第2話 貞操観念を逆転しよう

文芸部部室。

いつものごとく、出席者は部長の如月と平部員笹竹の二人きりだ。


「今思ったんだけどさ」

 眼鏡をかけ長い黒髪を三つ編みにした、いかにも文芸少女といった風体の如月が、書きかけの原稿から目を離して顔を上げた。

「貞操観念逆転した世界とかあるじゃん。エロ系で」

「ああ、あるねー」

 どこにでもいる系女子の平部員笹竹は、スマホから目を離さずに相槌を打った。読んでいるのはいわゆるWeb小説だ。18禁でなくゆるーい感じがお好みだ。

「Hして子供を産むのが男なら、簡単に逆転するんじゃないかなって」

「あー?」

「結局子供を体の中で育てて産むのが大変だから、生活の保証してくれる相手以外とHしたくないわけじゃん。男がその辺受け持つなら、貞操観念も逆になってくるんじゃない?」

「…………子供産む方が雌で女なんじゃない?」

 笹竹がスマホから目を離して、如月をジッと見つめる。

「BLで男なのに子供が産める世界とかたまにあるけど、あれも子供産むならそれは雌なんじゃないか、って」

「ゴメン。納得した」

「それはよかった」

 なんとなく会話が終わって、笹竹はスマホに目を戻し、如月は原稿に戻った。

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