携帯とフルフル

崎山城市視点


【ガタ!】


僕の存在に気が付いた佐藤さんは勢いよく立ち上がった。


夕焼けのせいか、耳が少し赤く見える。


(待っててくれたのかな?)


「待っててくれたのかな?え~と、ゴメンね、手紙の返事だけど斎藤先生に捨てられたよ。」


僕は職員室での事を簡単に説明をした。


「…そ。」


「だからさ、できればこれからはメッセで話さない?」


ゆっくり頷いたので佐藤さんに近づく。


が!後5mほどになると。


「ちょっと待って!それ以上は……」と、真っ赤な顔をしながら、手を突きだし僕の歩みを止めさせた。


(近づくなって事?やっぱり嫌われている?)


「佐藤さん?」


僕はこの状況に困惑をしている。


「……………の。」


「え?なんって?」


佐藤さんのか細い声が聞き取れず、聞き直す。


「恥ずかしいの。」


「恥ずかしい?」


(何が恥ずかしいの?)


「……お礼を言おうと目で追っているうちに、彼方の事が気になりだして……意識しちゃてって言うか……ね、心の準備が必要なの。」


「え!佐藤さんが僕の事を!!」


(マジ!両想なのか!!)


僕は思わず一歩踏み込むと、佐藤さんも一歩下がったが、そこには僕の椅子が有ったため、椅子が大きな音を立てて倒れた。


(とっさの僕の行動に引かれた?)


「え~と…驚かせてゴメンね。とりあえずフルフルしたいから近付いても良い?」


フルフルとはRINEの機能で、友達を追加できる機能だ、ただ有効範囲が狭いため1m以内でなければいけない。


※余談、去年の5月に機能終了していたのを今頃知った作者(´・ω:;.:...


だけど佐藤さんは首を横に振った。


「これ以上近くに来られると死んじゃう。」


(死んじゃう?!え!!)


「面と向かって話したことが無かったから、心臓がドキドキして耐えられない、恥ずか死しちゃう。」


(赤面しながらのこのセリフ!今僕はアオハル中だ~~!)


「えーと、今まで隣の席だったのに大丈夫だったの?」


「それは…授業中だったし、意識しないように勉強に集中していればね。」


「それならフルフルどうしようか?この距離だと反応しないよ。」


「横の席に携帯を置いて、下がってくれない?」


僕は言われた通りに横の机の上に携帯を置き、後ろに下がると、その分佐藤さんも前に出てきた。


僕が5m下がり、佐藤さんが僕の携帯を触る事が出来た。


「これが崎山君の携帯……」


僕の携帯を手に持った後、まじまじと見つめたり、匂いを嗅いだり、頬に携帯をこすりつけたり……


(傍から見ていると変態だよ佐藤さん!)


色々やり終わった後、やっと両手に携帯を持ちフルフルをやりだした。


(1人で2台の携帯をフルフルしている姿は、悲しい人に見えるのは僕だけ?)

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