第7話

 その後神様は、地球を、人間を全て修復してくれました。


 私たち天使100人でかけた魔法を、たった一人で無いものにするなんて、感嘆の声しか漏れませんね。


 さて、人間へ罰を与える会議の責任者、つまり私のその後ですが、まぁ、天界からの追放は免れました。本当によかったです。


 ですが、それなりの罰は与えられてしまいました。罰を与える立場だったのに、これが天罰というのですかね。罰を与えるのは、ちゃんとした立場にいる人がやるものですね。例えば、神様とか。


 私に与えられた罰は『普段の5倍人間を護れ』というものです。


 しかし、それによって私は人間というものを少し、理解することが出来ました。


 私が見護った5人を、簡単にリストアップしてさしあげましょう。


 1人目、鷺森琴音さぎもりことね。彼女は一人の少女を、意味もなく、ただ皆が嫌っているという理由だけで、皆と同じように少女を嫌いました。なんて最悪な人なんでしょう、そう思っていましたが、しかし、人間は自分の保身の為なら他人の心を傷つけることなど厭わないものです。彼女は、自分を好いていました。


 2人目、南海七生みなみうみななうみ。彼は、子供が好きでした。無邪気でわんぱくな子供が大好きで、将来は保育士を目指す少年でした。そんな彼は、お化けが嫌いでした。彼の方が、よっぽど子供っぽかったですね。


 3人目、仇華葉絞あだばなはじめ。彼は学校が嫌いでした。クラスメイトからは虐められ、勉強もついていけず、先生に怒られてしまう。そんな学校が嫌いでした。そんな彼はカウンセラーの先生が大好きでした。優しく、親身になって話を聞いてくれる先生のことが大好きでした。嫌いな場所に無理に行かせるのではなく、過ごしやすい、安心できる場所を提供してあげる。共存とは、こういう形ですよね。


 4人目、桃中百歌ももなかももか。彼女はアイドルが好きで、自らもアイドルを目指していました。しかし、そんな彼女はアイドルが嫌いでした。これは、今回神様に学んだやつそのままですね。好いていて、しかし嫌っている。彼女がアイドルを嫌っている理由は、しかし妥当なものでした。


 5人目、彩芽小あやめしょう。彼はヒーローでした。比喩などではなく、紛れもないヒーロー、英雄でした。完全無欠で、私が護る余地もない程、彼は完璧でした。そんな彼は、街が好きでした。街が好きというより、街に住む人が好きでした。そして、ヒーローである彼は悪の組織が嫌いでした。一番分かりやすい等式ですかね。正義は悪が嫌いという。


 さて、私は前言撤回をします。私はこれでも、人間に関して理解は出来ませんでした。全くとまでは言いませんが、しかし大方理解出来ませんでした。


 しかし、今回私が人間にした罰の与えかたが、間違っているということについては理解できました。


 人間は、各々が好きなモノと嫌いなモノを持っている。林檎が好きな人間がいて、林檎が嫌いな人間がいる。


 これは勝手な妄想で、そんな事あり得ないのだが、林檎が嫌いな人間のために梨が生まれたとしたら、それは素晴らしいことではないだろうか。


 嫌いな物があるから、その人が好きな物を作る。そうして人間は、文明を発展していった、なんてことはないだろうか。


 私は、人間が嫌いだ。出来れば罰を与えたいが、しかし、それではダメなのだと神様は教えてくれたのだろう。


 人間が嫌いなら、好きになれるような人間を作れ。


 私が見護り、人を正していけばいい。それだけのことだろう。


 罰なんて、必要ない。


 「さて、今日も人間を嫌いましょうか。嫌って嫌って、好きになりましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人間嫌いな天使たち ナガイエイト @eight__1210

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ