第9話C 極秘(?)のクリスマス  語り坂下

「よーし、こんなもんかな」

酒の酔いがまだ覚めないまま、三上さんと俺は後片付けをしていた。

「しかし、三上さん酒強いね」

「そう?坂下くんほど飲んでないし」

「俺そんなに飲んでた?」

「私の目からはよく飲んでるように見えたけど」

「う~ん」

「じゃあ帰ろうか」

部室を出てゴミを捨て、駅へ向かう。

「坂下くん、実はね」

「なんすか」

「あ、そうだ。坂下くんの部屋行っていい?」

「へ?」

「ちょっと外だと言いにくい話だから」

「別にいいですけど......」

「よかった!」

一体何のことかめっちゃ気になるが、三上さんが部屋に来るという事実が大事件過ぎて、脳がバグりそうになる。

「途中コンビニで飲み物買うね」

「あ、はい......」


「いやー散らかってますね~」

三上さんが来るってわかったら掃除してたんだけど......。

机周りの物だけどかして、座ってもらった。

「早速だけど、話というのはね......」

「......はい」

「なんと!商業の原稿依頼メッセージが来ました!」

「え!?マジ!?」

「マジマジ!!出版社に行って担当者の人と顔合わせしたし!」

マジかあ~、いや三上さんだったらいつかそうなりそうだなとは思ってたけど。

「あ!だから今日テンション高かったのか!」

「まあねーえっへっへ」

「ちなみにどんなの描く予定なの」

「あ~問題はそれなのよ」

そう言うと三上さんは俺の部屋を漁りだし、

「ちょ、何探してるの......」

「いや、さっき片付けた時、その出版社の雑誌見たような気が」

え、なんだろう。てか、さっき置いてあった雑誌って......

「あっ!あった!」

まさかの、

「これこれ!」

成人向けの漫画雑誌だった。

「てか、三上さんエロ漫画描いてたの!?」

「普段描かないけど、試しに描いてみたのが出版社の人の目に止まって」

三上さんは鞄からiPadを出し、

「これ」

見てみると、たしかに三上さんの絵で描かれたエロ漫画だった。

「すげえ~クオリティ高い......」

「ありがとう」

「で、描くんですか?」

「そこなんだよね~坂下くんはどう思う?」

「俺は描いてほしい気持ちでいっぱいだけど」

「なるほどね~、やる気はあるけどなかなかアイデアがね。さっきのやつもなんとなくで描いたけど、いざ商業でなると難しくて」

「話作りがってこと?」

「そっ!そこでお願いだけど、坂下くんにアイデアとか出してもらうの手伝ってほしくて」

「俺が?」

「うん。男性向けだから男目線で見た意見が欲しいし。もちろんネタ代とか出すから」

「なんかすごい話になってきたけど......俺で役に立つのなら」

「やったー!坂下くんならそう行ってくれると思ったよ!」

「確かにこんなこと、なかなか人に言えないもんね」

「まあね」

「早速俺からアドバイスと言うか、なんというか」

「お、なになに?」

「こういうエロ漫画って、作者の欲望というか願望というかそれをパワーにして描いてることが多いらしいけど」

「エロパワーてやつだね」

「三上さん自身そういう欲はあるの?」

「ん~女としての欲と男としての欲は違うとは思うけど、自分を見てほしいとは思うかな」

「ほうほう」

「坂下くん、よく私の胸見てるでしょ」

「......すみませんでした」

「あ、いや怒ってるんじゃなくて.....ある意味自分が女として見られてる事だから、それはそれでなるほどなと。あくまで私の考えだけどね」

「なるほど」

三上さんのスマホの着信音が流れた。

「もしもし......うんそう。はーい、じゃあね」

「親?」

「そ。今日友達のところ泊まるってことにしてるから」

「......あ、先シャワー使っても」

「お邪魔させて貰ってるし、私あとでもいいよ」

「いや、コンビニで買うの忘れてたから......なにか欲しい物があれば買ってくるよ」

「あ、じゃあ健康美茶ほしいな。ごめんね」

「了解」

「あ、タオルだけ貸してほしいな。着替えはあるから」

「おいっす」

タオルを渡してお金を貰い、コンビニに向かった。

さっき行ったときに買えばよかったけど、本人がいる前で買うのはあからさますぎて見つかったときに気まずくなりそうだったので、このタイミングで買うしかなかった。

部屋に帰ると、三上さんはまだシャワーを浴びているようだった。

じっとしているのも落ち着かないので、適当に部屋の中を片付けた。

「ありがとー次どうぞ」

「うぃっす」

「よかったら、さっきの雑誌見せてもらっていい?」

「いいよ。何冊かあるから、それも出しとくね」

溜めておいた雑誌を積み重ねて、シャワー室へ向かった。

緊張感からかシャワーがいつもより熱く感じて、のぼせそう。

シャワーから上がると、三上さんは雑誌を見ながらiPadに何かしら絵を描いてるようだった。

「練習ですか?」

「んーいろんなアングルで描いてるなあと思ったから、試しに描いてみたけどなかなか難しいなって」

「あーたしかに普通の漫画だと、凝ったアングルって必ずしも必要じゃないかも」

「そうそう、効果音とかも独特だし」

「あー気になった漫画とかあった?」

「ん~これとかかな」

「どれどれ......純愛物っぽい」

「男目線からすると物足りない?」

「う~ん、人によると思うけど激しいほうが読み応えはあるかも」

「へー」

「この漫画のキャラとか気に入ってるけど」

「スタイル抜群的な」

「そうそう......」

我慢が出来なくなってきた。

「ねえ」

「ん?」

「もし良かったらだけど......」

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