不便ではなく便利でもない
だとして私は未来が見える、なんてことを人に言う事はなかった。
その頃の私は『私に見えるのだから皆もなんとなく数時間後や、明日や、来月の出来事を知って生きている』とぼうっと考えていたのだ。
小学生のある日のこと、長い休みに入る前に私は友達の未来を見た。未来を見た、と言うより結果を知ってしまったのだ、と思う。
その相手は多分初恋の男の子で、凄い仲の良かった。凄い仲の良かったとしか言えないのは単にその相手がもういない、確認できない相手だからだ。
夏休みに入る前、彼が祖母の家に行く中で事故に合う、その未来を数日前に見た私は祖母の家に行くんだー、虫採るんだーと楽しそうに楽しそうに話す彼があまりにも楽しそうで、能天気な調子だから思わず口にしてしまったのだ。
『お婆ちゃんちに行くじゃん?行かないほうがいいよ、事故に遭うから』
率直にそう告げて、その結果を今でも覚えている。
とても奇妙な目つき、そして怒りを買って彼は私が言ったことをクラス中に触れて回り――そして、やっぱり休みが明けころには彼は学校に戻らず――私はその事に泣いた。
泣いたのだけれども『その不幸な予言を口にした』事実は、私には不都合に働いた。
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