第19話 予選その②
Bブロックの予選も無事に終了した。
Bブロックで一番の盛り上がりを見せたのは、クロムのパーティーメンバーが参加していたことか。
斥候のラルドという男だが、彼も決勝トーナメントに駒を進めた。
Bブロックの予選が終わったタイミングで昼休憩がはさまれ、クララの出場するCブロックの予選は午後から開始された。
『Cブロックの予選開始ですッ!』
観客たちが雄たけびを上げる。
クララも負けじと大音量の咆哮を上げながら、近くの選手たちに突貫した。
「優勝賞金は私のもんじゃぁあああ!」
「ふごっ!?」「でぃやぁああ!」「はべらがう……」「ぴぎゃっ……」
常人とは比べ物にならない速度とパワーでヌンチャクを振り回すクララ。
彼女の周りに次々と人の山が出来上がっていく。
『おーっと! 異国の武器で戦う少女が無双しております! あれはクラリーナ選手ですね。Aブロック予選で見た光景が、よもやここでも再現されようとは! 彼女も今大会初出場とのこと! 毒を塗ったナイフを肌身離さず持ち歩いていないと気が狂いそうだから大会に持ち込ませてくださいとスタッフに交渉をしまくっていたこと以外は、一切情報がありません! いったい彼女は何者でしょうか!?』
武闘大会のルールでは武器の持ち込みはOK(大会スタッフの審査によって許可をもらうことが条件)だが、毒物の持ち込みは禁止されている。
正々堂々と正面からぶつかり合うというのが、この大会のポリシーなのだから。
ちなみにクラリーナというのは、クララが使っている偽名だ。
アリアはアリアーナという偽名を使っている。
「ムサツよ。ここで決着をつけようか」
「望むところだ、コヅロウ!」
ライバルとしてお互いに高め合ってきた二人の男の熱き戦いが始まろうとして――
「邪魔ですよ!」
割って入ったクララが、一撃で二人ともノックアウトした。
『クラリーナ選手が強すぎる! Cブロックの見どころだったAランク冒険者の二人が、一瞬で倒されてしまったぁぁあああ!!』
クララによって、すでに三十人以上がノックアウトされている。
残った選手たちはクララの排除が最優先だと判断したらしく、全員がクララを標的に定めた。
「一時休戦してみんなで私を倒そうとしても無駄ですよ。だってみんな雑魚だもん」
クララが中指を立てながら、他の選手たちを煽る。
簡単に挑発に乗せられた選手たちが、連携のことなど忘れて一斉にクララに襲いかかった。
「
右目を赤く煌めかせたクララが、最短ルートで選手たちの間を駆け抜けた。
「私の勝ちです」
クララが人差し指をビシッと天に向けた。
選手たちが崩れ落ちる。
リングに立っていたのは、勝者のクララだけだった。
『決まったぁぁあああ!! クラリーナ選手が圧倒的な強さを見せつけました! 選手撃破数最多記録を更新しました! 決勝トーナメントに駒を進めたのは、クラリーナ選手です! もう一人の予選通過者はクラリーナ選手に最後に倒された人になるでしょう! 現時点では誰が最後に倒されたのかわかっていないので、後ほど公表します! 今は勝者のクラリーナ選手に盛大な拍手を送ってあげてください!!』
観客たちの拍手喝采を浴びながら、クララはリングを後にした。
◇◇◇◇
「二人ともお疲れ様。カッコよかったわよ」
「姉貴に私の雄姿を見せることができてよかったです!」
「みんな強くなかった!」
武闘大会一日目。各ブロックの予選を終えた後。
宿に帰るなり、二人が私に抱き着いてきた。
「明日は頑張りなさいよ」
私は二人の頭を撫でながら二人を応援したところで、アスモデウスが提案を持ち掛けてきた。
『我輩が悪魔マジックを使って、二人が決勝でぶつかり合うことができるように取り計ろう』
悪魔笑いをするアスモデウス。
私は呆れた声で返す。
「それって不正なのでは?」
『問題ない。アリアを第一ラウンド一戦目に、クララを四戦目に配置するだけだ。他は何もいじらないから、決勝で正面からぶつかり合うといい』
「さすがよしお! 気遣いができる男はモテるよ!」
「それくらいならグレーって感じかしら? とにかく、二人とも明日は頑張りなさいよ!」
「もちろん!」
「生意気なSランク冒険者をブッ飛ばして、私たちが決勝で激闘を見せてあげますよ!」
服の袖をまくって力こぶを作ったアリアとクララ。
そんな二人に向けて、アスモデウスがまたもや提案を持ち掛けた。
『うむ。二人とも気合充分なようだな。その意気だ。では、景気づけとして我輩が手料理を振舞おうではないか』
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