未来を見ることはできる

 誰からも話しかけられないまま。

 私の小学生時代は終わった。大人になり、大人になった今だからこそ振り返る事が出来て、その振る舞いが気持ち悪く見えることが当然と思う気持ちもある。

 同じくらいの大きさで『まあどうにもならなかったなあ』という投げやりな気持ちもある。

 学校に行く、授業を聞く、帰る。

 学校に行き授業を聞き帰る。

 私の小学生時代はそのルーチンだった。誰も話しかけず、誰にも話しかけようとせず。休み時間は一人で図書室で過ごす。

 そしてまた次の日も学校に行き授業を聞き帰る。

 その繰り返し。余計なことを言ってはいけない、皆が未来を見たりすることはないと、そう学んだ私だったが学校では居場所はないし、そんな小学校が楽しくなることは二度となかった。

 だが学校に行っては暗い顔で帰ってくる、そんな私をちゃんと気にかけた母には今でも感謝しかない。母のおかげで学区が変わり、中学校に上がったころには私は学生の社会でうまく立ち回ることを覚えた。気づいたことを全部口にする必要はないのだ。起こってしまう事を予め覚悟して出来る事ならフォローする。無理な事だったならその結果を飲み込み、生きていくしかない。




 それが母が死んだに覚えた事だった。

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