第10章 夫婦になった二人
第32話 やっぱり仲良しの二人
大学に入学してからもう3か月。
6月で梅雨入りしてるから、朝は雨の事が多くて少しだけ憂鬱だ。
まあ、そんな事はどうでもよくて、隣に
お揃いの、水色で涼しげなパジャマ。
「ペアルックなんかも良くない?」
しかし、より一体感を感じられるというかなかなか悪くない。
直感で行動することが多い百合だけど、グッジョブだ。
「
二人でプレイしているのはSwitchで発売されているFPS。
ネット対戦機能もあるけど百合と一対一で対戦するのがマイブームだ。
ルールは簡単。先に一撃食らった方が負け。
ゲームのルールとは違うけど、緊張感があって良いのだ。
「ふっふっふ。俺には百合の行動パターンなんぞ丸わかりだぞ」
嘯いてみるものの、もちろんそんなことはない。
見晴らしの良い場所から彼女の行動を観察しているだけだ。
「ふーん……丸わかり、かあ」
何かに気づいたのだろう。目を細めて何かを探っている。
こいつの直感は馬鹿に出来ない。
と思っていたら、ジグザグ移動をしながら俺のいるところに一直線。
まずい。今の言葉から高所に陣取っているのを見抜かれたか。
しかも、狙いを定めにくいようにわざとジグザグに近づいてきている。
(あいつの射程外で勝負を決めるか)
幸いこちらの狙撃武器の方が射程が若干だが長い。
百合が俺をロックオンするまでに撃てるはず。
(ん?)
と思ったら急に停止しやがった。
時間制限はないから引き分け狙いはない。
攪乱工作?逆にこっちを引きずりだそうという腹か。
なら、こっちはじっと待つまでだ。
数分待っていると、ある時、突然、百合を視界から見失う。
まずい。フィールドで迷彩アイテムでも手に入れたか?
(効果時間が切れるまで逃げるしかないか)
相手から一方的に視認出来るのは明らかにこちらが不利。
なら、距離を取るのが正解。
というわけで、反対方向を目指した走り出したところ。
ドン。気が付いたら銃弾を撃ち込まれていた。
「よし!私の勝ち!」
「負けた負けた。聞きたいんだけど、迷彩アイテム最初から持ってただろ」
どうにも妙だと思っていたのだ。
「さっすが修ちゃん。もちろん、警戒されないようにぎりぎりまで温存してたよ?」
「今回は負けだな。次はリベンジするからな」
「修ちゃんはすぐに学習してくるから手強いんだよね」
なんて溜息をついてくるが、こいつの判断能力と反射神経は天性のものだ。
地頭だって基本的にはこいつの方が上だから、とにかく考えるしかないのだ。
「ま、いっか。というわけで、私からのお願い、叶えてね?」
「もち。でも、賭けにしないでもそんくらいいつでもしてやれるのに」
「わかってないなー。賭けにするから萌えるんだよ」
「その「萌える」の意味違ってないか?」
「いいからいいから」
実は先ほどからゲームをプレイしているのは俺たちの寝室だ。
しかも、ダブルベッドの上に胡坐をかいている。
「ほら。これでいいか?」
向かい合わせで横になって優しく抱きしめる。
「もっとぎゅうっと」
「我儘だなー」
なんていいつつもこうして夜に抱きしめあう一時が好きだったりする。
シャンプーのいい香りとか、少し湿った髪とかが劣情を刺激する。
「おっきくなってるけど、したくなってる?」
まあわかってしまうか。からかうような声色はなくて、単純な疑問だ。
「正直そういう気持ちはあるけど、明日は一限から授業だし」
今日はまだ水曜日。金曜ならともかくなあ。
「じゃあ、今日は修ちゃんは寝っ転がってていいから」
にししと邪悪な笑み。
「想像はつくけど、俺はあれ、恥ずかしいんだけどな」
「私は旦那様を喜ばせられるから楽しいんだけど?」
こういう時、百合はあえて「旦那様」と呼びたがる。
言っちゃなんだけどプレイの一環なんだろう。
「わかった……頼む」
「素直でよろしい♪」
こうして、百合主導でちょっとした夫婦の営みをしたのだった。
◇◇◇◇
「いつも思うんだけど、飽きないのか?」
「別に?反応見てて面白いし」
「俺はおもちゃかよ」
「だって、修ちゃんだって首筋イジメて楽しむでしょ。それと同じ」
「そこを突かれると痛い」
「だから妙な気を遣わなくてもいいんだよ」
「ありがとな」
百合は結婚してからもっと優しくなった。
我儘を言わないようになった、というんじゃなくて。
我儘の出し方がもっとうまくなった。多少気を遣ってることすら見抜かれてるし。
「ま、そろそろ寝るか」
「うん。これ以上
「百合の方がそれいうのどうかと思うんだ」
「だって、運動みたいなものでしょ?」
「まあいいか」
そういう、どこかあっけらかんとした物言いだって昔からだ。
常夜灯に切り替えて、お互いを見つめあう。
「結婚してもうすぐ3か月だけど……楽しいね」
「そうだな。やっぱり自堕落なのは戻ってきたけど」
「私には修ちゃんがついてるから」
「ま、無理するよりは俺がサポートする方がいいけどな」
「私も、もうちょっとお嫁さんらしくなれると思ったんだけど……」
「別に朝弱いのも自堕落なのもお前だろ。そういうの含めて好きなんだから」
「はあ。そういう殺し文句を自然に言われてキュンと来るのが悔しい……!」
悔しいのか、胸をポカポカと叩いてくる。もちろん、痛くないように加減して。
「こういう胸ポカポカとかもなんかで調べたのか?」
「ちょっとは……いい感じのスキンシップだと思わない?」
「可愛い感じがして悪い気はしない」
「でしょー?これからもリクエストがあったらどんどん言ってね♪」
「百合は割となんでもリクエストに応えてくれそうだから怖いんだけど」
特に、結婚してからはそんな傾向が強い。
「私だって、さすがに嫌なことはあるよ」
「たとえば?」
「身体中の自由を奪いたいとか」
「また極端な例を。ま、いいや。眠くなってきた……」
こんなくだらないじゃれあいで俺たちの一日は終わる。
「明日もまた、こんなくだらない言い合いしようね」
「そうだな」
じきに百合の瞼も下りて、気が付けば規則正しい寝息。
本当に可愛らしいお嫁さんなことで。
(しかし……)
結局、新婚旅行の話はなんだかんだでお流れになってしまったし。
夏休みを目途にどっかに行けるといいんだけど。
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