未知との大遭遇 〜5〜

「お嬢様、危険です!早く避難を!ここもいつ巻き込まれるか分かりません!」


山田が、スタードレッドのコックピットで叫ぶ。渋谷の街には、それなりの悲鳴が響いていた。爆発音や落下物、瓦礫の出来上がる音、いつもと違うやかましさが、東京を襲う。


「何言ってるのよ山田!まさか、まさかこんなに早く、開発の意義が出るとは思ってなかったけど…!きっと、今がその時なのよ!スターウェイブの開発はこの時のために・・・あっまたビームだ!」


本社前から割と距離はあるものの、宇宙船からの断続的なビーム、そしてロボットの降下ははっきりと見えていた。

そして宇宙船の進行は、彗たちのスタークラウン方面へと徐々に迫りつつあった。


「山田。スタードレッド、出しなさい!早く!」


彗は、喜びと不安の入り混じった声で呟く。


「なっ、お嬢様!そんなバカな!それに、私のことは『南 光輝』とお呼びくださいとあれほど!」


事情はわからないが、南は必死に懇願する。

その姿は鬼気迫るものがあった。


「あぁーもうめんどくさいわね!わかったわ、ドレッドを出したら、そう呼んであげる!ヤ・マ・ダ!」


あからさまに山田を焚き付ける彗。しかし、その効果は充分であった。


「その言葉、お忘れなく!南、スタードレッド!発進致しま」


「待って山田!何か来る!」


彗は山田なのか南なのかよくわからない男を制止した。


「うおォォスゲェ!スゲェスピードだ!最高だぜアルティランダァァーーー!!」


彗の眼に映ったのは、一陣の風と化して宇宙船目掛けて走って行く、アルティランダー・ストライクモードであった。


「な・・・何よアレ・・・!」






「ハーッハー!ニポンの皆さーん、どうするのかなー?!このまま破壊の限りを尽くされてもいいのかなー?!」


ガッツの高笑いはまだ続いていた。しかし、その割には被害をあまり出していない様子である。ビームの出力も、かなり控えめであった。


「ねーアニキ、ちまちまやり過ぎじゃない?もっとこう、ヤバいワルっぽくやった方が手っ取り早いっしょ。」


ジャネットがダルそうに、バンキッシュと呼ばれたロボットの中から、ガッツの地球征服方針に疑問を呈す。


「甘いなジャネットよ。地球のネット上では侵略だの何だの言われているが、俺様たちはあくまでも『交渉』に来たのだ。俺様たちの『国』を作らせろ、とな!なのに、人を殺めては寝覚めが悪かろう。

そして、国には労働力や価値ある建物が無ければ、無意味なのだ!

で!俺様は、地球征服、などとは一言も言ってない。」


ガッツは腕を組み、ふっ、と嘲笑う。

彼の中では、重要な要素らしい。だが、「地球を頂きに」と言われれば、征服だと思われても仕方がないのではなかろうか。


「アタシには違いがわからないんだけどさー、このままだとめっちゃ時間かかりそーじゃね?早く終わらせようよ。大して科学力も無さそうだし、対抗手段ないっしょ。」


ジャネットは、ダルそうに出力控えめのビームを撃ち続け、ゆっくりと進む。あえて人のいないところに。

信号機や看板、建物の屋上部分辺りを主に狙い、まるで破壊をしまくっているように見せつける。そんな演出のようだった。


「おっ。アニキ、何か来るみたぁい。」


そう、アルティランダーだ。

疾風となった総司が、ガッツたち宇宙マシンに迫る。


「止まれ!そこのマシン。ほぅ、こんな片田舎の駄星にしてはいい機体じゃないか。まさかとは思うが、お前がニポンの偉い人かァ?!」


ガッツが嬉々として叫ぶ。

そこには、自分たちの科学力、そして自分自身の能力に対する絶対の自信が込められていた。


「うわぁ、日本語喋ってる!・・・あー、マイクテスマイクテス。・・・俺は偉い人じゃねぇ!だが!アお前らの地球侵略をォ!止めに来たァ、モンだァー!」


ケレン味溢れるテイストで、宇宙人相手に退く姿勢を見せない総司。完全にテンションが振り切れていた。

繰り返すが、宇宙船にスゴい翻訳機能が搭載されているのだ。


「おっと、正義の味方さんだったかな?どこの星にもいるのなぁ、お前みたいなバカ。・・・お呼びじゃない、引っ込んでろ!

で!俺様たちの目的は、侵略ではない!」


ガッツはナメきった態度で総司を一笑し、アルティランダーの前方に威嚇射撃を見舞った。


「あっ、ぶねぇ!クソッ、こんなので傷つけられてたまるか!何だよ、イキリ宇宙人め!」


バックして華麗にかわした総司は、ガッツに怒りを露わにする。


「面白そうなのが出てきたけど、そんな変な車でアタシたちをどうしようっての?キャア、こわ~い。」


ジャネット操るバンキッシュからも、控えめビームが何発か、総司に送られる。しかし総司はそれらを、巧みな操縦技術で全て回避するのであった。


「なんっだよ、礼儀のなってねぇ宇宙人どもだな!鉄矢の方がよっぽど出来たやつだぜ。」


総司が苛立つと同時に、


「そりゃ僕は、何てったって挨拶のプロだからね!」


コックピット左側のモニターに、鉄矢の顔が映し出された。


「うおっ、ビックリした!おおっ?もしかして、こっちの状況見えてるのか?!」


「おう、内部と外部のカメラで全部な!」


士郎の大きな顔も、画面狭しと映し出された。


「総司さん、無理はしないでね。こうなったら、好きなようにとことんやって!建物は壊しちゃダメよ?!」


百合子が、心配そうに微笑んで、親指を立てている。


「わかった、ありがとう百合ちゃん!変形だ!」


「行ったれ行ったれ!」


「頑張れ兄ちゃん!」


「夕ご飯作って待ってるから!」


コックピットが途端に騒がしくなるとともに、総司が叫ぶ。


「GO!アルティランダー・アタックモォォォード!!!」


やはりわずか数秒で、車両形態から人型に変形を成したアルティランダー。そして完了と同時に、バンキッシュに飛び掛かる。


「こンのヤロォー!!」


地球の拳が、宇宙人のボディーに、鈍い金属音と共に直撃する。

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