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「はい! 話は終わった? そしたらさきっちはまだちゃんと休んでて。若葉さんは準備を始めてくださいね。もうみんな集まってるみたいですよ」

 夢咲さんは立ち上がり言う。若葉さんも追って立ち上がる。表情は笑顔に戻っていた。俺の肩を軽くもんでドアの方に行った。

「曽根君、ありがとう。本当は君にも参加して欲しかったんだけどね」

「もう、さきっちは休ませないと、ダメでしょ」

「分かってるよ」

 そして、若葉さんは部屋を出た。夢咲さんは引き出しを開けてなにかを探している。俺は、また眠りにつきそうになっていた。想像以上に身体は疲れていしてるらしい。眠りに落ちそうになったそのとき、ドアが開いた。

「夢咲、もう始まるぞ」

「わざわざ呼びにくるなんて珍しいじゃん」

 真っ白な服に身を包んでいる背の高い男がやってきた。服装が違かったので一瞬、誰なのか分からなかったが、すぐに高野さんだと気がつく。

「病人の様子を誰も伝えに来ないんだ。忙しいってのにしょうがなく見に来たんだよ」

 高野さんが俺を見る。病人とは俺のことらしい。

「服、似合ってるじゃないか。なぁ夢咲」

「な、なに。なんで私に聞くの」

 さっきまでなにかを探していた引き出しを急に閉めて、高野さんと俺を交互に見ている。

「なんでって、なんでだろうな」

「あー、もう。そんなことより、時間だから私行くよ。圭も遅刻しないでね!」

 夢咲さんが早足で部屋を出て行く。結局、探し物は見つかったのだろうか。

 高野さんは水を飲んでいる。一口にコップ一杯を飲み干した。

「曽根だったか。一応、教えておくがお前の服はそこにあるからな」

 ニヤニヤとしながら、制服の場所を俺に教えてくれた。指差す方を見て、高野さんのいやらしい笑顔と夢咲さんの不審な挙動の意味が分かった。

「じゃあ、俺も行くわ。顔が赤いが、心配しなくていいぞ。お前のはどこに見せても恥ずかしくない代物だったからな」

 ドアから出ると、右手だけを部屋の中に見える様にして、親指を立てている。小馬鹿にしているのか、肯定的な意味なのか、いまいち判断しきれない。

 改めて、畳まれた服を見てみる。何度見ても間違いなかった。そこには、俺のトランクスまでもが、綺麗に積まれている。

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