自宅とは真逆、夏の長い夕焼けに向かって走るブルーの車。帰宅ラッシュの混雑に乗じて、俺は気付かれぬようにバイクで尾けていく。

 

 (まったく、何処へ行くんだか、交友関係の資料には、この周辺に知人友人は居なかったはずだがな)


 暫く走ると、田舎の県道らしくローカルなスーパーや見知らぬ弁当屋が両脇に立ち並ぶ通りに出た。ここがメインストリートなんだろう、その一画にある広い駐車場にエレナの車が入って行った。

 そこにはやたらと派手な外観の建物が建っていたんだが、意表を突かれたね、だって此処はパチンコ屋だぜ。


 (おいおい、エレナにこんな趣味があるなんて、情報はなかったぞ、どうしたものか、行くか行くまいか)


 俺が迷っていると、エレナは小慣れた様子で、入り口近くの障害者専用駐車場に車を停め、忙しなく建物へ入って行ったんだ。


 (はー、大丈夫か?障害者専用の駐車場を使うなんて、どういう神経なんだ、兎に角、行くしかないな)


 店内はジャラジャラ、ガヤガヤ、シャイーンなどなど…騒がしい音が鳴り響く、現実と隔絶した異空間。

 どれくらいぶりだろう、俺は大学生の頃、スロットにどハマりしたことがあった。随分痛い目みたけどな、ざっと20年ぶりだよ、相変わらずな場所だな此処は。


 (エレナはパチンコ派か、ふーん、だいぶ慣れてる様子だな、台選びが玄人だし店員とも顔見知りか、さてと、俺も久々に楽しませてもらいますか)


 俺はエレナが見える場所に良さそうな台を見つけたので、そこで打つ事にした。

 うん、当たりそうな台だ。

 今夜は贅沢出来そうだ。

 心配するなって、ちゃんとエレナは視界のなかさ。

 

 

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