第5話

 会議室に戻り、そこにあるモニターを見た瞬間、私は度肝を抜かれました。実際に肝臓の1つは抜かれたかもしれません。


 「は!?」


 それか、今度こそ、私の目玉は飛び出ていたかもしれません。それもそうでしょう、誰だってこんな現実を目の当たりにしたら、目玉なんてすぐ飛び出ますよ。


 なんたって、地球が、地球が…


 「二個になってる…」


 全員の開いた口が塞がってませんでした。それもそうです、こんな結果は誰も予想していなかったでしょう。


 まさか人間の嫌いな物が地球だったなんて。


 「神から与えられた大地の恩恵を、コイツらは一体どこまで貶せば気が済むんだ!」


 と、誰かが怒っています。全くもってその通りです。いい加減にしろと、怒りたくなります。


 しかし、そんな考えは一瞬で消え去りました。


 「皆!この地球、元々あった第一の地球と、形、人口、文明、何もかもが同じです!」


 そんな事があるんでしょうか。人間の嫌いな物を二倍にすると、そっくりそのまま同じ世界がもう1つ出来てしまうなんてこと。それでは人間は、世界の全てを嫌っているということであり、それは間違いなく、恩恵を与えてくれた神様への冒涜。


 忘れた怒りの感情が、刹那にしてよみがえりました。そして、それと同時に気がつきました。


 これでは、罰の意味が無い、と。


 そもそも、罰とは、相手に影響があって初めて罰になると言うのに、惑星の外に同じ惑星を造ったからといって、それでは第一の地球に住む人間への罰にならないではないですか。


 だから、ここで頭の切れる私は思い付きました。今度は、人間の好きな物を全部消してしまおう、と。


 しかし、社の水晶は消えてなくなってしまいましたし、一体どうすれば私たちの願いが叶うのか。なんて、考えるまでもありません。


 総力を上げて、 魔法でどうにかしてみせましょう。


 天使には、人間を救う為に神様から与えられた魔法の力があります。それを駆使すれば、どんな事だって可能なのです。


 最初からこうしておけばよかったですね。


 「皆さん!準備は良いですか!」


 「「「はい!」」」


 そうして、私たちは地球に向けて、人間の好きな物を全て消す魔法を掛けました。


 100人同時に魔法を放つとなると、流石に眩し過ぎて、思わず目を細めてしまいました。一体今、地球は、人類はどうなっているのか。それは全く分かりませんでした。


 けれど、眩い光は水晶同様に一瞬であり、刹那後には、もうモニターが見えました。


 「は?」


 全員が、そんな間抜けな声を発しました。


 それも仕方がありません。地球が二倍に増えた時よりも、それは驚愕な事実だったのですから。


 驚愕な事実、それは。


 「地球が、失くなりました…」


 全人類が嫌っている二つの地球は、塵も埃も残らず、綺麗さっぱり、宇宙空間から消えてしまっていました。


 ということは、です。考えられる可能性は二つです。


 1つ目は、『私たちの魔法が、失敗してしまった』。


 2つ目は、『人間は、世界の全てを好いていた』。


 正直言って、両方とも信じれない可能性です。


 まず、私たちが魔法をミスする筈がないのです。有り余る自負心だとか、そういうわけではなく、私たちの力は神様が与えてくれた力で、しかし神様の力には劣るので、出来ないという事はありますが、失敗をするということはありません。


 なので、0対10で2つ目の可能性が真実だということになるのですが。


 「だって、人間は世界の全てを嫌っていた」


 意味が分かりません。世界の全てが嫌いでありながら、世界の全てが好きであるだなんて。


 もう、困惑し過ぎて頭が回らない私たちは、神様へ会いに行くことにしました。

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