第17話 アスモデウスの故郷
アスモデウスがアリアに憑依してから一週間後。
私たちは、帝国の東側の辺境の地であるバハムートンという街にやって来た。
「賑わってますね~」
『武闘大会が近いからな』
「なるほど」
「活気があっていい街じゃないの」
バハムートンは、とても活気あふれる街だった。
大通りはたくさんの人が行きかい、いろいろな店が並んでいる。
今も食い逃げした青年をガタイのいいおばちゃんが取り押さえていたりと、街は賑やかだった。
武闘大会で盛り上がってるような街だし、屈強な人間が多いわね。
なんか街角で筋肉自慢大会みたいなのが当たり前のように
『武闘大会は三日後だ。まだ受け付けはしているだろうから、先に済ませるとしようか』
「賛成! その後は料理巡りしようよ!」
「いいわね」
「私も賛成です! さっき見たんですけど、ウナギの蒲焼きっていうのを提供している店がおいしそうでした!」
この街は、街のすぐ隣を流れている運河の水運業や漁業で栄えている街よ。
そのウナギの蒲焼きってやつ以外にも、おいしい魚料理はいっぱいあるはずだわ。
私たちは昼ご飯を食べる店を品定めしながら、大通りを進む。
しばらく歩いていると、武闘大会の会場が見えてきた。
「大きいわね。これだけ大きかったら、観客もすごく多そうね」
私たちの目の前にそびえたつのは、巨大なコロッセオ。
この街の住民が全員入ってもまだスペースがあるほど大きい。
『武闘大会はこの街の目玉だからな。地元住民だけではなく、観光客もたくさん来るのだ』
財布のひもが緩んだ住民や観光客のおかげで、さぞかし儲けられるのでしょうね。
これは優勝賞金に期待だわ。
そんなことを考えていると、クララが話しかけてきた。
「武闘大会は誰が出るんですか?」
「そういえばそうね」
今回は行き当たりばったりでのんびり動いてたから、誰が大会に出るのか考えてなかったわ。
『ふむ。そうだな……。リリスお嬢はいろいろと目立つから出るのはやめたほうがいい。我輩の
「わかってるわよ。私は見るだけにするわ。出たところで、骨のある相手に出会えるわけないからね」
『というわけで、アリアとクララが出るがよい』
アスモデウスがそう告げた。
アリアとクララがお互いの顔を見る。
そのまま見つめ合うこと数秒。
先に口を開いたのはアリアだった。
「これは、決勝で会おう! 的な展開ってこと?」
『平たく言えばそうであるな。どうせなら実力の近い二人が戦ったほうが、見てるほうとしても面白い』
「そうね。私もどっちが勝つのか気になるわ」
アスモデウスの提案が面白そうだったから、私も同意する。
ちなみに今の二人のレベルは180くらいよ。
前の温泉襲撃事件でかなりレベルアップしてたわ。
「それに、そろそろハッキリさせる頃合いだと思うんですよ」
クララが不敵に笑う。
「クララ、どゆこと?」
アリアが首をかしげる。
「私とアリアのどっちが強いのか、ですよ」
「あー、確かに!」
「というわけで、アリア! 勝負しましょう!」
クララがビシッと人差し指を突きつける。
「望むところだ! アリアが勝つ!」
アリアは二つ返事で勝負に乗った。
「「勝ったほうがお姉様(姉貴)に膝枕されるということで勝負だ(です)!」」
「なんで勝手に私が優勝賞品みたいになってるのよ?」
『決まったようだな。では、受付で選手登録するのだ』
なぜか優勝賞品は私の膝枕ということで勝手に話がまとまった。
別に膝枕くらいならいくらでもしてあげるわよ?
そんなこんなで受付を済ませた私たちは、武闘大会開催までの三日間を観光と料理巡りでのんびりと過ごすのだった。
もちろん、アスモデウスも久々の故郷を堪能していたわよ。
連日、鮭おにぎりを片手に鮭料理を食べ回っていたわ。
どれだけ鮭が好きなのよ、あの悪魔は。
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