佐藤千鶴の思い出

佐藤千鶴視点


その日の夜、私は2階の自室のベットにうつ伏せに寝ながら足をバタバタさせ昼休みの事を思い出していた。


『そんな事はしてないよ!サラサラな黒髪に日光を反射しそうなツヤ、目はパッチリとまるで少女漫画、鼻はスッキリと通っていて、プルンとした唇が色気を醸し出す、程よい場所に顔のパーツが置かれており、顔の輪郭が優しさを醸し出している。肌は少し色白だけどそれが余計に清楚感を醸し出し、背は高過ぎず低過ぎず、出る所は出て引っ込む所は引っ込み、腰からスラーっと伸びた足、テレビに出ている女優、モデルなど圧倒するほどの美!!まさに地上に降りた天使そのもの!!彼女にしたい・・・・・・ナンバーワン・・・・・・!!』


「ふが―――――――――――!」


真っ赤な顔を枕に顔をうずめ、近所迷惑にならない様に叫んだ。


私は隣の席の崎山城市君にお礼を言えていない。


あれは高校1年の時、休みの日にコンビニに買い物に行ったら、入り口で酒に酔ったオジサンが飲みながら絡んできた。


「グビグビ…ぷっはぁ~何か物足りないな~…おっとそこのお嬢さん、一緒に飲まないか?」


千鳥足ながらも近づき私の右手を取るとグイっと引き寄せ肩に手をまわし、胸を鷲掴みされた。


「お~よく見ると美人じゃねえか~酒を飲んだ後、オジサンと気持ちいい事しないか?」


私はオジサンの力強さと、右手を掴まれ肩を抱かれ胸を鷲掴みされた恐怖で脅え、歯がカチカチと鳴る程震え悲鳴を出せない、その時後ろから声が。


「ヤメロ!今警察を呼んだ!」


振り向くと一人の男性が携帯電話を耳に当てながら近付いてくる。


「チッ!冗談も通じないのかよ!」


オジサンは捨て台詞を吐き、千鳥足ながらもそそくさとその場を立ち去って行った。


「大丈夫?怖かったよね?だけどもう安心だよ。」


私を安心させる様に話しかけた後、名前も告げず去っていった。


私は、恐怖と一度に色々と起きた事によりパニックになり、助けてくれた彼に対しお礼を言えていない事に後で気が付いた。


それからしばらくして、助けてくれた彼が同じ高校の崎山城市君だと知り、校内で見かける度に話しかけようとしたけどダメで、目で追っかけているうちに気になりだし、余計に話しかけずらくなりお礼を言いそびれたまま今に至っている。


「千鶴~奈緒ちゃんから手紙が来ているわよ~取りに来なさい。」


奈緒ちゃん、中学の時の友達で違う高校に行っちゃった子で、携帯を持っていないので文通で交流を今でもしている子……


「そうよ!手紙よ!手紙を書いて渡せば良いんだ!」


私は崎山君に手紙であの時のお礼を書くことを決め、机に向かった。


が!


「あれ?鞄がない……あ!昼休みに鞄も持たずに早退したんだ。」


今彼女の筆記道具は教室の自分の席の中……チィーン。

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