第3話「決着」
「がはっ!」
ボクの一撃で弾き飛ばされたアリシアと名乗った黒騎士兼そこまで黒くないビキニアーマーギャルが血を吐きながらもヨロヨロと立ち上がる。
「やりおる、我が魔剣【エクスカウパー】をへし折るとはなッ!」
「……あのーその見た目で凄まれても全く雰囲気でないんですが……しかもそれ多分偽物ですよ」
とまぁ瀕死の相手に気丈に振る舞っているつもりのボクも実際の所はかなりピンチなのだが。
(調子に乗ってさっきの一撃に力を使い過ぎた……今は立っているのがやっとだ『二つ』の意味で)
この黒騎士にハッタリが通じるかは正直微妙だが今この状況ではそうするのが最善策だと思う。
「ふむ、私の剣が贋作だと? 謙遜するな貴様は正真正銘本物の魔剣を折ったのだ……小僧、貴様の名を聞こう」
「……ボクは御剣ヒロです」
(……よし! この流れはその名覚えておこうって言って去っていくパターンだよね?)
「……御剣ヒロ……私を楽しませてくれたお礼だ、特別に貴様に見せてやろう【新月の闇】黒騎士アリシア・カヲルの真の姿をッ!!! 」
「えええええ!!! そっち!?」
アリシアと名乗った黒騎士がなにやら詠唱を始める。
すると周囲にどす黒い闇の力を具現化したようなものが彼女に集まっていき辺りの景色が闇に包まれていく。
「……ぐがががががが……」
「ッ!何が起こるんだ……ッ」
そしてその闇はアリシアの全身を覆う様に一気に凝縮されていく。
――闇が晴れ、そこにいたのはパッキンギャルではなく似て非なる者、白金ギャルだった。
「――光栄に思うことね、この姿を見た人間は貴方が二人目よ」
金属の様な鈍い光沢を放つ銀髪に鋭く光る紅い眼、さっきまでのギャルビッチからは想像もつかない程落ち着いた口調と表情。
しかしその奥底には隠し切れない狂気と怪しい魅力を放つ、不思議系ご令嬢系ビッチへと彼女は姿を変化させていた。
「これが、本来の私の姿よ、普段の姿では衝動が抑えきれなくてね……あんなはしたない子になっちゃうの」
どうやらその言葉に嘘はないようだ。
変わったのは見た目や雰囲気だけじゃない。
さっきまでとは比べ物にならない桁違いの力が圧となってボクの体に突き刺さってくる。
(くっ強い……でもこれなら、クソ! さっきの力さえあればどうにかなるのに!)
「……ふふっこの姿の私は力があり余り過ぎててね、感じるよりも先に搾り殺しちゃうかもねぇ……さぁ貴方を極上の死へと誘う冥府の門を開くとしましょうかッ!」
そう言うと彼女は自身の下着を取り払いボクの眼に【冥府の門】が映り込んだ。
邪悪な気が漏れ出す彼女のソレは見ているだけでも生気を吸い取られそうな感覚に陥る。
そして何より恐ろしいと思うのは危険だと分かっている【そこ】へ踏み込んでみたいというボク自身の強烈な欲求が抑えきれず爆発しそうな状態になっている事だった。
「さぁ怖がらないでいいのよ、貴方の魂は私の糧として永遠に残り続けるわ……」
妖艶な笑みを浮かべて舌なめずりをしているアリシアがじりじりと距離を詰めてくる。
「くっ……!」
「じゃあ、いただきますね」
アリシアが勢いよく飛び掛かる。
そしてボクは一瞬で組み伏せられボクの槍を介し彼女の冥府の門へと体に残っていた力が抜き取られていく。
「ぐわあああああああああああ!!」
体中に電流が走った感覚と強烈な快楽に意識がぶっ飛びそうになる。
だがボクは根性でなんとか意識を保ち続ける。
「いい加減諦めなさいッ……」
「……まだだッ」
アリシアは冥府の門を巧みに操り(意味深)エネルギーの吸収を続ける。
「ぐぅ」
完全に不利でボクの負けが濃厚のこの状況に焦りの表情を浮かべていたのはなんとアリシアの方であった。
「うッ!!うおお!負けるかぁぁ!」
「くっ、なにこの子! こちらが吸収すればする程に力が増している!! あり得ない!」
彼女の言う通り、敵の吸収攻撃が激しくなればなる程ボクの力は際限なく増していっていた。
「馬鹿なッ!!なんだこれは私の冥府の門が白く染まっていくだと! あり得ないッこれではまるで【天界の門】ではないか!! ヤツが私の闇を塗り替える程の【聖力】を持っているだとそんな事!!!!あり得てなるものかあああああああああ」
その言葉に呼応するかのようにアリシアの纏った悪しき気は徐々に消え去り、反対に彼女からは神々しさすら感じる白きオーラが発せられていく。
――今なら彼女を倒せるかもしれない。
「うおおおおおおおお」
「クソこれ以上は私の体が持たん……ここは一旦――」
「逃がすかああああああああああああああッ」
精神を統一し体中全ての力を股間に集める。
そして全てを込めた全身全霊の一撃をアリシアに解き放つ。
「いくぞおおおおお!!!!食らえ【セイクリッド・オブ・ロンギヌス】!!!!!!!!」
ボクの放った全霊の一撃が彼女の冥府の門の中でまばゆい光を放ち炸裂する。
「なんだこれはッぐあああああああ」
冥府の門は完全に決壊し、門の奥底で渦巻いていた闇の力は洪水の如く溢れ出していき彼女は気を失った。
「か……勝ったのか? それにしてもこの力はもしかして?」
さっきまでの力と裏腹に全てを解き放った今のボクの槍には微塵の力も感じない。
そして気が付く。
まさかとは思ったが――ああ、そういう事か。
あまりに馬鹿馬鹿しくて気が付くのが遅れた。
そうか、ボクの異世界で手にしたこの槍は興奮すればする程に強くなる最低で最高の能力だったんだ。
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