第8話 仲間を強くしすぎてみた
アリアとクララが仲間になってから一ヶ月。
「お姉様! ブラックドラゴン倒したよ!」
「私たちにかかれば余裕ですよ! 姉貴が出るまでもないです!」
クララとアリアが強くなりたいと頼んできたから、私は二人を連れてダンジョンに向かった。
三年前、私が逃げ込んだあのダンジョンへと。
ダンジョンの入り口にいる冒険者ギルドの職員たちを気絶させてこっそり侵入し、ダンジョンに挑んでいる冒険者たちを避けて二人のレベル上げを
戦いの基礎を私が教えて、あとは実際に二人を魔物と戦わせる。
これを一ヶ月ほど続けた。
二人は戦闘センスがかなり高く、メキメキと成長していった。
教え甲斐があって楽しかったわ。
「……のはいいけど、二人とも強くなりすぎでしょ!」
「えっへん!」
「そうでしょうそうでしょう」
出会った時は15レベルくらいだったのに、たった一ヶ月で150レベルくらいまで上がっちゃったんですけど……。
あっという間にSランク冒険者パーティーの攻略階層よりも深い五十階層まで来ちゃったんですけど。
「……ひとまず、これで修業は終了よ」
「もう終わり?」
「私はもっと強くなりたいです!」
アリアはパワー、耐久、スピードに優れているから、純粋なアタッカー。
クララはパワーとスピードに優れており、自分で調合した毒を塗った暗器などを駆使して戦う。あとは格闘術。
どちらかといえば
「二人とも充分強くなったわ。強さを求めるのはいいけど、ずっとそればっかりだと疲れるわよ」
「がぁ……」
落ち込んだアリアの頭を撫でると、アリアがパッと顔を明るくして抱き着いてきた。
「私も!」と迫るクララの頭も撫でてあげながら、私は提案をした。
「たまには息抜きも大事だし、私はもっといろいろな場所に行きたい。公爵時代は仕事で忙しかったからね。というわけで、温泉に行かない?」
「「温泉……?」」
クララとアリアが顔を見合わせてから、
「行く!」
「行きたいです!」
二人そろって即答した。
「お姉様と一緒にお風呂入れる! 楽しみ!」
「姉貴の裸体が……! ふへへ」
「はいはい。二人とも変な妄想しない。ほら、行くわよ」
「「おー!」」
◇◇◇◇
数日後。
「着いた!」
「温泉の街レナード!」
「温泉が楽しみね」
私たちは帝都の北にある温泉街と呼ばれているレナードの街にやって来た。
街のすぐ近くに火山があり、この街は豊富な温泉が湧き出ている。
それを目当てに来る観光客で潤っている街よ。
ここの温泉は疲労回復や美肌効果が高いということで、帝国の中でもかなり有名なのよ。
「たっぷり堪能するわよ!」
「いつにも増して楽しそうですね」
「こんなにワクワクしたお姉様を見るのは初めてだね」
「当たり前でしょ! 温泉なんだから!」
公爵時代にこの街のことは何度か耳にしたけど(貴族界でもかなり有名なのよ。特に婦人に)、実際に来たのは今回が初めて。
ワクワクしないわけがないじゃない!
「すぐに向かうわよ!」
「おー!」
「ラジャー!」
「クララは髪の毛で耳を隠してれば問題ないけど、アリアは隠しようがないから街中ではずっと帽子をかぶっとくのよ」
「わかった!」
「よろしい」
いつものごとく不法侵入して街に入る。
街の入り口で衛兵のチェックを受けようものなら、指名手配とか人族じゃないこととかがバレるかもしれないからね。
クララはぱっと見じゃわからないけど、アリアは被らせている帽子をとるだけで
「お姉様! あの温泉卵なるものを食べてみたいです!」
「アリアは
「どっちもおいしそうね」
街中の景色を眺めながら散策する。
街路樹の管理が行きわたっていて、街の景観は美しかった。
街の中心までやって来た私たちは、きれいな噴水のふちに腰かけた。
【無限収納】から買い込んだこの街の名物を取り出して、みんなで堪能する。
「お姉様! 温泉卵おいしいですよ! 生卵とも茹で卵とも違う火の通り加減による食感や味わいがくせになります!」
「
二人に絶賛された温泉卵と
私も食べてみる。
「ホントね。どっちもおいしいわ」
「でしょでしょ~」
「でも、二人の血のほうが何百倍もおいしいわよ」
「えへへ。お姉様にそう言ってもらえてうれしい」
「私の血でいいならいくらでも吸ってください、姉貴!」
「落ち着きなさい。血を吸うなんてワードは大きい声で言わないの。今日の夜にじっくり吸ってあげるからね」
私たちはクララに連れられて、一件の高級旅館までやって来た。
「ここがクララの言ってた旅館ね」
「イエス、姉貴! もちろん貸し切りです。温泉も三人だけで入りたい放題なので、アリアの正体が他の人間に露見することもありませんよ」
クララがキリッとした表情でグッドポーズした。
「ナイスよ」
私もグッドポーズする。
「さすがクララね」
「クララは天才!」
「フッ、それほどでもありますけどね」
どういうことかというと、クララだけ事前にこの街に来させていたのよ。
頼れるクララに魔物素材を闇取引で売り払ってもらい、そのお金でこの旅館を貸し切りにしてもらったってわけ。
つまり、賄賂ね。多額のお金を握らせて言うことを聞かせたってこと。
「さ、行くわよ」
「温泉温泉♪」
「ふへへ。姉貴のおっぱいが……。へへ」
私たちはチェックインを済ませた後、すぐに温泉に向かった。
さあ、たっぷりと堪能するわよ!
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