第8話 魔神討伐

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 ■ 魔神討伐

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 『ナオト!朝だよ~……キャッ!!』

 『もう~ナオトのエッチィ~!!』

 異世界に召喚されて5日目の朝だ、アリエルは毎朝元気に起こしに来る。

 起きる時に出来るだけ偶然よ装ってアリエルの尻を撫ぜてみた。平気な顔をしてあくまでも事故を装ったのだが、当然、わざと触ったことなどバレバレだ。

 

 何気なく触ったように見せかけたが実は計画的で心臓はバクバクして呼吸は荒く普通に見れば不審者は間違いないだろう。

 

 触りたかった。ここに来てからずーーっと触りたかった、それほど見事なお尻様なのだ。だが、実は女性の尻をなぜるなんて生まれてきてから一度もない。

 

 それがここに来てから実行できた自分を褒めて上げたい気もする、元の世界では絶対、無理だった。そんな事すれば学校では社会的に抹殺されることは間違いないから……

 

 そう、アリエルの気持ちに知ってそう辛辣な結果にはならないだろうと思って厚顔ながらも触ってしまった。

 

 怒られなくてなによりだ。虫けらを見るよな目で見られたら立ち直れないだろう。

 でも、メルクリート王女はまだ、流石に触る勇気はない。

 

 「ごめん!!、実はわざとだ。だってアリエルのお尻とっても魅力的なんだ。俺は駄目だって言ったけど、俺の手が言うことを聞かなくてさ、主人として謝るよ。本当にゴメンな!!」

 

 あはっ、変な言い訳するのねぇ~。良いんですよ、いくらでも触っても、何ならもっと触りますぅ~

 

 「うっ!」

 あぁ、ここでうんと言って思う存分本能のままに行けたらどれだけ幸せだろう、でも流石にその勇気はまだない。

 

 取り敢えず着替えて食堂の方に行くことにする。

 ちなみに俺が行く食堂は兵士やメイドさんたちが食べる食堂だ。最初は王族用の食堂をあてがわれていたけど、やたら広い部屋で一人で横にメイドを数人待たせて食べるのは食べた気がしないので変えてもらっていた。

 

 俺が服を着替えながらふっと目があうとアリエルはじっと見てたのか目があった瞬間に目を伏せる。

 着替えだすとまた、凝視している。また、目が合うと伏せる。面白いのでゆっくりと着替えて遊んでいるジト目で見られたので止めにする。

 

 『ナオト! パンツは脱がないの?』

 俺は慌てて前を押さえた。

 

 アリエルはうふふっ!!と楽しそうに声を上げて笑う。

 うん!! アリエルの方が一枚も二枚も上手でだ、クソーッ 見てろよ。いつの日かヒィヒィ言わせてやるからなと心に誓うのだった。

 

 実はチキンの俺にそんな日が来るかどうかはわからないが……

 

 食堂へ着くとジェシカがいた。

 

 「よう! ジェシカおはよう!!」

 《あら、ナオトおはよう。》

 3人で他愛もない話をしながら食事をする、朝食は薄いスープと焼いたベーコンそれにパン、スープは薄味なのでコンソメをそのまま入れてかき混ぜる。

 

 当初は俺が食事をする時はアリエルは横に立っていようとしたので一緒に食べるように言ったがなかなか納得をしないので気乗りはしなかったが【命令】した。

 食事中の会話も基本マナー違反らしいけど俺はそれをやめさせた。公の食事の時は別として仲間内では気にせずに食べようと……

 今では他のメイドさんや兵士たちも気軽に話しかけてくれる。

 

 さて、今日はいよいよ魔神討伐に向かう日だ。

 俺以外の全ての人達が反対したが、そもそも向こうは待ってくれないのだ、指定した日に生贄を届けなくては行けない。俺が日延をすれば確かに1年の猶予は出来るだろうが、誰かが犠牲になる。

 女神と約束した以上、犠牲を出すわけには行かない。

 確かに女神とはすぐに討伐に向かうとは言ってないが向こうはその機のはずだ。

 

 仕方ないのでジェシカと騎士団を引き連れてグローブルの森に向かった。

 魔神はこの森の奥にある山に住んでいるという。

 森に向かい魔物と戦ってみせる事にした。

 入口付近で一角兎やゴブリンが出てきた。当然、立ち止まることなく瞬殺して奥へと入っていく

 

 少しはいるとオークが20数頭出てきたウィンドカッターで全て瞬殺する、奥に入るに従ってオーガ、トロール、サイクロプスと強いと言われる魔獣たちが出てきたが、全て瞬殺する。メンドゥーサに至っては目を合わせた途端、ダッシュで逃げ出した。

 むろん、石化なんてしない。

 

 その様子を見ていた騎士団、ジェシカも含めて驚くと言うよりは顔を青ざめていた。

 中には震えているものもいる有様だ。

 

 "だ、団長、勇者殿は本当に人族なのですか?"、いくら勇者といえども無茶苦茶すぎます。

 団員一人の言う言葉に他の団員もうん、うん、とうなずいていた。

 

 もう、反対するものはいなかった。

 俺は白装束に身を固め、とはいても元の世界のようなものではなく簡単に言えばシーツを体に巻き付けただけとも言える。

 

 つづらのようなものの中に入って侍者に担がれて行くわけだ。

 ちなみにつづらと言ってもつるで編んだものではなく板でできた箱、もっと簡単に言えば棺桶だ。

 

 グローブルの森の指定の場所近くまでは歩いていった。だって、担がせるのは可愛そうだから...中に入ってるのは少女じゃなくて男だからね。

 

 いよいよ、近くまで来たので棺桶に入ってしずしずと担がれていく……

 今まで幾多の少女たちはこの中でどんな思いをしたのだろうと思うと胸がつまされる。泣きわめく少女もいただろう。むしろほとんどではないのか?

 さるぐつわなんかをされていたのかも知れない。そんな少女たちの思いをよせると腹が立ってきた。

 

 【ゴトッ】

 どうやら棺桶が置かれたようだ。足早に立ち去るものの足音が聞こえる。

 静寂が訪れた。風に揺れる枝の音が聞こえてくる意外に音はしない。

 

 どれだけ経っただろうか?

 俺の耳に足音が聞こえる?、それも複数、5,6人はいるな。そう大きくはない。

 その時だ!!、意外な声が聞こえてきた。

 

 {ねぇ、ねぇ、今度はどんな子かな!、美味しいのはいってるのかな?}

 {ほら、ほら、そんなこと言ってないで早く運びましょう。}

 

 棺は持ち上げられてガサガサと乱暴に揺れながら運ばれていく……

 どう聞いても少女の声だった。少女に化けた化け物なのか?、警戒させないように少女に化けてるのか?

 美味しいとは言ってたな。やはり食べるつもりか……。

 

 俺の透視が働かない……妨害されているのか?

 近距離用の鑑定を使ってもうまく働かないがなんとなくは分かる、周りにいるのは化け物ではなく人族だ。それは間違いない。

 

 ここで動くのは悪手だろう、取り敢えずどこかには着くはずだからそこで対処することにした。

 

 2時間ほど過ぎただろうか、棺の速度が急に落ちたと思ったら下に置かれた。

 

 ガタッ……ゴトッ

 蓋が外される。

 

 『うぎゃーーーっ!!』

 男の人らしきものが出たと思ったら耳を寸座くような叫び声をあげて尻もちを付いた。

 

 「ふーん、貴様が魔神か……覚悟は良いだろうな。楽には殺さん、少女たちの苦しみを味わって逝け……」

 

 <だめーーーっ!!>

 

 いきなり少女たちが割って入ってきた。

 

 どういうことだ!!

 目の前の男は20代前半と言ったところ、見かけは人族だが確実に人族ではない魔物?化け物の匂い?いや不思議ともっと高貴な感じがする。

 

 少女たちは洗脳されているのか?? そんな気配はない、一人を鑑定してみた。

 どうやらここでは鑑定が使えるようだ。

 

 名前:エイミー 女の子(処女)15歳

 種別:人族

 状態:生贄? → 貢がれし者

   以下省略

   

 他の者達も見てみると当然、名前や歳は違うものの状態については全ておなじだった。乱暴された形跡はない。生贄から貢がれし者にかわってる?ん、どういうことだ。

 

 一体どうなってる?

 

 「おい、どういうことなんだ?、とにかく正体を見せろ!!」

 『……あうぅぅ、あうぅぅっ……』

 男は尻もちを付いたまま歯をガチガチ鳴らしながら震えている。

 

 「はぁ、取り敢えず、殺さないから正体を見せてみろ」

 『ほ、ホントに酷いことしない……ほんと?』

 

 「あぁ、嘘はつかない、少女たちも無事みたいだしな。」

 .,,$%)$*)&$#!-)%(*)&+&(!

 

 驚いた。

 男からはフサフサとしたしっぽが生え頭には耳が有る、顔はたぬきだ。

 ちょっと吹き出しそうになってきたがこらえる。

 

 鑑定してみた。

 名前:ーーーーーーーー 神の真名は最上位の神にしか表示できません Error

 種別:獣神   性別:無し 年齢:3306歳

    以下省略

    

 「お前、獣神なのか?、はぁ、神がなんでこんな事してんだ……で、ここにいる意外の少女は食ったのか?」

 

 %%#@|-)||_/##%)/._(|(_/-$*!!*#|.

 

 そっかぁ。さっきの姿にならないと人の言葉が喋らないんだな、よし、変わってよし!!

 

 そうすると先程の人族の男の姿に変わった。

 彼はこれまでの経緯を淡々と語った。それは彼にとっては聞くも涙、語るも涙の物語だった。

 まあ、俺にとっては笑い話だが、かたを付けないと行けない。

 彼の話はこうだ。

 

 彼は旅をしていた。そして10年ほど前、ここに立ち寄った際に生贄の話を聞き及んだ。そしてそんな不埒な奴は退治してやろうと思ったそうだ。

 無論、成り代わりたいって思いも本音ではあったのだろう、しかい彼は獣神まちがっても人を食べたりはしない。ただ、愛でたいと思っただけだそうだ。

 

 三日三晩戦い抜いて獣神も深い傷を負いながらもなんとか魔神を倒した。

 これから少女を愛でながら楽しく暮らせると思ったが、現実はそう甘くはなかったそうだ。

 最初はビクビクしながら優しく接していてくれた少女も時が経つと慣れて行くに従って段々とわがままを言うようになったので冒険者をして少女の生活費を稼いだ。

 

 獣神は次の少女に期待した、すると次も同じでその繰り返しでこの十年間、繰り返してきたらしい。

 

 少女が増えた分、当然、生活費も増えて今では朝から晩まで冒険者として働き今ではSランクの冒険者になって人族の姿では有名人らしい。

 

 獣神は誰ひとりとも殺したりすることなくこの十年間、ただひたすら貢いでいただけ生活を送ってきたということだ。

 

 ご苦労な話である。とても俺にはできそうもない。

 異世界はやはり恐ろしいとこだとこんなところで知らされるとは思わなかった。

 

 誰だ!!、魔神とか言ったやつは……後でクレーム案件だな。

 

 彼は話し終わるとポツリと言った。

 

 『頼む!!この子たちを頼むから連れて帰ってくれ。お願いだ……』

 獣神といえども神だ、それが土下座して頼む姿は痛々しい。

 

 ちなみにスタンピードを出来るだけ押さえているのは彼の力だそうだ。

 

 「わかった、一旦、王都に帰ったら連絡して女の子は引き取りに来るようにさせておく、それでいいな?」

 

 『ハイ、よろしくおねがいします。』

 彼はホッとしたのか軽やかな声で答えた。

 

 <いやーっ、いやよ、なに?あんた誰よ!!、部外者が出しゃばらないでほしいわね。今なら許してあげるからさっさと帰りなさいよ。>

 

 『ミッチー、親も心配してると思うんだな、帰ったほうが良いよ。』

 <はぁ~っ、あんた何言ってんのよ。あんたに連れてこられたんでしょ。ちゃんと責任取ってよ。責任取るって言ったでしょ。嘘なの?>

 

 い、いや連れてたのは僕じゃなくてぇ……

 

 <うっ、うわーーーん、私、捨てられるぅ~帰る場所もないのにぃ。。あぁ、魔物の餌になるんだわぁ、えーーん>

 10人が一斉に鳴き出した。かなりうるさい。イラッと来て殴ってやろうかと思った。

 

 『うん、ごめんね。酷いこと言っちゃったね。僕頑張るんだな。だから機嫌直してほしいな。』

 

 あっ、だめだこりゃ。

 この十年間の集大成を聞いた気がした。

 

 <やっぱり、タックンだね、優しいもん、私わかってたよ。だからお願い、こいつ殺しちゃって!>

 

 『ごめん、それだけは無理。僕じゃかなわない』

 <え~っ、ホントにぃ~>

 

 ギョッ!、なんちゅうことを……鬼だ...鬼女だ、こいつらみんな鬼女だ。

 この山には魔神じゃなく鬼女がいた。

 

 『あのぅ、名も知らぬお方、あなたはご高名な神ですか?』

 「俺の名は【ナオト・シドウ・カルバント】一応、この国の男爵をやっている。人族だ。」

 

 『それはないんだな。確かに神眼で見れば人族となってるけど違うんだな。』

『 僕はこれでも獣神なんだ、人には絶対にまけないんだな。でもひと目見て勝てないとわかった。殺されるって心底恐怖心が湧いたんだな。』

 

 『そんな事は人族ではありえないんだな。それがこの世界のことわりなんだ』

 

 『その証拠に僕の代わりに君がここにいてもスタンビードは起きないんだ。』

『 まちがいないんだ。これでも神なんだから……』

 

 「そんな事を言われてもなぁ……」

 「とにかく、事件は解決だ。女の子達の事は本人の意志を尊重するように伝えるよ。来年はどうするんだ?、それから念の為聞くが帰りたい子はいるか?、いるなら連れて帰るぞ!!」

 

 【…………】

 

 どうやら誰もいないようだ。

 あぁ~ぁ、馬鹿らしい帰ろう。

 

 俺は獣神の里を後にした。

 帰り際、女の子が言っていた責任を取って!との言葉を思い出してジェシカの顔が浮かんだ……

 

 大丈夫だよね。気のせいだよね。気のせいだと言って……

 

 

 彼が言っていた【僕は獣神だと知られたくないんだな】の言葉を聞いてわかった気がする、出来るだけ彼の希望に答えよう。

 

 だめだったら?、知らん!!

 

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