戦略とは言わないぞ」


「あくまで、回避の練習と、確実に相手に当てるための緊張感が目的さ。僕のモットーは『蜂のように舞い、蜂のように刺す』さ。今回は相棒がいるから普段のトレーニングよりだいぶ楽だろう」


「はは、勘弁してくれよ。」


「いやいや何をいっているんだい。ここから出るためにはあそこにカチコミをかけないといけないのに悠長なことはいってられないよ」


 彼女が窓の外を指さすと町の反対側に巨大な丸いドームがあるのが見えた。


「なんだあのドーム」


「あれは、蜂の巣だよ。」


「は?」


 明らかにデカすぎる。手前の家よりでかいって、頭おかしいだろ


「あそこをぶっ壊せば、君のパソコンも回復するだろうさ。楽しい楽しい蜂退治といこうじゃないか」


 ドームに向けて、出発して数刻で、蜂たちに囲まれてしまった。このカクカクボディでは、武器も使えないので、とりあえず、魔法をうちまくる。

「ひゃあああ!」

 そのうちの一つが蜂にあたり、簡単に燃え上がる。一つの技にポイントを振っただけあって威力はすさまじかった。10ポイントのファイヤーボールに990ポイントの威力に振るという蛮行を行った結果。あたった蜂が一気の燃え上がる。だが、当然連射はできない。MPは自動回復されるとはいえ10秒ほどのインターバルがある


「援護!はよ!援護ぉぉおおおお」

「はははは!きみはほんとにおもしろいね。ヘル・フレイムくん(笑)はは」


「(笑)とかいうなや。早く助けろ!!」


 すぐ脇を蜂の毒針が通りすぎる。人の腕くらいの太さがある針が毒液をしたらせているのが見える。


「ひいいいい」


「頼み方というものをしっているかい」


「いま、おれは、よゆうが、ねぇえ!!!」


「お・ね・が・い・し・ま・す・女・王・様?ではないか」


「ばかか!!ひいいいい!!」


 頭の上を蜂の顎が通り過ぎる。


「助けろ?頼み方がおかしいんじゃないか。天井くん」


 次々に撃ちだされる針を必死によける。

 蜂の攻撃をよけつつ、屋根の上にいる相棒の姿をみると、相変わらずにまにまとこちらを見てくる。くそう。足元見やがって。


「お願いします!女王様!!なんでもいうこと聞きます!!!」


「よろしい!頭をふせたまえ!」


 高らかに叫ぶと彼女はライフルを構え、首をかみ切ろうとしてきた蜂を打ち抜く。


「ふ、ふ、ふ!どうだね」


「BEE!まだいる!!まだいるんだけど!!」


 彼女が倒したのは一匹だけ、あとの群れはまだまだいる。


「それは自分でどうにかしたまえよ」


「あ?」


「さっきもいったが。一発に威力を込めた分、再装填には時間がかかるんだ」


「あ、あ、あほかぁ!!」


 俺の声は空高くに響き渡った。

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