第10話 正月 語り三上
正月。
一昨日コミケが終わり、昨日は商業向けのストーリープロットとキャラデザのラフを編集者にメールで送り、今日は久しぶりにのんびりとしようかな。
「結子あけおめ~。ご飯だって」
姉が声をかけてきた。
「あけましておめでとうございます」
正月はいつも家族でおせち料理を食べることになっている三上家。
とはいっても、父はいつも正月から仕事でいないけど。
「お母さん、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとう。お皿とか出してね」
「うん」
朝ごはんの準備をして、テレビを点ける。
「いただきまーす」
昔は卵焼きと海老と白かまぼこしか積極的に食べなかったけど、最近になって他のおせち料理も美味しく感じるようになった。
「初詣どうする?」
「明日か明後日でいいんじゃない?人混みの中突入するの好きじゃないし」
「そっかー」
「お姉ちゃんそんな初詣好きだっけ」
「んー?いやなんとなく行ったほうがいいのかなと思っただけ。結子は世間的なイベントあんまり興味ないよね」
「そんなこと無いよ。クリスマスはバッチリ楽しんだし」
「ほほ~意味深ですなあ~」
「サークル仲間とクリスマスパーティーしたってだけ」
「なるほどね~社会人になるとそういう楽しみも無くなってくるからなあ」
「ふ~ん」
「まあ青春を楽しんでくれよ、我が妹よ」
「貴重なアドバイス有難うございます、先輩」
おせちをある程度食べ終え、母と姉が初詣に出かける準備をしている。
「じゃあ結子、お昼ごはん適当に食べておいてね」
「はーい、いってらっしゃーい」
「なにか欲しいの買ってこようか」
「ん~カステラ焼き!」
「はいよ、いってきまーす」
部屋に戻ると、スマホのメッセージにあけおめメッセージが大量に来ていた。
ポチポチとメッセージを返してると、編集者からメールの返信が来た。
「はや」
正月早々返信が来るとは思ってなかったので、休みじゃないんだろうか。
内容は、ストーリーに関して気になった点やキャラの特徴に対してのコメントが書かれていた。とりあえず、指摘されたポイントの回答とキャラデザの別パターンを新たに作ればいいのかな。あーだこーだ考えながら描いてるとちょうどお昼になったので、買い溜めしてあるインスタントラーメンを食べる。食べ終わって描いた内容を確認し、メールを再び送った。
ふ~。
モンスターバトルゲームでもやるかあ。すでにパーティーメンバー何人かいたので合流。
『あけおめ~』『あけおめ~』『ことよろ~』
グループ通話をしながら、モンスターを倒していく。
『そういやトン(結子)さん。今年成人式だっけ』
『あ、そうだった』
『忘れてたんかい(笑)。私は行ってないけど』
『そうなんですか』
『いや~、なんか昔の同級生と会うのあんまり好きじゃなくて』
『あ~なるほど』
『皆さん、初詣とかもう行きました?』
『一緒に行く相手がいない~』
『トンさんは?』
『ん~今日はいいかなって。人混みの中行くのも疲れるし』
『クールだなあ。彼氏とかと行かないの?』
『え、トンさん彼氏いるの!?』
『いや~どうでしょうね~』
『なんじゃそりゃ(笑)』
『トンちゃん俺と一緒に行こうぜー』
「ごめんなさい』
『ん~クール。だがそこがいい』
『あっはっは』
ある程度やったところでグループ仲間と解散した。
「彼氏ねぇ」
スマホにメッセージが来た。里依ちゃんからだ。
地元の友達と初詣に行った写真が送られてきた。
「青春だね~」
そういえば里依ちゃん彼氏いたっけ。今度話してみようかな。ゆうちゃんも交えてガールズトークみたいな。
思えば中高の時恋愛話をした記憶がない。女子中高一貫校だったからか、周りの友達がそこまで異性に対して積極的じゃなかったからか、そういった類の話をしなかったなあ。
スマホの着信音が流れた。
「もしもし」
「あ、あけましておめでとう」
「あけおめー。どうしたの?」
「いや、その、ちゃんと話してなかったなあと思って」
「正月から重いな~」
「本当はすぐに謝りたかったけど......」
「それにしても遅くないですかあ」
「うぅ......」
「とりあえず、漫画作りは引き続き協力して貰うよ」
「はい」
「誰にも言ってないよね」
「言ってないです」
「よし、サークル内でも今まで通りにしててね」
「了解です」
「じゃあ」
通話を切る。クリスマスの後やり取りもせず放置していたら、どうも私が怒ってるように感じたようだ。年明けのサークル活動大丈夫かなあ。変な空気になってたら、後輩の子たちに申し訳ないな。
こうなったら、坂下くんにはとことん協力してもらうおうか。絞るところまで絞ってやろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます