佐藤さんと老人

崎山城市視点


黒いロールスロイスが駅前の僕たちの前に……


【キキキキ――――――ガシャ!ガシャ!ガシャ!ドン!!】


と思ったら、僕たちを過ぎて駅横の駐輪場に突っ込み、自電車を何台も跳ね飛ばして壁にぶつかって止まった。あまりの出来事にビックリして高切枝バサミの先端を離してしまった。


そして後部座席のドアが開く。


「ち~ず~る~おじいちゃんが来たど~!」


「お!お爺様!!」


白い髭を伸ばし、膝下丈の半着に武者袴、これでちょんまげをしていたら黄〇様。


そのお爺さんが「来たど~」の声と一緒に右手を高々に掲げる、何も持っていない右手だが何故かモリとモリ先に魚が…よいこの浜…ゴホゴホ!……この人が佐藤さんのお爺さん!


「は!はじめま…」「千鶴よ~こんな男にナンパされて怖かっただろ~おじいちゃんが来たからには安心しなさい!そこの暴漢!!かかって来なさい!」


言葉を被せてきたばかりか、暴漢扱いを受けた。誤解を解かなければ。


「いや、僕はですね…」「ブツブツ言わずにかかって来いと言っている!それともゲートゴルフで鍛えたこの私が怖いのかね!」


ボクシングポーズを取り、口でシュ!シュ!シュ!と言いながらパンチを繰り出しているお爺さん、パンチの速度がヒョロヒョロで当たる方が難しいと思っていると。


「お爺様!止めてください!」


「千鶴!痛い!痛い!」


見えましたよ佐藤さん!高切枝バサミでお爺さんを突っついたよね!


とりま、一旦落ち着いてもらって説明をしたがお爺さんは僕を鋭い目で睨んでいる。


「とりあえず千鶴よ、高切枝バサミは危ないからワシが預かる。」


「はい。」


佐藤さんが高切枝バサミを渡した。


「自己紹介が遅れたな、ワシは近藤勲だ、近藤グループは知っているだろう、そこの会長をしている、そして!外孫の千鶴に彼氏など!ワシの目が黒いうちは絶対認めん!!」


近藤グループは世界で5本の指に入る企業で、そこの会長は総理大臣より権限を持つと言われている。


「認めんと言われまし…」


既に付き合っていると言いたかったが。何台もの警察車両がサイレンを鳴らし駅にき来て警官がお爺さん近藤会長を囲い、警棒を出して。


「犯人に告ぐ!直ちに武器を捨て人質を解放しなさい!」


高切枝バサミに刃先は僕の方を向いていて、刺されることは無いだろうと冷静になろうと周りを確認すると、駅の周りにいた人の何人かが携帯を持って電話をしている…通報された!


「む!ワシか?!」


「あなたには電車内でドローンを飛ばす様に指示をした疑いも掛かっている!」


「「電車内のドローンはマズイでしょ!!」」


僕と佐藤さんが、非常識な事を指示したお爺さんにドン引きした。


「これ以上指示に従わないなら!」


警官は警棒から拳銃に持ち替えた。


「わ!分かった!」


ゆっくりと高枝切りバサミを離すと、一気に警官がお爺さんを取り押さえ手錠を掛けた。


署に連行するためにパトカーに乗せようとしていると。


「千秋!!help me!それとそこの男!I'll be ba…【バタン!】」


最後まで言わせてもらえずパトカーのドアが閉まり、署に連行されるお爺さん。


僕たちは、ポカーンと眺める事しかできなかった。

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