「よし、いい天気だ」いつもの様にスタンドからスポッと右脚に義足を装着、朝の準備を全て整えると、ヴゥヴォーンとエンジンを轟かした。

  

 今日もLFAは快調だ、俺は早くから事務所に向かうと、ルカズの元恋人のエレナについて調べるつもりだった、しかし、其の願いは脆くも儚く散ったんだ。


 「こりゃ、酷いね…」

 

 事務所は資料から家具から観葉植物まで、ありとあらゆる物が散乱していた。 

 まぁ、十中八九はソフィア関係の奴の仕業だろう。

 依頼から手を引かせる為によく使う脅しさ、なぁに、初めてのことでは無いから驚きはしないが、これ、片付けるのが面倒なんだよ、分かるよな?

 

 「これ高かったのに…新しいの買わないとなぁ」

 

 PCが破壊されているのを見つけた。

 データはUSBデータに保存してあるから問題ないが、こんなことする奴らのことだ、事務所で仕事するのは辞めておいた方がいい。

 

 俺は尾行を避ける為、念のためバスとタクシーと電車を乗り継いで、かなり遠回りして、とある場所へ向かったんだ。


 (久々だな、ここへ来るの気が引けるんだよな…)


 地方都市の駅近く、徒歩2分の地下1階、そこからさらに秘密の扉を開けると、あいつの作業場はある。


 ギィー

 

 鍵を掛けていない頑丈な扉を開けると、部屋中にこもったカビっぽい匂いが吹き出した、俺は鼻を摘んだよ。


 「おーい、『物輪もののわ』いるか?」


 返事はない、いつも通りの展開だ、こういう時は決まって奥の寝室に居るんだ。


 ドン、ドン!


 「開けるぞ」


 ガチャンとドアを開ける、するとやっぱり布団でぐっすり眠る物輪が居た、こいつのタイム感は臨機応変だが、まぁ、大体は夜型だな。


 「物輪!起きろー、吼鸞だ、仕事持ってきたぞー」


 「うーん、うるさいな、今何時だと思ってんだよ」


 「もう10時だぞ、いい子は起きる時間だよ、物輪君」


 「あー、わかったわかった、わかったからあと少し寝かせてくれ、あっちで勝手に待っててくれよ」

 

 「はいはいー、じゃあ、お言葉に甘えて待つとするよ」


 しかし、物輪の家は陰気だ、別に汚ないわけではないが、薄暗くて多種多様な様々な物で部屋中溢れ返っている。


 (これじゃ、女は絶対に寄り付かないだろうな、ま、他人のことは言えないけど)


 物輪が起きるまで換気でもしておくとしよう。

 カビ臭いなんて絶対によくない空気だろ?

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