第二章 転移

第14話 勇者は国ごと帰還する。



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 ■ アルスタン王国は転移する

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 ▼ 5年後の国内情勢

 


 メルクリート達と結婚してから5年の月日が流れた。10年かかると思っていた王都のインフラはその殆どが前倒しで出来上がってしまった。これは集まってくれた錬金術師たちや一般労働者の働きが大きい。

 地方はまだまだの所が多く残っているがかなり改善されており生活環境も随分と向上した。

 

 友好国であるイスマニアには軍事技術以外の一部の技術については流出を認めたため更に結びつきは強固なものとなった。

 来月にはイスマニアでも魔石をつかった発電所の着工を迫っているためにその準備で担当部署は慌ただしさを増していた。

 

 軍事方面ではネットを使ってえた知識で黒色火薬、無煙火薬、TNTの実用化には成功したものの主力はやはり魔石を使ったものが主流となった。

 

 兵士の武器は弾頭を魔石を加工して得る爆発力で飛ばす、元の世界の銃によく似たものと、同じく魔石を加工して物質化して質量をもった魔弾を飛ばすタイプの両方が兵士に配備されている。

 

 サスピチュ山の中腹から見つかった石に魔石を有る触媒を通して加工すると浮力を得る事が発見され、過去された石を浮遊石と名付け、これによって飛行船、偵察機、攻撃機、爆撃機が量産されつつ有る。

 この世界では戦闘機は必要ないために開発は後回しになっている。

 

 海軍の開発はまだ、遅れているのが現状だ、小型船は鉄製に移行したが、大型船は木製のままだが魔石でタービンを回して推進力を得ているが、加工水準が低いためにまだまだ、改良するべき点は多い。

 ちなみに大型船と言ってもあくまでもこの世界の基準での話しだ。

 

 ICなどはまだ元の国から入れた機械で作っているがCPUなどの高密度のチップはほとんどがエラーで作れてはいないのが現状だが材料だけなら相当な埋蔵量が有る、今後は工作機械の自国産が課題となっている。

 これはICに限らず他の産業、業種でも同様だ。

 

 メルクリートと結婚して3年経った頃、王国民の生活向上と国力のアップに伴い国王は退位して女王にこの国の舵取りを任せることしようとしたが事はそう簡単には行かなかった。

 

 王女メルクリートが俺を王にしようとしていた。

 俺自信はメルクリートと結婚したことで王配となるはずだったがメルクリートの強い要望で共同君主という形に落ち着いた。

 そもそも、メルクリートはこの国を事実上豊かにしたのは俺自身であり俺が国王になるべきだと強硬な態度だったこともあり結果的に【共同君主】という形で落ち着いた。

 

 まあっ、一つの国に【二人の国王】がいると言う形にはなったが夫婦円満だし問題はないだろう。結果、他の嫁たちは王妃と言う形になり棚ぼたで喜んでいた。

 

 5年の月日が経ち女神経由のお買い物は対価が必要になったが、今までは購入だけだったが有料になった分、販売やネットにアクセス出来るようになり便利になった。

 ちなみに当初は俺がガンガン使うので女神は青色吐息だったらしい、有料化とともに販売もできるようになったのは女神は今までの損失を少しでも回収したいという思惑が有るらしい。

 

 

 

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 ▼ アルスタン王国は転移する

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 ちょうど5年が過ぎ女神からお買い物の有料化を宣言された夜のことだった。

 国中を突然、地震が襲った。

 この国では地震はほとんどないがこの時はゆれが長く続いた。

 地震にしては震度2~3クラスで、妙に揺れ幅長く遅い、1時間近く揺れたあと収まった。

 

 あなた……

 うむ、地震だ、取り敢えず落ち着け、しかし少し地震にしては変だ。

 一緒に寝ていたメルクリートが不安そうに顔を見つめている。

 

 陛下、ご無事ですか?

 近衛騎士団長のレオポルドが駆けつけてくる。

 少し遅れて

 ヴィリア、ロミアーナ、ジェシカ、アリエルが駆けつけてきた。

 

 「皆、怪我はないか?」

 『はい、ありませんが、陛下この地震は何事でしょう。ただならぬ物を感じるわ。』

 ロミアーナは獣人の血が何かを感じ取っているのか訝しげな顔をしている。確かに俺自信もただならぬ感じがして背中に冷水を浴びた感じがしていた。

 

 「王都全域にデフコン4を発動する。」

 

 「ジェシカ、アルノフ総司令官に命じて空軍と海軍は偵察部隊を明朝夜明けとともに国境付近を中心に調査に当たらせろ、騎士団長は近衛兵を率いてすぐに王都内の調査に当たれ、陸軍は近衛軍が調査をするまで、デフコン3で待機せよ。」

 「ロミアーナは施設局にて資材の確認、出動準備に当たれ、アリエルは保存食料の確認を、すぐに出せるように準備!!」

 

 「俺は城の総合作戦室で待機している。」

 ヴィリアとメルクリートは俺と来い。

 

 「よし、行け!」

 はい、わかりました。

 皆、一斉に飛び出ていく……

 

 「取り敢えず情報が集まるまでは待つしかないか。」

 あまり被害が出てなければいいが……

 この時点ではなにかの災害が発生したと考えていた。まあ、ある意味災害にはちがいはなかったのだが。

 

 

 

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 ▼ 翌朝の日本

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 首相官邸

 首相の御影勝蔵は執務室のデスクで新聞を片手にコーヒーを飲んでいた。

 昨夜の地震も報告は受けていたが、第一報では千葉が震度2で他の関東ではそれ以下であり、震源地は千葉県の東1500kmで少なくとも被害は発生していなかったが震源地が地表近くだったが元々地震学は全くの素人の御影は気にもとめていなかった。

 

 そこへ官房長官の三井秀一が飛び込んできた。

 『総理、た、大変です。』

 「どうしたのかね三井くん、またうちの領海内で噴火でも起きて新島でもできたというのかね?」

 総理は昨夜の地震は噴火による新島でも出来たのか、出来たらいいなぐらいの感覚である。

 

 『島、いえ、大陸が突然、発生しました。』

 

 「そんなに慌てていてはわからんよ。ゆっくりと説明した前」

 『は、はい、気象衛星によると太平洋上にアメリカ大陸並みの大陸が突然出現しました。恐らく昨夜の地震が関係していると思われます。』

 

 『気象衛星では地形の影だけしか確認できないため情報収集衛星の軌道修正を指示しましたのでまもなく続報が入ると思います。』

 

 『大陸は我が国に一番近いところは千葉県の東方250kmと我が国の経済水域に入っております。』

 『防衛大臣の山口 柚葵に指示して調査を依頼しました。海上保安庁にも同様に指示を出しております。』

 

 「よし、すぐに対策本部を立ち上げるぞ!、名前はどうするかな?」

 『総理、そんなの考えている時間が無駄です、取り敢えず新大陸調査対策本部でいいのでは、もし、誰もいない無地主状態であれば専有すれば我が国の領土となります、国からわずか250kmの土地です、明華人民国にでも専有されたら我が国は東西を挟まれて喉元にやりを突きつけられた格好になります。』

 

 「そ、そうだな、うん、関係閣僚並びに関係機関の代表をすぐに集めてくれ、対策会議を行う。」

 

 『総理、会議もいいですが、調査に向かっている自衛隊に上陸の許可を!』

 「あっ、そうだな、上陸は許可する、しかし原住民がいた場合は危害を加えるな、攻撃されたら撤退だ。」

 

 『わかりました。そう通達します。』

 

 総理は考えていた。いっその事、領海内に現れてくれたら我が国の領土だと主張できたのだが……恐らく地震で盛り上がったのなら人はいないだろう、草木も生えてないはずだ、せいぜい逃げ遅れた魚がせいぜいのはず、どっちにしろ衛星の結果待ちか...

 待つ時間が長く感じるな。

 

 防衛大臣、統合幕僚長に各幕僚長、官僚も外務省を始め各部署から代表が集まりつつあった、民間からは大学の専門家がやってくるはずだ。

 

 

 

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 ▼ その頃の日本側の調査隊

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 厚木から上がったP3-Cのキャプテン、相模1尉は目標地域まであと20マイルほどに迫ったときに機影を視認した。

 

 「おい、ありゃ何だ……」

 あぁ……あれはオートジャイロっぽいですねぇ、こんな所にオートジャイロって変ですねぇ……コパイの吉武は珍しいものでも見たと言った感じでコパイ席から振り返って見えなくなるまで追っていた。

 P3-Cの右側500m下方を2機編隊で通過していった。

 

 『どうします?』

 「基地に連絡を入れて予定通り進むぞ!」

 

 アルスタン王国では偵察機としてオートジャイロによく似た飛行体を使っていた。但しロータはない、浮遊部分は浮遊石を使っており、魔石加工したものを燃料にしてプロペラを回転させていた。最高速度は150kmぐらいだ。

 

 プロペラがないタイプの飛行体も存在しているがジャイロタイプがFランクの魔石で1日中飛べるのに対して、プロペラがないタイプはDランクの魔石が必要で数時間しか飛べなかった。

 最高速度は魔石を使ったエンジン自体は軽く音速を超える性能を持っていたが機体の製作技術が追いつかず、最高速は600km程度が限界だった。

 

 P3-Cはアルスタン王国に到達した頃だった。

 「おい、何か上がってきたぞ!」

 『あぁ...今度のは早いですねぇ……インターセプターですかね。ちょっとまずくないですか?』

 

 アルスタン王国から上がってきた機体はあれよあれよというまにP3-Cに追いついた。

 

 ま、まずいですよ。1機、後ろ。射線に付けられています。

 その時、アルスタンの攻撃機は2機は1機はP3-Cの後ろに回り射線に付け、もう1機のパイロットは操縦席が見える位置までよって合図をしていた。

 

  「どうやら奴さん付いて来いって言ってるみたいだ。」

 『ど、どうするんですかぁ?』

 

 「どうするもこうするもないだろう、こっちは丸腰だ。逃げれば撃墜されるだろう、相手の国内まで入り込んでるんだ撃たれても文句は言えない状況だからな。

 相手が日本と同様に撃たれなければ反撃できないなんて甘い事はないだろう、仕方ないさ、黙って従うほかない。」

 

 『それって、拿捕されるってことですよね。攻めて紳士的な国だといいなあ。』

 「だな?、基地からの支持は素直に従えだそうだ。後で外交で回収してくれるそうだ。」

 

 「相手はジュネーブ条約には加盟していないと思うぞ!」

 「そんなぁ~」

 

 

 

 

 

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