第4話
他の案についても訊いてみましたが、結局、最も多い指示を得た案が、リマちゃんの『全人類の嫌いな物を二倍にしようの案』でした。
そして、その案の提案者リマちゃんと、この会議の責任者である私は、わざわざ天界の端にある、先代の神様の社までやってきていました。
「いくら翼があるとは言え、流石に疲れます。てか、歩く方が楽かもしれませんね。翼を動かす度に背筋が悲鳴を上げてますよ」
「そう?エルちゃんはか弱いんだね」
わんぱくな少女は、痛みには屈しないんでしょうか。しかし、こんな可愛い彼女が、人間に罰を与えたいだなんて、想像だに出来ませんね。何か酷な理由でもあるんでしょうか。
しかし、そういった話はデリケートですし、私はそういうところ弁えているので、訊きはしませんでした。
「着いたよ」
赤が目立つ木造建築。日本の神社と大きな差はありません。
私たちはお辞儀をして、社の中へと失礼しました。
社の中はかなり質素なもので、広い部屋の真ん中に、水晶が1つ、台座に置かれているだけでした。
「初めて入りましたけど、なんだか楽しくない場所ですね」
「だ、だめだよエルちゃん、そんなこと言っちゃ」
「分かってますって。で、神頼みはどうすれば良いんですか?」
「えっと、分かんないけど、この部屋に唯一あるあの水晶に、お願いでもすれば良いんじゃ」
「ですね。それしかありませんし、神様の社内は不躾にテクテク歩き回るのも良くないですしね」
私たちは、軋む床を歩き、水晶の目の前まで行きました。
「どう願うのが正解なんでしょうか」
「んーっと、あ、この社は日本のモノとそっくりだったし、普通に二礼二拍手一礼で良いんじゃ」
リマちゃんの案で、私たちは二礼二拍手一礼をし、透明で素朴な水晶に、『全人類の嫌いな物が二倍になりますように』と、願いました。
すると、目の前に置かれていた水晶が突如輝きだし、眩い光に私たちは包まれました。
しかし、それは一瞬のことで、次の瞬間にはその光は消えていました。そして、水晶も消えていました。
「およ?水晶はどこに行ったんでしょうか」
「エルちゃん、盗んじゃダメだよ」
「誰が盗みますか!人間じゃないんですよ!」
しかし無いものは仕方がありません。
「帰りますよ。様子を見に行きましょう」
私たちは、そのまま社を後にしました。
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