第8話 学校祭当日 語り高岡
学校祭当日。なんとかサークル本を完成させた私達は、設置の準備をしていた。
「坂下くん、今日星先輩来るらしいよ」
「へー来るんだ」
「会長が言ってて、やたら張り切ってたから」
星先輩は、漫画愛好会4年生の女性先輩で元会長さんらしい。どうも野口会長が漫画愛好会に入ったのが星先輩に一目惚れしたかららしいけど、なかなか告白する勇気もないまま今に至るらしい。
部室の準備も終え、みんなで手分けしてポスターを貼りに出かける。ゆうちゃんと一緒に回ってると、
「あ、里依ちゃん!」
学部友達のともみだ。
「おっつー。そっちは何やるの?」
「たこ焼きの屋台。里依ちゃんの漫画みたいから後でそっち寄るねー」
「ありがとうー、いる時間決まったら連絡するわ」
「おっけー、こっちの方もよろしくー」
「戻りましたー」
「お疲れ様。差し入れ持ってきたよ」
「ありがとうございます!」
久々にあった会長は、そわそわしていて落ち着かない様子だった。
「あ、会長来てたんですね」
「三上さん達もご苦労様。漫画先に見させて貰ったけど、皆とても良かったよ」
「ありがとうございます!会長も描いてくれればよかったのに~」
「いやー悪いね。差し入れでお詫びということで......」
みんなで会長からの差し入れを食べていると、10時の放送アナウンスが流れた。
「お、始まったな」
「みんなー、2人体制で2時間交代で回そうかなと思うけど、いいかな」
「オッケーす。南先輩2時くらいに来るんでしたっけ」
「うん」
「じゃあ、その時間帯は会長と三上さんいたほうがいいっすね。俺1人でもいいんで午前中いいっすか」
「わかった。じゃあ1年の子たちは2時組と4時組で別れて店番お願いしようかな。お金の計算と本渡すぐらいだから、交代のときにやり方教えるね」
「わかりました」
こうして私たち1年組4人は、しばらく学園祭を回ることになった。
「神崎くん、私達2時からでもいいかな?」
「いいよーじゃあ俺ら4時からね」
建物の中では文化系サークルがいろいろな展示をしていたので、興味ある物を覗いてみた。科学室では液体窒素の体験コーナーをしていて、冷凍バナナで釘を打ったり、なかなか割れないシャボン玉を作ったり出来た。
「面白いねー」
「そうですねー」
外ではライブ演奏をやっていたり、屋台がズラッと並んでいた。
「里依ちゃーん!」
たこ焼きの屋台から、ともみから呼ばれた。
「たこ焼き買うねー」
「マジありがとう~」
「わ、私もいいですか」
「もちろん!五十嵐さんだよね。ありがとう!」
「いえいえ......」
男子組は他の屋台で何を買おうか物色していた。
「あの背の高い金髪の子が神崎くんだっけ」
「そうそう」
「かっこいよねー」
「彼女いるよー」
「そりゃーそうかー」
「たこ焼き2つ出来ました!」
「ありがとうございます」
「じゃああとから行くね」
「うん、私2時から4時の間にいるから」
「オッケ~!」
男子組は焼きそばを買ったようだ。
「どこか座って食べようか」
「そだね」
開いてる教室が食事スペースになったいたので、そこで食べることにした。
「みなさん漫画描いてみてどうだった?」
「ん~ものすごい疲れたけど、その分終わったときの達成感は凄かったな」
「なるほど」
「僕もちゃんと描いたの初めてだったけど、漫画家さんって本当に大変なんだなと言うのがよくわかった」
「描いてるときは苦しいけど、終わってから楽しいという気持ちが湧いてくるよね」
「そうそう。スポーツていうか俺は野球やってたけど、どうしても勝ち負けがあるから結果で浮き沈みするけど、漫画だとひたすら自分との戦いって感じ」
「私は......相手と競うていうのが苦手だから、1人で黙々とやっているのが楽しいていうのはあるかも」
「私オリジナルの漫画描くことなかったから、ストーリー作り上げるのに時間がかかってやばかったなあ。好きな作品の2次創作だと妄想モードでサクサク描けるんだけどね」
「なんか改めて三上先輩ってすごいんだなって実感したというか。あの人何者だろう」
「確かに......プロみたいだもんねあの人」
食べ終わって4人でひと通り建物内の展示を見終わり、外の野外スペースを見回る。どうやらバンドの演奏をやってるみたいだ。
「あれ、前田くんじゃん」
どうやらバンドのメンバーに神崎くんの知り合いがいるようだ。
「聞いてく?」
「う~ん、いいかな」
前田くん、さらば。
「そろそろ2時ですね」
マジだ、時計を見ると1時50分だ。戻らないと。
「じゃあ部室行ってくるね」
「おうっす」
「お願いします」
部室に向かうと、会長がきれいな女の人と2人でお喋りをしていた。
「こんにちわー」
「あ!君たちが一年の子?始めまして。前会長の星です」
「高岡です。今日は来て頂いてありがとうございます」
「五十嵐です。宜しくお願いします」
「いやー女の子2人入ってくれてよかったね。私が入ったときは女の子いなかったし」
「なるほど。星さんがいてくれたおかげで、三上さんが入りやすかったて言ってました」
「そうそう、あの子は最初おとなしい感じだったけど、すぐにメキメキと目立っていったからね。まさにスーパールーキーというか、びっくりしたなあ」
へー、三上先輩て昔そんな感じだったのか。
「すみません、買います」
「ありがとうございます!500円になります」
残ってる部数を見ると半数以上は売れてるようだ。
「もしよかったら、学校祭終わったらお疲れ様会しようかなと思うけど、おふたりともどう?」
「私はオッケーです!」
「私も大丈夫です」
「ありがとう!6時になったらここに戻ってくるから、皆で一緒に行こうね」
「わかりました!」
星先輩と野口会長と別れて、それからお客さんはポツポツとやって来た。
「いらっしぃませー」
「こんにちわー」
冊子を読んでくれたり買ってくれたり、中には感想を言ってくれる人もいてびっくり。
見知らぬ人に自分の描いた漫画の感想を貰うのはなかなか照れくさいなと思うけど、作ってよかったなという安堵感と見てもらえているという喜びの気持ちで一杯になった。
ゆうちゃんの方も照れながらも嬉しそうな様子で、見てるこっちも嬉しくなる。
「ありがとうございました!」
「お疲れ~」
神崎くんと国村くんがやって来た。もう少しで交代の時間だ。
「結構売れてるね」
「そう!結構人の出入りがあったよ」
「よかったよかった。なんか終わったら皆でどっか行くって話を聞いたけど」
「うん、星先輩も一緒に」
「了解。じゃあ交代で」
「お願いしまーす」
男子2人にバトンタッチして、ゆうちゃんと一緒に部室を出た。
「何か他に見たいのとかある?」
「同期の子が演劇をしているみたいで、4時半がラストって言ってたような」
「じゃあそれ見に行こうか」
「はい!」
「いやー売れたねー!みんなお疲れ様ーかんぱーい!!」
星先輩の声掛けで飲み会が始まった。
「何が良かったって、2年1年全員が原稿を完成できたことだと思うんですよ」
「いい事言うね結子ちゃん!」
「学年全員が完成させたことって珍しいかも。皆途中で諦めちゃうから」
「俺は三上さんのフォローが良かったんだと思う」
「照れるなー」
「初めて漫画描いた子いる?」
ゆうちゃん、神崎くん、国村くんが手を上げた。
「3人は初めてなんだ。大変だった?」
「いや~キツかったっす!でも完成したときの充実感が半端なかったので楽しかったす!」
「いいね~その調子で今後も頑張って!」
「あざっす!」
お腹が減ってきたので、つまみのものを色々漁りながら、先輩達の話に混ざった。
「星先輩は昔から漫画描いてたんですか?」
「描き始めたのは中学の頃。元々引っ込み思案な性格でね」
「えー!意外です!」
「そう?小さい頃からインドア派だから絵描くのは好きだったけど、中学生になってから絵描きの友達も出来て一緒に描いたりして今に至るって感じかな」
「周りの影響って大きいですもんね」
「そうね~段々と皆描かなくなっていったけどね。私は今のところ続けられてるけど、働き始めたらどうなるかな」
「先輩就職先どんな所でしたっけ」
「Web系のサービス会社。営業職だけど」
「そうだったんですね。おめでとうございます!」
「ありがとう!漫画というより絵が描けるのを武器にしてプレゼンテーション能力をアピールしたら、思った以上に評価高くてそこに決まった感じだったなあ」
「へー俺も就活でやってみようかな」
「坂下くんは仕事なにするか決まってるの?」
「いやー決まって無いっす。消去法でこれなら出来るかもっていうのを探す感じになりそうで」
それにしても、隣でゆうちゃんよく食べるな。よっぽどお腹が減ってたんだろうな。
「ゆうちゃん何か追加する?」
「えーと、これでいいですか」
「牛すじ煮込み?おいしそう!私もなにか頼もうかな」
「俺も飲み物何か追加しようっと」
「俺レモンサワー!」
「私はウーロンハイにしようかな」
注文を頼むと野口会長が大きいかばんの中から物を取り出した。
「星先輩、内定おめでとうございます!」
「わー!ありがとう!開けてもいい?」
「どうぞどうぞ!」
開けてみると、高級そうな液晶タブレット用のペンだった。
「あ~!これネットで評判高いやつだ!」
「良かったですね先輩!」
「うん!ありがとう野口くん!」
「いえいえ、喜んでもらえて何よりです!」
「じゃあお疲れ様ー!みんなこれからも漫画制作頑張ってね!」
「お疲れ様でーす!」
解散して星先輩と野口会長と別れたあと、
「どうするみんな?カラオケとかいく?」
坂下先輩が提案したけど、
「私は疲れたから帰るわ~、じゃあみんなおつかれ!」
「お疲れ様でーす」
三上先輩が帰って、男組がカラオケ、私とゆうちゃんも帰ることにした。
「はーこれでしばらくはのんびり出来るかな」
「そうですねー」
「とは言っても次のコミケで2次創作の漫画そろそろ手がけないとマズくなってきたけどねー、あはは」
「え、すごいですね」
「まあ2ヶ月後ってあっという間だから少しでも進めないとね。どうせギリギリになってバタバタするだろうし」
「なるほど......私も何かイベント参加してみたいな」
「ゆうちゃんは今ハマってる作品とかある?」
「ハマっているというか気になっているのはありますけど」
「よーしじゃあ今から作戦会議と行こうか」
「お願いします!」
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