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「そうだよね。ごめん。曽根君、簡単に言うと、あの拳銃は玩具なんだよ。火薬で音が鳴るだけなんだ」

「玩具ですか?」

「そうだ。納得できるかい? と言うより、今君が生きてること自体が証明になると思うがね」

 確かに体は無傷だ。しかし、あの青い袋には本物の拳銃が入っている筈だ。いや、そもそも拳銃で撃たれた記憶自体が妄想だとしたら、あれが本物だったという根拠もないのか。

 ふと視線を感じる。若葉さんだ。黙り込んでしまった俺を観察しているようだった。

「曽根君、目覚めてすぐで頭が回っていないのは分かるんだが、その、質問には答えて欲しいな」

 表情は笑顔のままだ。若葉さんは、他人が自分の思い通りにならない時でも取り乱すことがない。

「あの、すみません。えっと、納得、もちろん出来ます。あの拳銃は玩具だったんですね。全然気がつきませんでした」

「そうだね。曽根君は、気絶してしまうくらいに本物だと思い込んでいたんだ」

 いつのまにか、若葉さんの手にコップが握られている。一口飲んで、夢咲さんがコップを受け取った。俺と目が合うと、「飲む?」と、口だけを動かして聞いてくる。俺もなぜか、言葉を発せずに「大丈夫です」と口を動かした。夢咲さんはニコニコして頷く。

 若葉さんが咳払いをした。

「いいかな。私からの質問まだあってね。これがね、とても引っかかっているんだ。ここに呼んだ理由も、このことを聞きたかったからなんだが、長引いてしまって済まない。まさか、本当に気絶してしまうとは思わなかったから、いや本当に……」

「若葉さん、長いです」

 夢咲さんがピシャリと言う。

「ああ、そうだな。つまりだ、聞きたいことはこれなんだ。曽根君、君はなぜあれを本物の拳銃だと信じて疑わなかったんだ?」

「それは、たしか袋を机に入れる時に形が見えて……」

「なぜ、本物の拳銃だと思うんだい? クラスメイトが学校に持ってくるのなんて、普通はエアガンとか、そんなのを想像するんじゃないか」

「それは……」

 確かにそうだ。普通であれば本物だなんて思わない。しかし、俺は実際に撃たれたんだ。だからあれが本物だと思った。

「まさか、教室で拳銃を見るとは思わなくて、気が動転してしまったんだと思います」

 しかし、そんなこと現実的にありえない。やはり、気が動転して本物だと勘違いしたんだろう。

「ふーむ」

 若葉さんの納得のいかない表情をしている。俺は、撃たれたことを話そうと思ったが、夢咲さんがどんな反応をするかを考え、やめた。

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