第6話「ノーパン痴女」

 第6話 ノーパン痴女


 ◆


「見事なコンボだったよ、咲、しかし忘れないで欲しい、私がやられても第二第三の私が」


「知るか」


 称号を獲得しました! 漫才初心者 ノーパン痴女何故か称号が手に入った、驚いた咲はステータス画面を開き称号の欄をクリックする。


 称号 魔法剣士 姉妹愛 秘奥義初心者 漫才初心者 モンスターを調べる者 ノーパン痴女 咲の目を引いたのは『ノーパン痴女』である。


 全く不本意ながらレアな称号を手に入れたらしい、ノーパン痴女の称号ゲット条件はまずアバターが女性で普通の装備を着たまま下着の装備のみを外すこと。普通そんな事はやらないのである意味度胸が必要になってくるレア称号である。


 咲は引きつった表情でステータス画面を見る、表情は顔面蒼白に頬を赤くして恥じらいと怒りを同時に現した表情。ちなみに姉である姫の称号を聞いてみたら。称号 忍者 姉妹愛 秘奥義初心者 どうあがいても運営 犯罪者予備軍 漫才初心者 パンちらに命を賭ける者 βテスト経験者だったらしい。ツッコミどころしかない。


 姉妹愛から始まり、どうあがいても運営とか、犯罪者予備軍とか、パンちらに命を賭ける者とか。痴女とか姉の方にこそ相応しいだろう。


「ただいま」


「おかえり、随分お早い帰りだったわね」


「ちなみにエレメンタルマスターのテーマは『人生』なのでもしこのネットゲームで牢屋に入れられても人生は続くぞ、囚人になり武器を生産する、そして市場で売ることも出来る、釈放されて初めて手に入る称号もある『釈放者』とか」


「そんな所をリアルにしなくてもいいのに…」


「現実で中々出来ない事が出来るのがゲームの醍醐味だろ?中にはその称号欲しさに捕まる輩もいる」


「それ……本末転倒じゃない」


「まあそういう遊び方もあると言う事じゃな、だから称号を集めるのも難しいし楽しい、βテスト経験者とかもう手に入らない称号もあるしな」


「まあそれはそれとして……」


「それはそれとして?」


「パンツ返して」


 咲はジト目になりながら犯罪者予備軍を見る目でそう言った。


 余談だが私咲は好きな作品がパンちらをしたら幻滅をしてその作品を嫌いになるような人間だ、だからパンちらとか本気で嫌いで、今回の騒動は姉の変な妹愛による所が大きい。


 いや……姉である姫の性癖による所が大きいとも付け加えておこう、そんな所に貴重な労力を消費して作ったと思うと涙ぐましくなる。


 しかし良い作品を、人気になるような話題になるような作品を作りたいと思う心はわからなくもない。VRMMO『エレメンタルマスター』が発売されて3日が経過した。


 プレイヤー達は発売されたやいなや猛ダッシュをした、あるものは生産を極めようとしたり、ミニゲームを極めようとしたり。釣りをしたり、モンスターを狩ったり、思い思いのプレイスタイルを確立していった。


 ある程度ゲームプレイに慣れた今、しかし肝心のメインクエストは何処にも無かった。


 噂では運営が準備に時間がかかっている、販売までに時間が間に合わなかったなど憶測が飛び交った。しかしゲームは発売され、あるのはただ広大な街並みと広大な背景、そしてサブクエストだった。


 別にこれといってデスゲームと言うわけでもなく、発売当初はログアウトできなくなると言う都市伝説などの噂も行きかったが別にそんな事は無かった。


 そしてフィールドは広大とはいえど、始まりの街ルミネ王国付近のフィールドの外には『立ち入り禁止』の札と共に、先へ行くことも出来なかった。


 プレイヤー達は混乱し運営に苦情を申し立てた、この日を楽しみにして夜も眠れず待ちわびたプレイヤーも大勢いるだろう、それだけこのゲームは人気タイトルだったのだ。


 テストプレイ時代のこの『エレメンタルマスターオンライン』通称EMOはプレイヤーがギリギリクリア出来るくらいの難易度に設定され『無理ゲー』の異名を持っていた。


 そしてフィールドは始まりの街ルミネ王国から発せられるサブクエストが100種類ほどでそれを次々とクリアしていく『作業ゲー』としてその名を轟かせた。


 不評な所もあったがそれでもなお人気な所は自由度の高いバトルシステム、秘奥義の爽快さ、何より他のソフトでは実現不可能とされていたフルダイブ型のゲームとしての新しさ。


 新しさと言ってもこの日本にはVRMMOのゲームは普及しつつある中での登場、少し出遅れた感はあるかもしれない、そんな中のリリースだった。


 競争率は加速し、ソフトの生き残りを賭けてのデットレースは過酷を極めていた。テストプレイでの楽しみと言えば始まりの街ルミネ王国での格闘大会のみ。


 それでも人気はでた、ゲームであっても現実とそん色なく動ける、いや、ジャンプが通常世界での2倍ほどジャンプ出来る。


 現実世界以上に動ける高い身体能力の実体験を体験できるだけでも楽しみはます。そんな期待度の高さから発売前は行列が殺到した。


 結局のところメインクエストは今まで誰も体験したことが無く、また無い物はクリア出来ないので誰もクリアしたことが無い会ったのだ。


 そんな中、ついにメインクエストが動き出す。今日はお姉ちゃん、天上院姫は運営側でごたごたがあったらしく仕事の方に行った。


 よって私天上院咲は一人ネットの海にダイブした、いつもは姉が居たので初めてのソロプレイとなった、なかなかもって緊張する。


「えっと…これがステータスボタンで、これが装備欄で…え…あ…違った、えっとこれが…」


 咲がステータス画面に注視している中、一人の女の子が走って来た、としてぶつかってしまう。


「きゃ……!」


「おっとっと……! あなた大丈夫?」


「あわわわ! ちょうどよかったあの! メイン広場ってどこですか?」


 3日ほど街をぐるぐる歩いて姫にも色々教わった咲はプレイヤーが最初に転送される広場くらいは覚えていた。


「え、広場って……あっちじゃないんですか?」


「ぎゃーそれって一番最初の場所じゃない移動する必要無かったんだー! あ…ごめん私急いでるんだ! じゃあねまたねー!」


 見知らぬ女性は猛ダッシュで広場へと駆け寄って行った。


「何だったんだろう? 行ってみるか」


 広場では何やら人混みが出来ていた。今までどこかですれ違った人たちも見かける、この世界にはチーム、ギルドを組んで世界を冒険するシステムが存在する。


 メイン画面の【周囲のプレイヤーを見る】を押せばキャラクター名とギルド名がわかる。


 軽く目を通すと。


 『四重奏』 三ツ矢 みこと 戦空 夜鈴。


 『ルネサンス』 マリー ミュウ アレキサンダー、あと何者か知らないが武器も持たない素手のみで戦うおっさんもそこには居た。


(発売されてもう3日でギルドとか作ってる人がいるのか~私もそのうちギルドとか作ってみたいな~)


 30人、60人、いや千人ぐらい広場に居てごった返している。そう思う中会場からひそひそ声が聞こえて来た。


「おい、メインクエストの始まる場所がここだって本当なんだろうな」


「もう1時間も待ってるよ~」


「ゲームをするんだったらやっぱりメインクエストをやりたいよな」


「目標ゲームクリアだぜ!」


 その中に咲は割って入る


「あの~何でそんなに興奮してるんですか? たかがゲームですよ?」


 その言葉にカチンと来たのかモブAモブBは憤慨する。


「バカ!遊びじゃねえんだよ! 俺達には!」


「ゲームを始めたからにはゲームクリアが男の夢でありロマンだろう!」


「メインクエストが始まるとあっちゃいてもたってもいられねえ!」


「そう!今この時はまさにマラソンのスタート待ちの状況!」


「メインクエストが始まるやいなやマラソンがスタートするって事さ」


 数々のゲームをクリアしたことがある猛者はまるで作業のようにメインクエストと言う名のストーリーを我先にと貪りつくし堪能するだろう。そしてゲームをクリアしたら次のゲームへ旅立つ。


 ゲーマーはその繰り返しを永遠と繰り返す、ゲームが好きだから、愛してるから、中にはクリア出来ない無理ゲーと知ってクリアを目指そうとする強者も居る。『無理ゲー』として話題のEMOはその色が濃く、ゲーム好きのゲーマーが集まってきていた。


 そんな中にはゲーム完全初心者の人だって居る、大多数がそうだろう、咲はその完全初心者の部類に入る。


 始まりの街広場の台を挟んだ上空、6人の男女が現れた、男子1人に女子5人である。


「おい…あれを見ろ『紅の夜総団』だ!」


「βテスト時代猛威を振るった最強ギルドだろ」


「噂じゃ全員運営サイドの連中だって聞いたぞ」


 噂が回るのは早い。現れたのは運営サイドである紅の夜総団。左から、天上院姫、湘南桃花、湘南桜、紅現夢(くれないげんむ)、夜幻アン(やげんあん)、月下紫(げっかゆかり)。


(あ、お姉ちゃんだ)それぞれステージの上に上り開会式でもやるのかと言う風に姫がスピーチを始める。広場はざわめきが支配している。


『あーマイクテステス……こほん!』


 姫がマイクのテストをし始めた。


『あー本日はお天気もよく~』


「何やってんだーさっさとメインクエストをだせー!」


 モブ達からヤジが飛ぶ、今の今までメインストーリーが無かったのと同じ事だった、そのストレスが頂点へと達している、今にも暴動が起こりそうなほどの勢いだった。


『ままー物事には順序と言うモノがあってだな、こほん……じゃあ始めるぞ!』


 メインクエストがやりたくて集まった人々の集、内容を聞きもらさないように場が急に静まり返る。


『知ってるか知らないか知らないがこのEMOは『無理ゲー』と呼ばれ初めて久しい、何故ならそれは昔ながらの良さを追求した結果そうなったものだ。


 故にこのゲームは簡単にはクリアできないシステムになっている、なので無理ゲーと言われることを甘んじて受けよう』


 場はシーンと静まりかえっている、この場に居る全員が一字一句聞きもらさないように聞く。


『その上で今回のメインクエストは……スタンプラリーだ!プレイヤー、冒険者には世界中を回りスタンプを6個押してきて欲しい、そして最後にこの世界のどこかにある本当の楽園エデンへ行きエデンの神、ラスボスと戦って勝てたらエンディングだ。勝てたら殿堂入りし始まりの街ルミネに名前が刻まれ名を永遠に残すことだろう。そしてここからが本題だが……』


 ラスボスであるエデンの神を倒してしてゲームクリア、それで冒険は終わるはずなのにここからが本題と言う、その真意とは……?


 姫は真実を淡々とあるがままに告げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る