探す、とはいえ建物の中には入れない。  

 なもんでさ、一先ず施設全体をぐるッと歩いて見回してみたんだが、なにせ広大な敷地だ、一周するだけで一苦労さ。


 さてさて、運動が済んだところで、そろそろ本題だ。


 まずは、エレナについて話しておこう。

 エレナは前述の通りルカズの元恋人、職業はルカズと同じく研究者なんだ。

 現在は此処、国立の遺伝子研究所に勤務している。

 情報が確かであればこの施設の一番大きな研究棟の2階に居るはずなんだが。

 

 (しかし、田舎だなぁ。前は田畑で後ろは山か、年頃のキラキラした女子には退屈な環境だろうな)

 

 俺が敷地を見て回って気付いたのは、さすがに国の施設、厳重なセキュリティ対策が敷いてある、ということ。

 勢いに任せて進入するのもひとつの手だが、これは無しだ。無謀すぎる。

 

 腕時計を見ると時間は丁度17時半、恐らく帰宅の時間だろう。

 今日はエレナがここに居ることだけ分かれば良しとしよう。


 (あの車だな…)


 資料によればエレナの車はフィアット500Cのボディカラーはブルー。

 コレがまた、かわいい車なんだ。所謂いわゆるカブリオレ、屋根が開くのさ。


 余談はさておき、暫く目立たぬよう遠くから車を伺っていると、すらっとした長身の女が颯爽とフィアット500Cに乗り込んだ。

 

 (よしエレナさん登場だ、髪は黒くしたのか?元々が黒髪なのか?どちらにしても写真のイメージとは違うな。さてさて、尾行するか、どうするか…)


 俺は迷ったが、尾行する事にしたよ。

 家の住所はわかっていた、念のための行動さ。何となくそうするんだ、直感で動くタイプに理由を聞くもんじゃないぜ。

 

 でも、だ、どうしてそうなる?

 

「おいおい、一体どこへ向かうんだい、エレナちゃん」


 そりゃ、心の声も漏れるさ、何故って?エレナの車は自宅とは真逆に走り出したんだからな。

 大体に於いて予想と違う結果が出るのが、この仕事。近頃じゃ探偵ってのはそういうものだと諦めているよ。


 さぁ、尾行を始めようか。

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