第20話 日本との交渉4

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 ■ 日本との交渉4

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 ▼ アルスタン王国 前回の続き

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 「拿捕している航空機の搭乗員に関しては今回連れて帰られて結構ですよ。警官も引き取られて結構です。

 魔石の賠償金については持ち帰って検討してみて下さい、良い回答をお待ちしております。」

 

 『ご配慮ありがとうございます。今回の返還に公安部の者は含まれないのでしょうか?』

 「無理ですね、あの男は王族への誘拐、暴行の他に第1級不敬罪ですから一切の交渉に応じることはありません。」

 

 『そこをなんとか恩赦という方向でなんとかならないものでしょうか?

 そこまで言われるのならお返ししても構いませんよ。今回は考慮すべき事象もありましたから数名の実行犯で手を打つつもりでしたが、本来の姿に戻して日本国に対して報復を行うと言うことになります。

 我が国はこの件に関しては一切の政治的取引も妥協もいたしません。』

 

 こりゃ無理だな……

 今捕まっている公安に関してはもう開放の見込みはないが仕方ないだろう。

 問題は日本に公安の関係者だな、政府は多分引き渡すのに難色を示すだろう、さてさて、どうしたものか……はぁ、頭がいたい。

 

 「さあ、大使殿、難しい話はこれくらいにして簡単ですが食事も用意しておりますのでこちらへどうぞ、航空機の搭乗員も呼んでおりますよ。」

 

 ヴィリアに案内されて行った広間には立食形式の料理が並べてありP3-Cの搭乗員達と思われる日本人や今回連れてきていた護衛などが食事をしながらアルスタン側のホステス達と楽しく談笑している

 ホステスの中には獣人もいるようだが隊員たちは気にもしないのか普通に笑いあっていた。

 

 大使はP3-Cの搭乗員達に話しかけてみる。

 『任務ご苦労さまでした。大変でしたね。』

 〈こりゃどうも、大使様ですか?。私はP3-Cの機長の相模1等空尉です。この度は解放交渉の為、ご足労いただき申し訳ないです。〉

 

 『いえ、いえ、これが仕事ですから良いんですよ。お気になさらずに、それより拘束されて大変でしたね。もう、帰れますよ。』

 

 〈私も任務でしたからある程度の覚悟はして望んだつもりですが、拿捕されて日本に迷惑をかけたのは申し訳なく思っておりますが、こちらでは結構、快適でしたよ。〉

 

 『そうなんですか?』

 〈えぇ、部屋は個室が与えられてましたし、メイドも付けられてましたし、部屋と食堂や娯楽室なんかは自由に行き来できましたからね。隊員たちで集まって話をするのも自由でしたから捕虜って感じはしませんでした。〉

 

 『かなり優遇されていたようですね。』

 〈えぇ、いい意味でびっくりしました。〉

 

 〈大使殿、私はコパイの吉武明日香3等空尉ですが、私はアルスタン王国に亡命しますので日本には帰らないつもりです。日本には母親がおりますので母の了解が得られれば呼び寄せるつもりなのでよろしくおねがいします。〉

 

 『君もなにか、獣人が気に入った口かね?』

 〈いえ、特にそういうわけではありませんね、一つは日本に幻滅したのが大きいですね。拷問の件や自衛隊のあり方にもでもです、こちらではやられたらやるではなくやられる前にやるそんな考えに共感しました。

 大使殿、その言い方は聞き用によっては誤解を招きますよ。〉

 

 『そ、そうだな、気をつけるよ。』

 

 〈大使殿、私もこちらに残ります、私は機上整備員をしている服部です。私はこの国の自由なで寛大。そして自己責任の国なんです。そんな国で私は冒険者として人生をやり直してみたいと思っています。〉

 

 『君たちの申し出は政府に伝えておくよ。帰らないと言うものを無理やり引きずって帰るってわけににも行かないしね。』

 まいったなぁ、都合3名も亡命するのか、無理やり連れて帰るわけにもいかんだろうし、家族をつかって戻らせるなんて事をすれば後が恐ろしいからな。

 ま、なるようになるだろう。

 

 〈大使殿ですか?、ご苦労さまです。〉

 『君は?』

 〈あぁ、自分ですか?、私は警察庁警備部所属の桐原です。〉

 

 『おおっ、護衛として付いていた警察官は君なのか?話によると腕を切り落とされたという話だが、君は違うようだし、まだ、起きれないのかな?』

 

 〈あぁ、それは私でしょ。確かに腕は切り落とされました。その時は痛みよりも腕がないってことでパニックになりましたね。落ち着いてから俺の人生はもう終わったと思いましたよ。なにせ利き手の右腕は肘からさきなくなりましたから。

 後で国王らしき方にはやしてもらいましたけど。

 正直なところ自分の目で見ても信じられませんでしたよ。アハハハ!!〉

 

 『切り落とされた腕を生やすって、それは高度な回復魔法なのか?』

 〈おおっ、大使殿はよくご存知ですね、流石に欠損を治せるほどの魔術師はこの国でも数名しかいないそうです。

 特に国王はすごくて死んだ直後で身体が大部分残っていれば蘇らせる事も可能だと聞きました。

 ざっくりと切った傷でも安物のポーションで見るまに治りますからこの国の薬はすごいですよ。〉

 

 『それは機密事項でではないのかね。』

 〈いえ、特に口止めはされておりませんし、いいんじゃないですか?〉

 

 『この国の国王とはどんな方だったのかね?』

 〈口止めされているわけではありませんが、はっきりと国王だと確認したわけではありませんし言っていいものかどうか判断が付きかねますのでご容赦下さい。

 受けた恩を仇で返すようなことはしたくありませんから。〉

 

 「それにつては私がお答えしましょう。」

 私は元P3-C搭乗員の脇坂陽治です。現在はアルスタン王国に亡命が認められ男爵を拝命しております。

 さて、この国は現在共同君主制を取っておりますので国王はお二方居られます。

 お一人は、ネットでも公開されていますのでご存知だと思いますが、先王のご息女であるメルクリート・バン・フルーゲルト・アルスタン様にございます、もうお一方は夫であるナオト・シドウ・フルーゲルト・アルスタン様にございます。

 

 ナオト・シドウ?なにか日本人ぽい名前だな。

 はい、元日本人と伺っております。

 

 そ、そんな、まさか?日本人?日本人がどうして……

 大使殿は転移をご存知ですか?

 

 『えぇ、小説の中の話でなら知っているが……』

 〈でしたら話は早いですね。その転移でやってこられたそうです、陛下は聡明にしてこの国の最強の勇者でもあります。〉

 脇坂は自分のことのように胸を張った。脇坂は国王の名前などは公表していいと事前に言われていたが年齢と転移してきた時期だけは非公開だと言われていたのだったのでそれを忠実に守っている。

 

 大使の神大はこの後もこの国のメイドやホステス役の女性との歓談でいろいろな情報を収集することが出来た。

 最初はホステスたちが歓談の中で漏らしたのだろうと思ったが、よくよく眺めているととても洗練されていて、考えてみれば出てきた情報は統制されていて与えられたものであると結論づけた。

 

 まっ、そう簡単には行かないか。

 

 

 

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 ▼ 首相官邸

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 「おーっ、我が国のヒーローの登場だな、よくやった。

 まだ、賠償金も払ってないのに搭乗員を連れ帰る手腕は大したものだ。」

 

 《総理、そんな甘い状況ではありませんよ。ま、P3-C搭乗員の身代金に関しては向こうも交渉の余地があるので腹を探りながら詰めていけばいいでしょう。

 船員の賠償金に関してもまあ、こちらの想定内と言えるでしょう。

 最初の問題は魔石です。こちらに関しては酷く機嫌を害してました。国でなく企業に賠償するようにと……賠償できなければ例の心臓がなくなる奇病が政府上部に流行するかもなんて脅されましたしね。

 本来、一粒10万の魔石が10億だそうですから》

 

 なあ、神大くんもう、搭乗員は帰ってきたんだ後はのらりくらりと交わしていけば良いんじゃないかね、そんな途上国なら今後も付き合う必要はないだろうし。

 

 《公安部の伊倉さん、それはムチャムチャですよ。そんなのが通ると思いますか?

 それに魔石は恐らくクリーンエネルギーとして世界に革命をもたらすはずです、今回パット見ただけでもこちらにはない技術がたくさんあります、明華や米国に取られて指をくまえているつもりですか?

 アルスタンは資源王国ですよ。》

 

 それとP3-Cの搭乗員の身代金は金銭でなくても技術者の派遣でもいいみたいです、向こうはそう高度な技術を求めてはいませんからこちらで進めて行きたいとおもいますが、どうでしょう。

 

 いいんじゃないか?、どうせこっちが断れば他の国が派遣するだろう、それなら賠償金を払わなくて済む分お得だからな。

 

 《それとP3-Cの電子機器は返してくれるそうですが、機体は返さないそうです。》

 「そうか、あれで重要なのは電子機器で機体ではないからな、墜落したと思えば人的被害が出なかった分マシだ。魔石の件は企業に泣いてもらうしかないな。まあ、友好が確立できたらいくらでも回せるから先行投資だとでも言っておけば出すだろう。」

 

 ここまでは元々予想していたため会議ではそう揉めることはなかった。魔石に関しては企業に丸投げすることになった。

 

 《アルスタン側のもう一つの要求ですが、マリアーナ王女に拷問や猥褻行為を実行した者、許可を出した者の引き渡しを求めております。回答期限は2日間ですので明日には回答する必要があります。》

 

 〈駄目だな。法務省としては認められない。そもそも犯罪人引渡し条約も結んでなければ、犯罪自体も起きてはいない。起きてはいない犯罪者の引き渡しなんて出来るわけがないでしょう。仮に犯罪だとしてもこの国で起きたことはこの国に主権があり向こうにない、そもそもイスマニアという国自体存在してはいないでしょう。〉

 

 『法務省の戸北さんでしたっけ。それが世間にわかったらどうします。

 それに引き渡さないと回答すればアルスタンは手始めに九州全域に神の審判が訪れるそうです、その後、中国、四国と登っていくそうです。』

 

 〈そんな事は認められん、横暴だ。

 総理、ここは国連に調停に入ってもらっては如何でしょう。〉

 

 『その時点で九州は無人ですよ。

 そもそもアルスタンは国連に加盟していませんから何の拘束力もないですし、それにロシア、明華、米国が動くとも思えませんが……』

 

 公安部の伊倉はそっと退出しようとしていた。

 『伊倉さん、会議中ですよ、どこに行かれますか?』

 

 〈あ、と、トイレだ。〉

 

 「衛視、伊倉さんを案内したまえ、離れるなよ。」

 

 「神大くんあの国を見てきてどう思ったかね。忌憚のない意見を聞かせてほしい。

 そうですね、ぱっと見れば中性的な文化レベルでしょうけど、ある意味では我が国を超える技術が見受けられます。資源はかなり豊富なようですし、何と言っても魔法でしょう、腕を切り落とされた警官はすっかり元通りに戻ってました。」

 

 《国王の回復魔法で直してもらったそうです。高度な回復魔法を使える人材は少ないみたいですが、向こうにはポーションという薬があり、ポーションのランクによっては切り傷から四肢欠損まだ回復するそうです。》

 

 《私自身、お土産ということで低級ポーションと中級ポーション、上級ポーションそれに状態異常回復ポーションを2本ずつ頂いて来ました。低級は内臓に損傷がない切り傷に、中級は内臓が軽度の損傷の怪我か骨折レベルまで、上級は怪我全般と切断された腕や足があればすぐに着けることは可能らしいです。無論、以前の欠損は特別なポーションか高度な回復魔法でないと無理だそうです。》

 

 〈神大くんはそれはすぐに研究の方に回し給え。提供する研究所は私の方で指定しよう。〉

 厚生省の事務次官補はフガフガと鼻息をはらくして今にも掴みかからんばかりにポーションを見ている。

 

 《事務次官ほどの残念ですがこれは盟約によりお渡しできません。

 受け取るときにあくまでも個人利用のこと他人に渡さないことを強く言われておりますのでお渡しできません。》

 

 〈違法薬として没収することも出来るんだぞ!!、そんな不名誉になりたくないだろう素直に渡し給え。〉

 もしそれが製薬出来るなら莫大な利益を生むだろう、かなり大きな利権どころではなくなる何が何でも確保しないと……

 

 後ろで見ている他の省庁の声が聞こえる

 事務次官補殿は死んだな……鉄道かビルから飛び降りるのか、いや、やっぱりセオリー通りに海に沈むんじゃないか……

 

 〈なっ、なっ、なにおっ……〉

 

 《それと国王に付いてですが》

 神大くん、それはあの可愛いお嬢様のことかね。それとも事実上、国を運営している宰相のことかね?

 

 《アルスタンの国王は共同君主制ととっており二人いるそうです。

 動画に出ていた女王がそうですが、彼女には夫がおり、その夫も国王ということです、これは想像ですが、事実上の運営はその国王が行っていると思われます。

 その国王ですが、名前をナオト・シドウ・フルーゲルト・アルスタンといい、何と元日本人と言うことです。》

 

 「ちょっ、ちょっと待ち給え。国王が日本人ならどうして日本に対してこうも強硬な態度をとるのかね?」

 

 《総理、私は元日本人と言ったまでです。現在はアルスタンの国王ですから国王としてアルスタンの利益にそって対応するのは当然かと思いますが。》

 

 総理は何を考えてるんだ?、元日本人だと言って日本に有利な政策を取るとは限らないだろう、いや、むしろそんな政策を取るようじゃ国王としては不適格で国を運営なんて出来やしない。そんな事も一国の総理がわからないのか?

 

 「元日本人なら戸籍を抹消されたものも含めて該当者が探して見るんだ、そこからなにかの人口がつかめるかもしれん。」

 

 わかりました、支給調査させて見ましょう。



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