辺りはすっかり暗くなっている。

 街灯の少ない田舎道、交通量も少なくて、俺たち以外に走っている車など無いと思えるほどのNight。


 来た道を引き返し、行き着いた先なんだけど…


 (あれっ、ここ研究所じゃないか、家に行くんじゃないのか)

 

 エレナは何故か研究所へ戻って来たのだが、今度は地下の駐車場へ行くようだ。

 これは何やら、秘密基地への入り口って感じでワクワクしてくるね。


 「ウィザードさん、こっちよ」

 

 エレナに誘導され、バイクを研究者用の駐車スペースに停めた。目的の場所は更に下の階にあるらしく、エレベーターに乗り込むと、インジケータは地下5階を表示して停まった。


 「さぁ、着いたわ」


 「おお、なんだ此処は!」


 思わず声が出たよ。

 エレベーターの扉が開くと、目の前に広がっていたのは、太古の地球の原風景。此処には、観たことのない植物や観たことのない動物達がたくさんいて、さも当たり前の如く生活していたんだからな。


 「おいおい、なんだいコレは?」


 「ふふっ、驚いた?そうねぇ、此処は太古の地球の博物館ってとこかしら」


 「そうか、太古の地球を科学の力で再現してる…ってことか、現実世界で映画みたいな事して、あんたらは楽しんでいるんだな」


 「あら、案外さっぱりしてるんだ、もっと喰いつくと思ったのに、因みにね、遊んでるわけではないわよ、私達人類はいつか地球を離れる時が来て、宇宙のどこかの惑星に移住する、その惑星で地球と同じ生態系や環境を一から作り暮らすの、其れを実現する為に研究してるのよ」


 「ふーん、そいつは壮大な話だな、それにしても、あんたら科学者はやっぱり変わってる、夢が夢の様だ」


 「何よそれ、あなたはリアリスト志向が強いのね、もういいわ、こっち来て、脚見てあげる」


 エレナに連れられるまま、草原を歩き、大きなシダ植物や大きな被子植物の群生地を越えると、いかにも研究室らしい、真白で無機質な部屋が唐突に現れたんだ。


 「ここよ、さぁ、入って」


 エレナが扉の前に立つと、センサーが発動し扉が次々に開いた。

 廊下を歩いて奥へ進んで行き、案内されたのは救護室だった。

 救護室も白の内装で簡易ベッドが二台置いてあった。

 微かに消毒薬の匂いがするのを感じると…途端、救護室に野太い男の声が響いたんだ。


 「やー、エレナじゃないか!どうしたんだい、こんな時間に?」


 「やーって、室長こそ、何しているんですか?」


 「いやはや、息子の事で、奥さんと揉めちゃってさ、ほとぼりが冷めるまで家に帰らんことにしたんだよ」


 「室長、それは逆効果ですよ、今すぐ帰った方がいいです、確か息子さんは今年大学受験でしたよね?尚更ですよ」


 「いいんだよ、俺と息子は強い絆で結ばれているんだ、心配は無用さ、恐いのはだからさ、今日はここに泊まることにしたんだよ」


 「はあ、左様ですか、もう何も言いませんよ」


 「ああ、大目に見てくれよ、それにしても、だ、其方の方は誰なんだい?いくらエレナでも、外部の人間をここに入れるのはちょいとマズいと思うけどな〜」


 俺はなんの気なしに二人のやり取りを聞いていたが。

 白髪混じりの強面こわもて男にまじまじ見られたら、流石の俺も少しは萎縮する。しかし、いくら見たって科学者には見えないだろ、俺は。


 「おお、これは失礼したね、おれは吼鸞、探偵だ」


 「探偵…」


 俺は挨拶をすると、室長の顔つきが恐ろしいほど一気に険しくなったんだ。

 こいつは困った、またもや何かがあるのだろう。

 少し怖がっておくのが正解だったか?

 ま、いいさ、どんな事でもやってやるよ。

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