第4話  学校では少しぼろが出る時もある

 昨日の実にスリルのありすぎる事件の後、解決はしたもののどんな顔をしてりっちゃんに会えばいいものかと考えながら制服に腕を通し学校へ行く支度をしている。

本当に昨日は散々な目にあった。しかし、このまま部屋にこもるわけにはいかない。

重い足取りで自室のドアを開け、階段を下りる。


リビングに入るともうすでに彼女はキッチンにいた。

「おはよ」

りっちゃんのほうから声をかけてきた。

「朝ごはん、もうできてるから一緒に食べるぞ」 

テーブルの上にはもうすでに完成したと思われる朝ごはんが用意されていた。

今日は食パンにスクランブルエッグ、ヨーグルトだ。

僕一人なら食パン一枚で済ませてるところだが、りっちゃんのおかげで朝から十分な朝ごはんが食べられる。ありがたい。 

二人で椅子に座り、手を合わせる。

「「いただきます」」   

二人でご飯を食べ始める。


りっちゃんの姿は昨日の夜の様子とは打って変わってかっこいい男子モードだ。 

ほんとに昨日のりっちゃんはどこに行ったんだ。

りっちゃん、いや律曰く、早いうちから男子モードにしておかないと外に出たときぼろが出るらしい。

それに合わせて僕も、律を男子として接するようにしている。 

それでも僕のほうがぼろを出してしまうことがある。

 

「今日は小テストがあるだろう」

「うそっ」

律から小テスト話題をする今の今まで忘れていた。

まじやばい、勉強してない。 

「うそじゃない。世界史小テストするって言ってた」

おわった。すべてにおいて普通の僕が勉強をしていないとなるとそれは平均も取れないということだ。

「ちなみに、ほかのクラスの奴から聞いたんだけど7割とれなかったら再テストらしい」

先生よ、それは先に伝えるべき情報ではないのか。

なんか、再テストのことをあらかじめ伏せておいてこれを機に小テストに対してもまじめに取り組むようにするためらしい。

そもそも小テストがあること自体を忘れている時点でアウトではあるけれど。


「あっ!」

律が急に声を上げる。 

「急になんだよ」

「時計見ろ。時間やばい」

時計に目をやると時刻は午前八時を指していた。

「のんきにご飯食べてる暇ない。早くそれ口の中突っ込め」

中身、本当に女の子かよと思わせるような発言をする。

口の中に残りのご飯を突っ込み、空いた皿を流しに持っていく。

そのまま鞄とブレザーをもって玄関を飛び出した。



 「ギリギリセーフ」

僕は教室の扉を開いて駆け込んだ。 

「何がギリギリセーフだ。もうチャイムなってるんだよ」  

髪を後ろに一つで束ね、少しけだるそうな担任の森めぐみ先生からお叱りを受ける。  

「ごめん先生、門はチャイムなる前に通ってるから許してよ」 

「まあ、遅刻は付けないけど」 

「ありがと」

感謝の言葉を軽くかける。

さすが律、先生にも顔が利く。

「それじゃあ、早朝ホームルームはじめるぞ」 

今日も一日が始まるなーとのんきなことを考えていられるのも今のうちである。 


「成、お前朝から遅刻とはなかなかだなあ」

「表面上は遅刻になってないからセーフだよ」

話しかけてきたのは僕の隣の席で中学から付き合いのある松川裕也だ。

髪は茶色ぽっくてふわふわにセットされている。誰とでもある程度つるめるコミュ力高男だ。そして僕の唯一の親友といっていいだろう。

「相変わらず、朝から二人で熱々ではないか」

「どこをどう見たら熱々なんだよ」

ちなみに裕也は律が女であることは知っている。

「いやどう見ても、朝から仲良く遅刻とかなあー」

にやにやしながらこっちを見ている。

「そんな顔をするな、こっち見るな」

「おい、だべっているとこ申し訳ないが一限目が始まるぞ」

律が割り込んできた。 

「げっっ」  

僕は嫌な予感を胸に律に問いを投げかける。

「律、一限目ってもしかして…」

「うん、そのもしかしてだな」

あー終わった。再テストとかヤダ。無理。 

こうなったら 

「律様、裕也様、問題に出てきそうなとこ教えて」 

「今から無理だ。あきらめろ。この時間で覚えて七割は無理だな」

裕也から再テスト宣告を受けた。


そのあとの小テストの出来栄えはお察しの通りだ。  


チャイムの音が鳴る。 

「はーい、授業はこれで終わります。昼休みに入ってね」

教室の中が一気に騒がしくなる。 

「おーい、昼飯食べに行くぞ」

裕也から声がかかる。 

「今行くよ」

鞄からお弁当をとって屋上に向かう。 

 

屋上の扉を開けると先客がもうすでにいた。

「おっそーい、もうおなかぺこぺこだよー」

「すまん、成がちんたらしてるから」

僕のせいかよ。裕也ひどい。 


扉を開けるなりこちらに話しかけたのは飯田麻衣だ。

後ろの高い位置でふたつに髪を結んで肩ぐらいまであり、薄紫のつやつやの髪が揺れて女の子らしさがあふれている。 

裕也の彼女だ。 


「もう、早くご飯たべるぞ」

もう一人の先客は律だ。 

昼休みは屋上で四人そろってご飯を食べる。

「「「「いただきまーす」」」」

お弁当はいつも律が作ってくれる。 

当然、お弁当の中身も一緒だ。                              「わかってはいるんだけど、本当に二人は一緒に住んでいるんだね」  

「まあ、そうだな」   

事実ではあるしさらっと認める。

「あー、さらっと認める。うらやましー、私も裕也と一緒に住みたい」

「麻衣さんその言葉はうれしいのですが、まだ早い気がします」 

飯田の発言に動揺を隠せない裕也は敬語になっている。 

「お前の動揺はおもろいな」

「そこ笑うんじゃない」

 

律は僕のほうを見ながら何か言いたそうにしている。

「どうした」

律が上目ずかいでこっちを見ている。

かっこいいというよりはかわいいのですがどうゆうことですか。

「今日のお弁当はどうかな?」

「急にどうした」  

「いやー、感想を聞いてなかったなっと思って」 

律はあからさまに僕から目線をそらすために下を向いた。

いつものことではないのか。                          しかし、超絶美少女に毎朝、お弁当を作ってもらえることが普通と考えるのはおかしい。 

やはり日頃の感謝を伝えるのがいいだろうか。

よし、伝えよう。切実に、素直に。

そして僕は律の耳元に顔を近づけて小声ではなす。 

「お弁当いつもありがとう。とってもおいしいよ」

「へえっ!」

律の甲高い声が響く。

「どうしたの律くん、女の子みたいな高い声を出して」

飯田は律が女の子であることは知っている。   

「あははー、全然隠せてないよー。ここにいるのが私たちだけでよかったね」  

「いや、これは、成が…」 

「へー、成くんがなーにー」

飯田はにやにやしながら僕のほうを見てくる。 

完全に楽しんでるな。

「いやー、日頃の感謝を伝えただけだが」

「それだけで律くん、りっちゃんはこんな反応するかな?」  

飯田の質問攻めは止まらない。誰かこいつを止めてくれ。

律は下を向いたまま一言も言葉を発さない。

「はいはい、麻衣そこまでな。これ以上は俺たちの介入するのはよくないよ」

「はーい」

麻衣は裕也言うことをすんなりと受け入れる。 

助かった。さすが親友。

 

裕也が助け舟を出した後、昼休みを終えるチャイムが鳴った。

屋上を後にするとき律の顔が赤くなっているような気がしたが気のせいだったのだろうか?












 

 

 

                                                                                                                                                                       




                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 











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僕、幼馴染くん?と同居してます 結月綾斗 @yuzukiayato

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