第31話 仲間になりたそうな目でこちらを見ている▼
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コード:ソフィスト
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・【言語理解】のLvを1上昇
・【言語学習】のLvを1上昇
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使用可能時間:30分
再使用可能時間:1時間
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台座に置かれていた錠前を鑑定すると、そんな情報が手に入った。どうやら言語学習をするための錠らしい。俺は言語理解のレベル10を持ってるからいらないな。
『なにかしら、これ……鍵?』
「なんだか不思議だね! 鍵って外側からかけるものなのに、内側に大事にしまわれてたよー」
『……確かにそうね。ねえカズマ、何か知らない?』
『知識の提供はNGなんで』
『ケチ!』
そういう契約だろ?
文句言うなって。
「あ! ナターシャちゃん見て見て! ここ! 側面にスイッチがあるよー!」
『本当ね……って、だからスイッチを見たらとにかく入れようとする癖やめなさい!』
「ほえ?」
言いながら桃井さんは錠前の錠を上げた。
ロックが解除される。
『だ、大丈夫なの!? なんともないの!?』
「はえ!? ナターシャちゃんの言葉が、翻訳アプリを使わなくっても分かる!?」
言語理解レベル1は確か、簡単な外国語を聞き取るくらいができるスキルだったか。じゃあ言語学習は? と調べてみると、こちらは文字通り多言語の学習効率が上がるスキルらしい。レベル1があると無い時に比べて1割多く勉強したくらいに学習が進むとある。
(ははーん。この錠前を見つけた人にダンジョン文字の解読を期待してたっぽいかな?)
コード:
言語理解のレベルが上がれば、そのうち多言語の読み取りが可能になる。
そうすれば1階にあったダンジョン文字の解読も進み、秘密の抜け道が解放されるようになるわけだ。
(もっとも、いきなり70層に飛ばされて生きて帰れるのかどうか怪しいところだけど)
いや、それが目的か?
「なあルナ。錠前って、魔物でも使えるのか?」
「場合によりけり、だよ。口の無い魔物がブレス系のスキルを覚えられる錠前を開いても何も起きないよ」
「逆に言えば、種族的に使用が問題ないスキルなら使えるってことか?」
「そうだよ?」
ふむふむ。なるほどなるほど。
と、いうことは、だ。
『ぴぎー! ぼ、ぼく悪いスライムじゃないよ!』
『はみゃ!? マスター! スライムです! 倒しますか? 潰しますか? 斬りますか!?』
『落ち着け』
視線を動かすと、そこに一匹の魔物が隠れていた。
水色のジェルでできた体を持つ魔物。
一般的なスライムだ。『嫌だ―! 死にたくなーい!!』と叫んでいる。お前は一流の二流か。
「はれ? 灰咲くん何してるの?」
「スライムとお話し」
「わー、楽しそう! あたしもやるー! はじめまして、スライムさん! あたし
『ちょ、ちょっと桃井さん! 魔物に不用意に近づいたら危ないって!』
笑顔で軟体動物に話しかける桃井さんを、ナターシャが腕を引いてひきはがす。
「アカネ」
「はえ?」
呼びかけられた桃井さんが、きょろきょろと声の主を探している。それから小首をかしげて、スライムに問いかけた。
「もしかして今の、スライムさんがしゃべったの?」
「……うん。アカネ、ぼく悪いスライムじゃないよ」
「わー! すごいすごい! ねね、お父さん! この子うちで飼いたーい!」
「誰がお父さんか!」
このスライムはどうやら、この部屋の中でコード:ソフィストを使い続けて言語理解のスキルを高いレベルで保有しているようだ。
それはそれとして、俺はこいつ嫌い。
(俺ですら桃井さんのことは苗字プラスさん付けなのに、スライム畜生が名前呼びだと!? 許せん!)
いっそ消してしまおうか……。
「ねね! スライムさん、一緒に冒険しようよ!」
「アカネ、ぼくを殺さない?」
「うん! あたしたち、もう友達だよー」
ん?
そうか。
いくら名前呼びしていても桃井さん視点だと所詮友達。だったらそう焦らなくても……。
いやいや待て待て。
名前呼びって時点で一歩先を行かれているのは事実。
やっぱこの場で事故死に見せかけて――
「うん! 一緒に、冒険がしたい!」
「やったー! じゃあスライム隊員! あたしのことは桃井隊長と呼ぶように!」
「はいっ! 桃井隊長!」
はあ。まあ、今回は見逃しておいてやるか。
器量の小さい男だって思われるのも癪だし。
「あ! それとさ! 灰咲くん!」
「え? あ、うん。何?」
「ナターシャちゃんのことはナターシャって呼び捨てにしてるのに、どうしてあたしはさん付けなの?」
「うっ、それは……」
意識してるからです、とは言えないよな。
「茜って呼んでもいいんだよ?」
「えと、その」
「ダメ、かな?」
なんだこのかわいい小動物は。
くっ、そんな目で見られたら、俺の答えなんて決まり切ってるだろ……っ!
「あ、茜」
「はわぁ! うん! なあに? 灰咲くん?」
あ、俺の呼び方は現状維持なんですね。
知ってた。
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