文芸部女子たちの麗らかな戯言

西のほうのモノ

第1話 アイテムBOXと青いロボット

文芸部部室。

いつものごとく、出席者は部長の如月と平部員笹竹の二人きりだ。


「今思ったんだけどさ」

 眼鏡をかけ長い黒髪を三つ編みにした、いかにも文芸少女といった風体の如月が、書きかけの原稿から目を離して顔を上げた。

「ゲームキャラで異世界に転移して、ゲームアイテムで無双する系の主人公いるじゃない?」

「ああ、いるねー」

 どこにでもいる系女子の平部員笹竹は、スマホから目を離さずに相槌を打った。読んでいるのはいわゆるWeb小説だ。テンプレートだらけで内容のないストレスフリーのバカ小説を読むのが笹竹の至福なのだ。

「あれってド〇えもんじゃないかなって」

「あー?」

「未来の世界の不思議アイテムをパパラパーって取り出して、文明の劣る世界で無双するっていう」

「ああ、全然違うね」

 笹竹がスマホから目を離して、如月をジッと見つめる。

「だってあの青いロボットモテないじゃん」

「あー」

「それじゃ読者のチヤホヤされたい欲求が満たせませんよ。全然ですよ。さっぱりですよ」

「いや、そこまで言わんでも……」

「私が思うに某ロボットの真髄は在庫管理ソフトなんじゃないかと」

「ほほう?」

「アイテムBOXの中身を検索して、機に応じたものを取り出すという素晴らしい機能があるのですよ」

「何かA〇AZONにも似たような物ありそうだね」

「倉庫は四次元じゃないけどねー」

「未来は目の前ってことで」

「おあとがよろしいようで」

 会話終了の合図を送って、笹竹はスマホに目を戻し、如月は原稿に戻った。




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