空気清浄機をガンガン利かせ、コーヒー片手に電子機器の専門誌やビーガンの本やらをパラパラと捲り、待つこと数十分。

 ギィーっと寝室のドアが開いた。


 「ふぁー、おはよぅ、久しぶりだねぇ」


 「おう、やっと起きたか」


 「相変わらず元気そうだね、片脚のウィザードさんは」

 

 「ああ、元気だよ。物輪もものわも元気そうでなによりだ。だが、吼鸞クランって呼ばないと、お土産渡さないからな」


 「ん、ぐふっ、すみません、吼鸞さん、以後気を付けます!」


 なんとも掌返しが凄まじい、それが物輪の憎めないトコなんだ、俺はにやけて紙袋を手渡した。


 「おお!野菜と果物だね!ありがとうね」

 

 「健康第一だからな、こんな所に住んでても物輪は食べ物には煩いもんな」


 「こんな所に住んでるからこそさ、そうしないと直ぐに体調崩してしまうよ、食べ物でプラマイゼロってことなんだ」


 近頃のハッカーは健康志向が多いらしい。物輪曰く、仕事が出来るハッカー程、その傾向が強いんだとさ。


 「ところで、君が此処に来るってことは、厄介な仕事ってことだろう?」


 「ああ、そうなんだ、少し複雑でね…」


 俺は此処に至るまでの経緯を物輪に説明した。


 「そうかぁ、三角さんが行方不明になっちまう程か、それは一筋縄で行かないだろうな」


 「そう感じるだろう?しかも、どうやらルカズはとある国絡みの極秘の研究に関わっているらしい、これは相当に闇深いぜ」

 

 「ふふっ、吼鸞が燃えるわけだよな」


 「なんだよ、ふふって、不気味だな、俺はどんな依頼も受けるってだけだぜ」


 「そうだったね、そういう事にしておこうか、にしても、僕も最近は簡単な仕事ばっかりでさ、張り合いが無かったんだ、今回は久しぶりに僕の天才ぶりを発揮出来そうだし、うずうずしてきたよ」


 「あまり調子乗りすぎるなよ、俺はまだお前に正式に依頼していないんだぜ、で、どうする?この仕事受けてくれるか?」


 「ああ、勿論、それはそうと吼鸞さん、報酬は弾んでくれるんだよね?」

 

 「当たり前だ、ただし失敗したら報酬は無しだぞ」


 そうして、俺と物輪は拳を突き合わせた。

 俺たちの契約方法ってやつさ。

 これでいよいよ、本格的に捜査開始だ。

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