上司と部下か…

 職場の仲間同士で仲が良いと、いい仕事が出来るもんだけど、この研究所の雰囲気はそういう職場みたいだな、俺の気分まで良くなってきた。


 「エレナ、少し二人きりになれないか?」


 「おっと、吼鸞くん、俺が居たら話せないのかな?イヤラシイねぇ、年頃の女を誘う中年の男…うむ、実にイヤラシイ」


 「もう…室長ってば、いい加減にして下さい、付き合いきれないですよ」


 「いい上司じゃないか、こんな楽しそうな職場そうそうないぞ。でも、そろそろ時間のようだ、室長には悪いけどエレナは俺とデートなんでね、失礼するよ」


 「ははは、デートか、そりゃいい。それでだが、吼鸞くん、さっきの話し本気だぞ、気が変わったらいつでも連絡をくれ、遠慮するなよ」


 「これはこれは、承知致しました。室長殿。その折はどうぞ宜しくお願い致します」 


 「ははは、君は面白い男だな、余計に気に入ったよ。恐らく、厄介な事に首を突っ込んでいるんだろうが、恐れずに進めよ、吼鸞くんの背中には羽根が生えている、俺には見えるんだぞ」


 俺は室長の言葉に「ああ」と手を上げて応えた。

 その後、俺はエレナの案内で、この研究室の中でも更にセキュリティの高い実験室へ通された。


 「此処に部外者が入るのは初めてよ、しかも童貞なら更にレア度が増すはね」


 「童貞は余計だろ、それにしても、日本ぽくないな、ハリウッド映画みたいな研究室だよ。で、此処なら秘密の話しが出来るってことか?」


 「ええ、出来るは、この部屋は一切の電波を通さないの、この中ではモバイル製品は勿論の事、認証された電子製品以外は機能しない。つまり盗聴、盗撮は出来ない、秘密の空間よ」


 「こりゃ頼もしいね、それでは早速お伺いしましょうか…」


 これでやっと、ルカズの情報を知ることができそうだ。

 しかし、ここまで厳重にセキュリティ対策するとは、逆に物騒だが、まあ仕方ない。

 国が絡むと規模が大きくなるもんさ、よし、やるか!仕事に張りが出るもんよ。

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