第18話

一学期が終わるのはあっという間だった。

あれから僕たちの仲は前のようには戻らず、相変わらずぎくしゃくした空気が流れていた。

こんな空気が心底嫌だなあと思う。

何より嫌なのは昔のように戻ってしまった自分自身だった。


 「いずみ君!ちょっと待って!」


終業式も終わり帰ろうとしたところで委員長に呼び止められる。


 「なにか提出し忘れたものでもあったっけ?」


貼り付けたような笑顔で委員長に答える。


 「いや、そうじゃないんだ。班別学習なんだが、夏休み明けには8割は完成している状態にしておきたいんだ。だから夏休みに何回か集まって進めたいんだが大丈夫か?」


なんだ、そんなことか。…いや、大事なことか。

夏休みの予定を一通り思い起こして何もないことを確認する。


 「うん。それじゃあ予定が決まったら教えて。僕はいつでも大丈夫だから」


そう言って委員長の反応を見る。何か言いたそうにしていたが、ずいぶんと迷ってるようだった。何もないなら帰ってもよいのだろうか。


 「それと…!」


校門の方へと向き直った途端に声を掛けられる。

やっぱり何かあるのかなと振り返る。

あ、今すごい目つき悪かったかもしれない。


 「…いや、学園は夏休みの間も解放されてるからそんなに持ち帰らなくても大丈夫だぞ」


そっか、そうなのか。わざわざこんなにまとめて帰る必要はなかったのか。

それはずいぶんと良いことを聞いた、と思う。


 「そっか、ありがとう」


もう一度、貼り付けた笑顔を見せる。

その笑顔を見た委員長は少し安心したように見えた。

委員長も同じように笑う。


 「じゃあ、またな」


 「うん、またね」


お互いに笑顔で、手を振って帰路につく。

振り向いたときには笑顔は乾いていた。

委員長の笑顔が羨ましかった。自分の笑顔が醜くて辛かった。

空は相変わらず濁っているし、視界はいつもぼやけていた。

耐えきれずに道端にしゃがみこんだ。

誰かに助けてもらいたかった。

今更誰かの助けを待っている自分が嫌いだった。

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