かれこれ午後3時になる、マヒロに三角と智子さんの思い出話しを聞かせてあげたり、途中で天丼を出前して腹を満たした。

 マヒロはガッツいて食べてたなぁ、育ち盛りってのは見ていて気持ちがいいもんだ。


 「じゃあ、そろそろ行くよ、突然やってきて親切にしてくれてありがとう、色々と助かったよ」


 「うん、また来てね!連絡先交換したんだから遠慮しないで連絡してよ、それと約束は絶対守ってね!」


 「ああ、分かってる、三角のことが分かったらすぐ連絡するし、そうじゃなくても何かあったら連絡するよ」


 少し名残惜しいが仕事が最優先だ、俺は「じゃあな」と手を振った、マヒロはツルミツを抱き抱えるとツルミツの右前脚を持ったまま「バイバイ」と手を振った。


 ヴゥヴォーーーンッ


 LFAの轟くエンジン音、俺は一度自分の事務所に戻ることにした。

 

 ワンサール探偵事務所に着くと、一度義足を取り外した。

 蒸れるんだよ、夏場は普通の奴だって暑いだろ?

 

 扇風機にあたり、スッとした解放感で爽やかな気分になっていると、テンテンテコテコピロリロンと仕事用の携帯が鳴った、画面表示は非通知、これは何かあるな、そう思ったが出ないわけには行かない、其れが仕事だからな。


 「はい、もしもし、どなた?」

 

 「ふふ、貴方が吼鸞さんね、案外イイ声なのね」

 

 ほう、これは明らかにイイ女の声だ、恐らくだが、少し喉の奥から響く低めの声質は海外の血が混ざっているだろう。       

 そんな気がする。


 「ああ、そうだ、吼鸞だよ、君の名前はなんて言うんだい?」


 「嗚呼、随分せっかちなのね、もう少しこのまま楽しませてくれてもいいのに、もうっ、冷めちゃったじゃない、イイわ特別教えてあげる、わたしは『ソフィア』よ」


 「ソフィア、か、知らないな、俺にどんな用なんだ?」


 「もうっ、あなた本当にせっかちね、用件ばっかりすぐ聞いてきて少しは見知らぬ女ととろけるような会話をする余裕はないの?」


 「お生憎様、俺は探偵、ジェームズ・ボンドではないんだよなぁ」

  

 「そうね、探偵さん、うーんっ、もしくは片脚の、かしら?」


 全く、馬鹿の一つ覚えの様にウィザード、ウィザードと皆んなが言いやがる、今の時代、男も女も俺みたいな奴は其処らに幾らだっているぞっていうんだ。まぁいい、今はソフィアに集中しようや。


 「そうだよ、片脚のウィザードさ、其処まで知ってるてことは、表の人間じゃないねあんた、何が目的なんだい」

 

 「ふふぅ、なにぃ、怒っちゃったぁ?気に障ったかしら、それともぉどこか別の部分が反応しちゃったのかなぁ…」


 「そうだね、ギンギンに反応してるよ、どうやらソフィアって女は信用できそうにない危険な女だってね」


 「まぁ、酷い言い草ね、一応貴方より8歳も年下なのよ、もう少し優しく接してくれてもいいじゃない」


 「そうか、歳下か、でもな悪いが俺は年齢なんて気にしない、気が合うか合わないか、それで決めるんだよ、それよりいい加減に質問に答えてくれないか」


 「ふふ、生意気で可愛い坊やだこと、わかったは教えてあげる、答えはシンプルよ、今回のルカズの件から身を引きなさい、そうしなければ貴方の命は保証しないは、結論は今出してね

 

 「無理だね、俺は受けた依頼は最期までやり遂げる、そういう主義なんでね」


 「うーん、可愛いは、そう言うと思ってたの、貴方とはもう少し話したかったけど残念だわ、サヨナラ」

  

 ツーツー…


 ソフィアは一方的に話し終えると、通話を終了した。

 

 然しだ、序盤から物騒なことになってきた、俺の命が狙われているって事は、三角も同じ目にあっていた筈だ、これは相当に闇深い案件だろう、先ず以て一筋縄ではいきそうにないのは明白だ。

 まぁ、焦ったところで始まらない、取り敢えずは事務所の掃除でもして落ち着こう。

 なにっ?吼鸞らしくないって?

 それは違う、俺は元から綺麗好きだぜ、だって綺麗な方が気分が良いだろう?

 当然のことさ。

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