ささやかな僕の想いに。
高戸優
第1話
あぁ、僕は君が好きだった。
いつからなんてわからない。君と会った春だろうか、友となった夏だろうか。……どれもしっくりこないからわからない。
うやむやにして目をそらしてた時、既に落ちてたのかな。けどね。
永遠を君と誓った相手は僕じゃなかった。
……お幸せに、なんて口が裂けても言えないよ。
代わりに選ばれたのは友人だった。
きっと奴の方が優しいからだろう。
……悔しいけど、異論はない。あいつは優しすぎるほどだから。
けれど、やっぱり悔しいよ。
こんなに思ってるのは僕くらい、なんて自信があったから、かなあ。
さすがにショックが大きすぎて、何日間か学校へ行けなくなってしまった。
幸せそうに笑う君を見たくなくて。
好きな人とね、付き合えたの!なんて嬉しそうに報告してくるであろう君に会いたくなくて。
世界の全て、特に幸せな奴らを恨みながらベットに潜る。
そのまま、静かに眠りに落ちた。
楽しそうに友人の隣で笑う君を見たのは、ようやく登校できた日の昼休み。
近くの席を選ぶだなんて、見せつけにもほどがある。僕は君らを避けて今日行動したというのに。
ついに耐えきれなくなって、席を後にしようとした、その時。
手が、君の手が僕の肩をとんとんと叩いた。
突然の出来事に体がこわばる。触れられた部分から熱が少しずつ広がっていった。
何、と感情を悟られないよう下を見て聞くと、元気になってよかったと明るい声で言われる。
にっこりと、愛らしすぎる笑みを浮かべて。
温もりを軽く外しながら、心配どうもと言うと、君は満足げに頷き彼に向き直って話を再開する。
呑気に幸せそうに過ごす君らを見ながら、悔しさと悲しみを抱えてその場を後にした。
春はあれから何度も僕の人生にやってきた。数えるのをやめた頃、電話で結婚するのだと疎遠気味だったかの友人に教えてもらう。
独り身には飽きただろう、来たついでに誰か捕まえろよと冗談混じりの声は本当に幸せそうで。
不幸せのままの僕を笑っているようだったけど、これもいい機会かもしれないと思った。
返事を数回して電話を切る。天井を仰ぎよし、と呟いた。
本当にこれで、最後にしよう。
……まぁそれが、なんて無謀な決意だったのか。知ったのは当日、彼女に会ってからだけど。
皆が口を揃えて綺麗だと言う声には噓偽りなどなく、実際僕も綺麗すぎるくらいだと思った。
無理と言ったのに、聞かないで彼がこれを選んだの、と説明していた露出度が高めのウェディングドレス。
目元の緩み具合から満更でもなかったことが伺える。それを見る僕は遠くの壁に寄りかかっていた。余裕があるそぶりだけど、変わらず叶いはしないことを願い続けてる。
もっと、そんな風に幸せな彼女を見ていたいと。あわよくば隣で……なんて未だに馬鹿な希望を持ちながら。
やめにしよう、と考えても止まらない。
夢なんて見るもんじゃない、と言ってもやめられない。
よく考えてみたところで、現実からはうまく目を背けてしまい、終いには。
ー来世。もしよかったら付き合ってくれませんか? なんて。
理解しがたい、救いのないことを願ってしまう。
累々と馬鹿みたいに救いのないことを永遠と呪いのごとく。
恋慕に溺れた僕が救われる日は、きっと来ない。
老人になったところで思い続けてしまうだろう。
あぁ、だからどうか気づかないで。
何も知らないままお幸せに。
たくさん抱え込むのは僕だけでいい。
がっかりさせたり、悲しませたくなんてないから。
好いた気持ちは奥にしまうよ。
きっと、いや絶対貴方は気づかない場所へ。
だから、どうか。
友達でいてください。
ささやかな僕の想いに。 高戸優 @meroon1226
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