第14話「乙女のために」
第14話 乙女のために
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ブロードが絶望的な戦闘の続行に嘆く。その時他のプレイヤーが秘奥義を連発している中、自分の出番がが全く無く、役に立てないはがゆさとイライラでミュウは我慢の限界に達していた。
「もう我慢ならん! 私は使うぞ! 秘奥義を使う!」
「おま! そんなことしたら中途半端にHPが残るぞ!」
「ここまで来たんだ!それをみすみす無駄にできない! 失敗は出来ない! 行くぞー!」
ミュウの意見はおおむね正しい、誤算があるとすれば自分の秘奥義を最大限発揮できないこと、仲間を最後まで信じ切れなかったこと、しかし変におどおどしてチャンスを逃すよりかは100倍良い、少なくともチャンスを逃すよりかは。ミュウは全速力で走りジャンプし、宙に浮いた。
「あ!おい!」
「うおおおおお当たれええええええええ!!」
『遊んでくれるのか!』
一番最初のセリフを発し秘奥義モードに移行する。
『耐えきってくれよ! 全ての傷よ甦れ!』
この秘奥義はミュウの手に触れた対象のみを攻撃対象とする、故に射程範囲が非常に短い、逆に言えば手に触れさえすれば最強の能力が発動する。今までのイフリート戦に入ってからの全攻撃がフラッシュバックしながら甦る。
『タイムショック!』
ドゴォン!っと強烈なインパクトがイフリートを襲った。今まで受けた総ダメージ数がそのまま相手のダメージになる強烈な奥義。イフリートは大きく顔面を殴られたかのようなふらつき状態になり、足をガクガクと震えさせている。
それもそのはず今までイフリートに与えたダメージは157ダメージ!従って157ダメージ与えたわけだがこれでもタイムショックの本来の能力を最大限に活かすなら250ダメージ食らわせられたのだ、今回はミュウが待てなかった結果このような結果になった。イフリートの残りHP186!ブロードは「バカ野郎」っと叱りたかったがすぐさま気持ちを切り替えて言うのを抑えた。
「くそう使っちまったもんは仕方ねえ、あとは根気の勝負だ」
そうこうしている間に一つの転機が訪れた、咲の〈エボリューション2〉発動から7秒が経過、クールタイムが終わったのだ。
「おまたせ!」
いよいよ咲の大勝負であり秘奥義〈エボリューション3〉の発動の時である、やはりネックであり弱点は発動までの時間だった、しかしマリーの固有結界空想庭園(こゆうけっかいくうそうていえん)のおかげでこれでも短くなっているのである。咲は斬空剣斬空剣斬空剣と3回攻撃した、1、1、1、1、1、1、とヒットが3回合計18ダメージ。
「あーんこれでも全然減らないよ~!」
咲は涙目になりながらそう叫ぶと、アレキサンダーは待ってましたとばかりに咲へ告げる。
「サキさん私は……あなたが秘奥義を使うのを待っていた!」
「へ?」
「今こそ出番だ我が秘奥義!」
『そこで見ている乙女の為に!』
一番最初のセリフを発し秘奥義モードに移行する。
『剣閃ようなれ! 王家の血筋その身で味わえ!』
閃光のような5連続攻撃1、1、1、1、1、とダメージを与えてゆく。
『電王空雷斬(でんおうくうらいざん)!!』
天空が暗雲が立ちこみ、中心から雷が落ちる、落ちた雷はアレキサンダーが持っている剣に当たり光り輝きその状態で思いっきり振り下ろす。
15ダメージ、合計20ダメージ。イフリートの残りHP148。更にパーティーに居る女性のHPとMPを回復し、全てのパラメーターをアップさせる。女性陣達の周りに赤色のオーラのようなものが漂い、パラメーターをアップさせた。咲は斬空剣を放った2、2、2、2、2、2、合計12ダメージ。
「ダメージ数がアップした…!」
ミュウの〈アクアフィッシュ〉6ダメージ
「こっちも上がったぞ!」
調子に乗ったアレキサンダーは
「ふふふ惚れてもいいんですよ」
「それは却下」
「うぬ却下じゃ」
「あらら……」
イフリートの残りHP130咲は斬空剣を3回放った2、2、2、2、2、2、が3回合計36ダメージ。ミュウが〈アクアフィッシュ〉を3回発動させた18ダメージ。イフリートの残りHP76
「いける! あと少しだ皆踏ん張れー!」
咲のその言葉に全員が「おう!」っと呼応する。イフリートは力を溜めている…、フレアの前兆だ。レイシャは再び〈怒涛の気合〉を発動させた、地面から蒼白いオーラが全身にいきわたり全員を覆い包む。
次の瞬間フレアによる灼熱地獄により世界が浄土と化した。全員のHPがギュインギュインギュインと音を立てて一気に減ったが、イフリートがフレア後の硬直状態の隙に再び全員だんごを食べる。完全にパターンが完成している。だがここのパターンもまた同じになってしまった。すぐさまイフリートはフレアを発する力を溜め始めた。ブロードがレイシャに警告を促す。
「またフレアが来るぞ!」
「だめ! 皆よけてー!!」
すぐさま全員クールタイムのことだと判りとっさに行動する。
だがイフリートは背をくるりと向き回り、背後に避難していたレイシャ達の方に顔を向けた。気が付いた時にはもう遅かった。次の瞬間フレアによる灼熱地獄により世界が浄土と化した。
仲間達は次々に倒れ、立っていたのは咲、ミュウ、うっぴーだけが残った。
「やばいやばいやばい回復役がやられちゃった!」
回復役が居ないと言う事はすなわち死が近づいていると言う事、絶体絶命のピンチである。咲とミュウは互いに互いの顔を見つめる、そして叫ぶ。
「蘇生アイテムは!?」
「ごめん持ってくるの忘れた!!」
「な!? なんだってー!? あ! 私も蘇生アイテム忘れた!」
「な!? なんだってー!?」
こんな時に漫才でもやっているかのような掛け声を二人は響かせた。身が削れるような緊張の中イフリート戦の戦いは続く、息は絶え絶え、汗もびっしょり、まるで真夏の暑さを思わせる熱風が頬になびく。
心臓の鼓動は高鳴り足もガクガクと震えているのかもしれない、早く楽になりたいという気持ちもあるが自分から「最終決戦のつもりで行こう!」と言ったので示しがつかない。と言っても周りで見ているのはミュウとうっぴーだけで後の全員は体を地面につけて顔を土にあてうずくまっている、瀕死状態なので声を出そうと思ったら出せるはずなのだが。
皆「う~ん」「ぬう…」という苦しそうな声しか聞こえてこない、そんな中、咲は思考を切り替え目の前のイフリートに視点を戻す、今置かれている状況は最大にピンチなのに対して。
イフリートの残りHP76とHP500だったころに比べたら信じられないような数字だ、(ここで倒し切る!)そう咲は気合を入れ直しミュウとうっぴーに声をかける。
「もう失敗できない! 絶対にフレアに当たっちゃだめだよ!」
そう言ったそばから間髪入れずにイフリートはフレアの体制に入った。 イフリートは力を溜めている…、フレアの前兆だ。咲は〈エボリューション3〉の上がった身体能力を生かしてミュウとうっぴーを担いでイフリートの背中に避けて安全地帯へ避難する。
が、イフリートはくるっと予測していた方向とは逆の反対方向を向き、咲達を見た、咲は全身全霊で前に駆けイフリートの股の下をくぐり最短距離で安全地帯へと向かった。
「かあ! フレア!!」
次の瞬間フレアによる灼熱地獄により世界が浄土と化した。もはや何度目の浄土だろう死者もびっくりである、なおマリーの〈固有結界空想庭園(こゆうけっかいくうそうていえん)〉は続いており背景全体は花畑だがイフリートのフレアによって燃えては再生してはの繰り返しをしている。
ちなみに空は太陽と月が高速で昇り降りをしていて時が加速しているのは変わらず、呼吸の速さも二倍になり暑さと辛さと大変さとヤバさも相まって。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ」と早くなっている。咲は〈斬空剣〉を3回放った2、2、2、2、2、2、が3回合計36ダメージ。ミュウが〈アクアフィッシュ〉を3回発動させた18ダメージ。イフリートの残りHP22。
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