5
人形の頭に空いた小さな穴に、水で柔らかくした粘土を押し込む。表面を処理しながら乾かしてやれば、修復は完了だ。
「コツは、元通りになるとは思わないこと。ほとんど元通り、くらいを目指すんだ」
それは、壊れた人形を修理してくれた細身とは程遠い店員の言葉だった。なぜ、そんなことを思い出したのかは分からなかった。
頭がひどく熱い。触ってみると、ぬるぬるとしている。少し手を止めると糊のように固まりそうな予感がした。あれ、ここじゃないなと思い、痛みの中心に手を近づける。それは眉間の少し上のあたりらしかった。
堪えきれない吐き気に襲われた。しかし吐くことは出来ない。おぞましい寒気が襲ってくる。もう動きたくないのに、両手は勝手に痛みの中心を求めていた。ほとんど痙攣しながら、右手が痛みの中心地にたどり着く。
そこには穴が空いていた。傷の深さを探ろと指を差し込むと、難なく奥まで届いてしまいそうで、第一関節くらいでやめた。吐き気が強くなってくる。誰かが俺を呼ぶ声が聞こえてきたが、もう、なにも答えることはできなかった。
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