第9話A 女子2人のクリスマス 語り五十嵐
「おじゃましまーす!」
里依ちゃんが私のアパートにやって来た。
「本、多いねー」
「ほとんど漫画ですけど、本が好きなので」
「いいねー、1日中いても飽きなさそう!」
お客さん用の座布団を敷いて、座ってもらった。
「シャワー浴びます?」
「え、いいの?」
「いいですよ。着替え出しておきますね」
「ありがとう!ゆうちゃん大好き!」
里依ちゃんがシャワー室に入り、私はテレビを付ける。天気のニュースで、どうやら地元の方は大雪のようだ。コミケが終わったら地元に帰る予定で、切符も買っておいた。お土産とかも買わないとなあ。東京らしいお土産ってなんだろう。
「いやースッキリした!ありがとうゆうちゃん!次どうぞ!」
「いえいえ」
入れ替えで洗面所で着替えると、里依ちゃんが後ろから覗いてくる。
「な、なんですか」
「いやーゆうちゃんはいい女だなって」
「へ?」
「スタイル」
「そ、そんなことないです」
謎の恐怖を感じて、シャワー室に素早く入り鍵を締めた。
シャワー室から上がると、里依ちゃんはテレビを見ていた。
酔いが冷めたのか、気分が落ち着いているように感じる。
「ゆいちゃんさー」
「はい?」
「国村くんの事心配にならない?」
「?心配といえば心配ですけど、神崎君がいるなら大丈夫かなと」
「ふ~む、まあそうだよね......チャンネル変えてもいい?」
「ええ」
チャンネルを変えてると、見覚えのあるアニメが放映されていた。
「あれ?これって」
「確か中学の時流行ってた少女漫画の。再放送してたんだ」
「なつかしいなあ~」
「原作今でも続いてますよね」
「らしいね。最近のは読んでないけど」
「私もです」
2人でじっと見て、このキャラ好きだったとかこの後の展開がエグいとかの話になった。
「結構ドロドロした話なんだよねこの作品。それが注目浴びてバズったところもあるけど」
「ですよね。アニメと言うより大人向けのドラマな感じで」
「あはは、たしかに」
里依ちゃんはそう言うと、ふと真顔になった。
「私には到底出来ないなあ。彼女のいる子を横取りするなんて」
「......」
「酔った勢いとはいえ慣れないこと言うもんじゃないなあて」
「......」
アニメのEDが流れ、里依ちゃんはうなだれていた。
「寝ましょうか」
「うん......」
「ベッドで寝ていただいてもいいので」
「お邪魔させてもらって、さすがにそれは申し訳ないよ......」
「じゃあ一緒に寝ましょう。狭くて申し訳ないですけど」
「ごめんね、ゆいちゃん......」
「何も謝ることはないですよ。さ、寝ましょう」
「うん......」
泣きじゃくってる里依ちゃんを布団の中に入れて、ギュッと抱きしめた。
おやすみなさい、良い夢を見れますように。
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