第11話 2月14日&3月14日  語り高岡

今日はバレンタイン。美味しそうなチョコを探して、友達と交換し合うイベントというのが私の認識。好きな男の人にチョコをあげるという文化は、私の中ではなかった。


「ゆうちゃんチョコどうぞ!」

「ありがとう里依ちゃん。私からも」

「いぇーいありがとう!」

部室でゆうちゃんとチョコの分け合い中。

「ゆうちゃんのチョコ、カラフルでおしゃれだね」

「あんまりチョコ食べないので、見た目だけで決めて美味しいかはわからないけど......」

「チョコ食べないんだね」

「お菓子自体そんなに食べないけど」

「へー私食べてばっかりだから、ゆうちゃんすごいな」

「そうかな......里依ちゃんのチョコもおしゃれだね」

「でしょー!普段こういうの買わないから奮発して買っちゃった!」

「おーやってるね~」

三上先輩がやって来た。

「私もバッチリ持ってきたぞー」

大きい袋の中から大量のチョコが現れた。

「こりゃまた大量ですね」

「いや~良さそうなの選んだらいっぱいになっちゃった」

「お疲れ様です~、うおっ!パーティーすか?」

神崎くんと国村くんが来た。

「おまたせ男子諸君よ!この中から好きなものをどんどん食べていきたまえ!」

「ははー!ありがたき幸せ!」

一応私も男性陣にチョコを用意してきたけど、渡してしまったほうがいいのだろうか。こういう時に経験の無さが仇となる。てか三上先輩にも渡してないし。

「ゆうちゃんも里依ちゃんも食べていいからねー」

「先輩!私達のも!」「どうぞ!」

「ありがと~!2人とも大好き!」

抱きつかれて恥ずかしいが喜んでもらって何よりだ。

「2人とも男の子たちにあげちゃいなよ。ゆいちゃんどうぞ」

「里依ちゃんどうぞ......」

「なんでやねん」

乙女モード全開のゆうちゃんが可愛すぎて突っ込んでしまった。仕方ない、ここは私が。

「はいどうぞ、おふたりさん」

神崎くんと国村くんにそれぞれ渡す。

「あざっす!」

「ありがとう......あれ?もしかして手作り?」

「ふふふ」

「里依ちゃんチョコ作れるのすごいじゃん!」

「いや~なんとなく作ってみようかなと」

「うん、おいしい!」

「やったぜ」

「ゆうちゃん!里依ちゃんに負けずに渡すんだ!」

「わ、私の手作りでも何でもないですけど......どうぞ」

「あざっす!」

「五十嵐さんもありがとう」

「いえいえ......」

「申し訳ないですが、私にも恵んで頂けますでしょうか......」

やたら低姿勢で坂下先輩がやって来た。

「もちろんですよー、どうぞ」

「坂下先輩、いつもありがとうございます」

「うう、ありがとう可愛い後輩たちよ......」

「じゃあブサイクな私のチョコはいらないってことで」

「三上様ー!」

「1年の子たちで分け合ってねー」

「うう......ひどい......」

「みんな春休みはどこか行ったりするの?」

「車の免許取るので一旦実家に帰ります」

「私もです」

「俺は合宿で取ろうかなと」

「みんな免許取るんだ......私は今の所取る予定ないけど」

「俺は去年取ったけど、地方は車がないとつらいからなあ。こっちみたいに電車が充実してないから」

「なるほどねー、3月の終わりぐらいに星先輩の送別会をしようかなと思って、よければみんなにも来てほしいな」

「わかりましたー」

その後来年のサークル予定を考えたり、ゲームをして遊んで解散になった。

「じゃあ詳細は後日メッセージで送るねー」

「はーい!お疲れ様でしたー!」

三上先輩と坂下先輩と別れ、1年生組で電車に乗る。

「大学は春休み長くて助かるな~」

「本当にねー。みんな車の免許以外でどこか行ったりとかは?」

「高校の友達と会ったりとかかな」

「ふむふむ、そうだ!来年の春休みはみんなで旅行しない?」

「いいんじゃない。夏の計画も自分達で立てないといけないけど」

ゆうちゃんと国村くんと先に分かれて、神崎くんと2人きりになったので、部室で渡し損ねたあれを出さないと。

「神崎くん。実はね、チョコまだあるんだ。あげるね」

「マジ?ごめんね何個も」

「いえいえ、今開けてみて」

「お、おう......え、すげえ。ハートのチョコだ。これも手作り?」

「1回作ってみたかったんだよねー」

「すごい良く出来てると思うよ」

「ふふふ、ありがとう」

「あれ、カードも入ってるけど」

「それは帰ってから見て」

「え、めっちゃ気になるから見ていい?」

「いや、開けとるやないかい」

「え~と......ん??」

「......」

「え、え~と.......これ、なんすか......」

「いや、まあメッセージみたいなもんだけど」

「メッセージにして内容が重い気がする......」

「イヤベツニドウコウシロッテワケジャナイケド、チョウドイイキカイダカラカイテミヨウカナトオモッタダケデ」

「.......なんというか、その......俺彼女が......」

「ワカッテルヨワカッテマスヨエエアツギデオリマスサヨナラ」

「え、ちょっと」

居た堪れなくて、とにかく電車から降りた。

ああああああああああああああああああああああああもうどうにでもなれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ




ホワイトデーの日。

神崎くんからメッセージが来て、待合場所の喫茶店に向かう。

すでに神崎くんがいて、席に案内された。

「ごめんね呼び出して」

「いえいえ」

「これ、チョコのお返し」

「ありがとう」

「あの時急なことで動揺してたけど、そのあとちゃんと話せてなかったなあって」

「うん」

「......ごめん。やっぱり彼女が好きだから」

「うん」

「漫画はこれからも描いていきたいし、サークルも続けたいから、高岡さんとは今まで通り仲良くしていきたい」

「うん」

「......」

「......」

分かっていたとはいえ、言葉にされるとつらい。

面と向かって言葉にしてくれたのは良かったなと思う反面、ますますつらさが増す。

「私ってさ、昔から後先考えずに行動することがあって、それでよく後悔したりするんだけど」

「......」

「でも、動いてよかったなと初めて思ったかもしれない。ちょっと気まずいかもしれないけど、これからも仲間として受け入れてくれると嬉しいな」

「もちろん」

「よ~し!じゃあ早速お願いがあるんだけど!今から一緒にアニメカフェ行かない?男女ペアでもらえる限定商品があるらしくて」

「あ~なるほど!よっし行きますか!」

「じゃあ早速レッツゴー!」

ありがとう神崎くん。お幸せに。

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