第3話 漫画サークル日常風景 語り坂下
「お~す」
「おーす」
いつものように三上さんが部室で漫画を描いてた。よく見ると使ってる道具がいつもと違った。
「あれ?それってもしかして」
「そう!りんごタブレットのプロ!」
先月発売したばかりのやつだ。ネットの知り合いで使ってる人を見かけたが、現物をここで見るとは。
「どう?描き心地?」
「画面にザラザラのシートつけてるけど、使ってる液タブより紙に近い感じかも」
「へ~!漫画作業の方はいけそう?」
「全然いけるよ。カキスタも使えるからすぐ慣れたし」
「いいなー。お金貯まったら買っちゃおうかな」
「買っちゃえ買っちゃえ~。絵描いてない時もいろんな用途で使えるし」
「へ~」
確かそのモデルのやつは9万ぐらいしたような……ペン付きだと10万かあ……今は板タブで十分かな……。
冷静になりつついつものようにネタ用のノートを広げ、スマホでネットを見る。
部室で三上さんは常に全力でバリバリ描いてることが多いが、俺は描くのは家でやることがほとんどだ。
ギャグ漫画を描いてる性分、ネタ探しとコマへどう落とし込むか悩んでる時間が描く時間より圧倒的に長い。
最近コマ割りがうまくいかない為4コマ形式を始めたが、その分ネタも作らなければならないことに気づき、いっそのこと4コマ形式のストーリーものの方が描きやすいのではないかと最近考え始めてる。
ネットをなんとなく見ていたら、三上さんに似た感じのキャラ画像を見かけた。
ちらっと見たけど、雰囲気がやはりなんとなく似てる。
「三上さんてコスプレしないの?」
三上さんの手が止まって、目線だけこっちを見る。
「なんで?」
「いや、たまたま三上さんに似たようなキャラ見つけてなんとなく」
キャラ画像を見せると、ああという表情をし
「吹奏楽部のアニメの子ね。このアニメ見たことあるけど、この子なかなか性格がきついよ」
「へ~そうなんだ」
「作品はいかにも青春アニメって感じで好きな人は好きかも。クオリティーはさすが西アニメーションて感じ」
「ああ、あそこのスタジオのか。どうりで絵が綺麗なわけだ」
あれ、結局コスプレは?問いただそうとしたけど、作業に戻ってしまい聞き損ねた。
サークル勧誘の時コスプレしてもらえば、もっと入部者増えてたのかなあ。
「こんにちわ~」
「お疲れ様です……」
高岡さんと五十嵐さんが来た。
「お疲れ~」
「あ!りんごのやつだ!」
「えへへ~使ってる人からやたら評判いいから、思い切って買っちゃった!」
一気に女子会モードになる部室。男勢は今日来ないのだろうか。
「こんにちわー」
国村君だ。
「ちわー。神崎君は来なさそう?」
「クラスの子と遊びに行くって言ってました」
「なるほど。国村君は大学慣れたきた?」
「そうですねー学部の友達も徐々に出来て来ましたし」
「よかったよかった。もし友達が興味ありそうだったらここにつれて来てもいいからね」
「わかりました」
漫画を描くだけでなく語りに来るだけでもありがたいし。とは言ってもそういう人達は隣のサブカル同好会に多いんだけど。
「そういえば会長さん最初の時以来会いませんね。忙しいんでしょうか」
「3年なってくると授業のコマ数がかなり減ってくるからねえ。大学来ない日とかも出てくるし、学外の活動の方に励んでる人も多いよ」
「なるほど」
「たまにここで作業してる時もあるけどね。最近会長2次創作の方に力入れてるから」
「へ~なんの作品だろう」
「南蛮プロジェクトて知ってる?」
「知ってますよ。ワイワイ動画でプレイ動画見たことあります」
「動画サイトで知名度が一気に上がったからね。俺もそれで知ったけど。そういや部室のパソコンにインストールしてたな」
「え、まじっすか」
「うん。会長が普及用にって入れたんだよね。なかなか面白いよ」
パソコンの電源をつけて、ゲームを起動させてみた。
「矢印キーでキャラを移動させて、Zボタンで通常攻撃。Xボタンが必殺技で、ゆっくり動かすならShiftボタン押しながらだったかな」
初心者モードで国村君がプレイし始めた。ぎこちないながらも敵を順調に倒してる。
「いい感じじゃん」
「結構集中力いりますね。何気にこのゲーム曲もいいですよね」
「曲いいよね~。音楽だけ聴いても楽しいし」
結局4面の途中でリタイアとなった。
女性陣は三上さんと高岡さんが五十嵐さんにデジタル作業のやり方を教えていた。
「線を間違えて引いたらZボタンを押したら消せるよ。試しに押してみて」
「……本当だ」
「レイヤーていう機能があるんだけど、これも便利でね……」
そういや国村君もデジタルで描いたことないと言ってたような。俺も何か教えた方がいいのかな。
「国村君はデジタルで描こうと考えてる?」
「この前板タブを触ったんですけど、1万ぐらいのやつを買おうかなと考えてる段階です」
「そっかー。俺板タブ使ってるけど、慣れるのに1ヶ月ぐらいはかかったかな。今はもうラフから描けるようになったけど」
「やっぱ慣れですか」
「まあね。デジタルで描きたかったら遠慮なく俺や三上さんにわからないところ聞いてね」
「はい。ありがとうございます」
国村君と描きたい漫画や最近ハマってる作品について語ってたら日が沈みかけてる時間となった。
「それじゃあ俺ら先帰るわー」
「は~い、また来週~」
「お疲れ様です」
「お疲れ様です……」
「失礼しますー」
あ、そういえば。駅に行く途中、国村君に聞きたかったことを思い出した。
「国村君て好きな女キャラ誰?」
「え、う~ん……宮田有希とかですかね……」
「へ~無口キャラが好きなの?」
「というか神秘的な感じが好きですね……」
「てことはサークルの中では五十嵐ちゃんがタイプか」
「へ!?いやどうですかね……」
「いやごめん、なんとなく」
「……坂下さんはどのキャラが好きなんですか?」
「池島はるかとかかな」
「......じゃあ三上さんとか」
「ん~三上さんか~確かに黒髮ロングで胸大きいね」
「大きいですね……」
「たまに揉んでみてえ~と思っちゃうけど」
「ははは」
たわいもない(?)会話をしていると、電車が来た。
「じゃあお疲れ~」
「お疲れ様でーす」
電車に乗ってスマホを見ると、サークルチャットで三上さんからメッセージが来てた。
『皆さんお疲れ様~。次回はオリジナル限定の同人イベントに行こうと思ってるので、集合日程と場所を記載しておきます。参加か不参加の連絡チャットでお願いします』
そういや三上さんにコスプレさせるなら池島はるかがいいなー。いつになることやら。
なんてバカなこと思いつつ、チャットで返信をした。
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