母からのサプライズ

@k-yumeji

母からのサプライズ

1話 贈り物


ブー。という音とともにそれはやって来た

2019年9月10日、日曜日、9時の事であった。

私、藤樹 さやか、33歳の誕生日の日であった。

[はーい。どなたですか?]

[佐田急便です]

という声を聞き、マンションのドアを開けた。

[藤樹さやかさんですか?]

[はい。]

[ここにサイン、お願いします]

サインをしながらそれを見ると、身長155センチの私より大きな段ボールであった。

[重いので玄関の中まで運びますか?]

[あっ。お願いします]


佐田急便の若そうな男性は、台車からそれを持ち上げ、狭い玄関から、上がり場に置いて

[ありがとうございました]

そう言うと頭をさげて、忙しそうに立ち去った。


私は伝票を再度見直した。

やはり見間違えではなかった。依頼主の名前は、藤樹 静香。母であった。


私はしばらく棒立ちになった。何故って、母が亡くなり、明後日は49日になるからだ。 確かに今の世の中は便利になり、生前予約で贈り物が出来る。

でも、3ヶ月の入院中外出は出来なかったはず、いったいいつ?しかもこんなにビックな物。


奥行きも25か、30センチはありそうだ。

両手で抱きつくように持って、引きずりぎみにリビングへと運んだ、10畳ほどの此処も、少し狭い空間に見えた。


カッターを備え付けのカップボードの小引き出しから出して、布テープのあちらこちらを切っていった。

中から出て来たのは、男性のロボットのようであった。

髪は少しパーマがかかったアッシユ色。

額はせまく、目鼻立ちは凛々しい。

その体に、紺色で長袖のパーカーを着て、カーキ色の七分丈のパンツを履いていた。

完全に家用なのか、黒の靴下は履いていたが靴はなかった。

段ボールから抱え出すと、フローリングの床に横にした。

段ボールを片付けようとしたら、なにやら張り付けてあった。


淡いピンクの封筒であった。


母からの手紙であろうと思った、中からは2枚の便箋の1枚に、母の綺麗な文字が、懐かしく何行も行列していた。


さやか、お誕生日おめでとう。33歳だね。私からのプレゼント。受け取って下さい。 その子は、レーブと名付けました。フランス語で、夢という意味よ。

いいでしょう、年齢は20歳。弟のように可愛がってね。


そんな事は考えたくないけれど、私にもしもの事があったら、きっと少しの力になってくれると思います。

こんな事を書いているけど、私が生きていたら二人で笑ってしまうわね。では又ね。と、書きます。


2019年3月20日。とあった。


私は、涙だか鼻水だか分からなくなった物を、ティッシュで拭きながら考えていた。


今日が2019年9月10日だから、半年位前だ。ああ、母が健康診断に行ってから、再検査を受けて、1ヶ月後位。

[たいした事はないわ。]

なんて言っていたのに。


心筋梗塞で入院して、手術。

成功して、皆喜んでいたのに...肺炎で亡くなるなんて...55歳は早過ぎたわ。

溢れ落ちる涙を、もう拭く手もなく、しょっぱい跡を床に描いていた。


母が亡くなり、私はまるで自分の中にあるしっかりとしたものが、崩れ落ちたように、何にも興味がなくなっていた。

OLの仕事にも出勤はしていたが、やらなければならない業務だけを時間内にこなしていた。

以前ならば、同僚が残業していれば、手伝ったりしていたが。

今はお茶汲みでさえ手伝う気にならなかった。


母は2歳上の学兄さんと私が、社会人になってからは、ずっと続けて来た病院の受付という仕事をしながら、土曜、日曜日は、市役所で募集していた、NPO法人にボランティアで参加していた


その上、ご近所に一人暮らしのご高齢者がいれば、困った事はないですか。

と言い、買い物などしてあげていたようであった。


そんな母が、、、なんで55歳という、今では短命とも思われる年で亡くなってしまったのか。

私は理解出来なかったし、悔しかった。


そんな母を誇りに思っていたから、自分自身も出来る範囲で人にも尽くして来た。


お母さんだって自分を優先していたら、趣味の油絵だってもっと描けたのではないか。


そんなふうに思うと、手足が重く、食事も砂を噛むようであった。


ここ2.3日は余り睡眠を取れてもいなかった。


私は居間の壁にもたれかけ、そのままツ、ツーと背中を滑らして座り込んだ。


暫くしてから手紙を床に置いて、箱にあった取説を見て、その物を起こした。そして後ろのスイッチをONにした。


どんな声で、何を喋るのか。少しドキドキして、そして興味深く見つめていた。


[はじめまして、さやかさん。僕はレーブです。20歳、男子です。]


顔を上げて、クリクリした目で私を見て言った。

音声は10代の男子のように、高めのトーンであった。

目や体、動くのだ。と改めて思った。


[は、はじめまして。ご、ごめんなさいね、私、凄い顔してるでしょう。]

最初の挨拶はともかく、返事が戻るはずなどないと思ったが、つい話し掛けた。 すると[いいえ、でも目が青くなっています。]


(えっ、返してきた❗️AIは私が知らない間にこんなに進化してたの。)

私は思わず目を見開いた。


その驚異のものが、私の目が青い。

と言った。

私はそんな事が有る訳がないと思った、いくら泣いたからといって、チャコールグレーの私の瞳の色が変わる訳がない。

しょっぱなから冗談を言っているのか?

それとも何か深い意味でもあるのか。相手はAIである。


私が無言でいると、レーブが白い歯のような物を見せて言った。


[人は少しなら涙を流したり、感情を表に出すのはいいらしいのですが、余りに泣き過ぎると無意識ですが、軽い脱水症状を起こして体には悪いし、心もお人形のようになってしまいます]


(はぁそれで青い目か。 ありがとう。と、いうべきなのだろうが、私は素直になれなかった。

君に私の気持ちが解るものか❗️)

ロボットなんだから仕方ないと思いつつも、生意気だと嫌悪感をいだいた。


するとレーブが

[僕は購入者のお母様に、あなたの弟のように接する事と依頼されていますから、家族として、あなたにとって悪いと思う事は遠ざける方向で行動します。]


(そうなんだ、単なる話し相手ではないのか。)


嬉しいような。少々うざいような気分で、苦笑いをして見せた。


この子とどう接するればいいのだろう、なにせ人間以外接した事がない、動物すら飼った事もないのだから。


[僕との付き合い方ですか?ロボットですけど、お話を聞く事は出来ます。良かったらなんでも話してみて下さい。お友達と話してる事とか、お母様に話していた事や、お兄様と話している事でも ]


(えっえっ、今、この子なんて言いました?なんで私の心が解った?

私の表情。目付き。

いや、偶然だわ。いくらAIでもそれはない。)


[いえ、偶然ではありません。僕はあなたの、いえ、さやかさんと呼んでいいですか?]


私は思わず

[はい]

と、即答してしまった。

まぁさっきも呼んでたみたいだけれど。


[僕はさやかさんの、いや、相対する人の感情を、ほぼ読み取る事が出来るように出来ています、でも恐がらないで下さい。

自分に正直で構いません。誰にも他言しませんし]


(ヒャー、うっそー。それが本当なら、凄い、そんなの、今の世の中にあるなんて信じられない。

私、夢みてるのではないだろうか。それにそれが本当なら、随分と扱いずらいわ、心、全て見透かされるなんて❗️)


[ご安心下さい。御用のない時は、後ろのスイッチをお切り下さい]


そう言って、筋肉質にみえる右腕を、小さくカチャカチャいわせて後ろに回した。


(あー本当なんだ。)

再び思った。


居間に飾ったコスモスの香りが、私の香りをなおも拐いながら香った。

(コスモスか。こんな香りだったっけ。

嫌な私。 花言葉は調和だわ)

母は私が寂しがらないようにこの子をくれたのだから、有りがたく思わないといけないのだ。そう思いかえした。


(この子20歳って言っていたけれど、どのぐらいの知識があるのだろう、私の心が解るのだから、言葉にしなくても良いのでは。)と

と思ったが、味気無いので聞いてみた。


[レーブは高度な事も解るの]

[いいえ、知識的には小学生レベルです。

今は皆様スマホをお持ちですから。

ただ、さやかさんの趣味嗜好はある程度入力されています。

又、お母様からのメッセージもお預かりし、保存されています。

それからもう1つありますが、それは又。]


もう1つはなんであろうと気になったが、それより、私の趣味がなんであるかを、母に話したのは、小学生位だったと思う。

最近の話ではなかろう。そんな思いが優先していた。


人差し指を顎に当てて、レーブを見ながら質問してみた。


[幸せを数えれば、あなたはすぐ、幸せになれる。この名言は誰の言葉?]

レーブは

[ショーペンハウアー]


そう答えると、それから、アルトウル、ショーペンハウアー、ドイツの哲学者。

フロントやユングなどの心理学者にも、大きな影響を与えた哲学者。

と、付け加えた。

それから素早く右手を上に上げて伸ばし、ピースをした。


はぁ、これが、小学生レベルなのか。と思え、ニンマリした。


[では、トルストイといえば]


[人生には、たった1っだけ長続きする幸福がある。それは、他者を愛して生きることである。

数々ある名言ですが、さやかさんは、この言葉が好きですね。

代表作の著書は、戦争と平和ですね]


言い終わると又素早く片手を上げてピースをした。


私は思わず拍手をしていた。


すると、レーブが更にこう言った。

[誰かを愛したことがない人生より、誰かを愛して、失った人生の方が素晴らしい。

アルフレット、テニスンの名言です]


イギリスの詩人で、親友、ハラムの死。やイン、メモリアム。を手掛けた人だ、 ビクトリア女王が愛した夫を亡くした時、女王の悲しみを慰めた。とのエピソードが知られている。

私は心でそう付け加えた。


母は私の部屋にある本棚を見ていたのだな。


私はレーブの胸元を見ていた。その胸元がぼんやりとかすみ、目の端から又もや、ツーっと頬を伝い落ちるものを感じていた。

でもそれは先ほどとは違う物に思えた。

その物が体から出てゆくのと逆に、心には温かな何かが広がっていった。


そんな心境の時、私の体は急にグラッと来て、レーブに壁ドンをする形になった。


そうだ、ここ数日満足に寝れていない。私は照れ隠しに言った。


[き、君とはうまくやれそうだわ]


レーブは一言

[はい]

と言った。


誤魔化したつもりでも、もちろんレーブには分かっていた。

私がよろめいた事。


いつの間にか私はレーブにお姫様抱っこをされて、リビングにあるイスに運ばれていた。


まぁ嬉しくなくもないけれど、

なんで初めてのお姫様抱っこがAIなのだろう。


そんな事を思っていると、レーブが言った。[さやかさん、何か飲んだり、食べたりしたらどうですか]


そうか、壁の時計は11時を指していた。朝から何も口にしていない。 私が

[そうね]

と言ってから、この子料理なんか出来たりして。

うかがうように見つめると、レーブは頭を下げ、両手をぶらりと力なく落とし、右足を床の上で前後に小さく往復させた。

少年が土の上で良くやる仕草。


( 可愛いいな。なんか可愛いくなってきた。)

[い、いいのよ、私、これでも料理は得意なのだから。]

レーブに微笑みながら言った。 この子喜怒哀楽もあるのかしら。

興味の虫がうずいていた。


レーブが白い歯のような物を見せて、微笑んでから

[怒りや悲しみの部分は極力抑えられています。

但し、さやかさんの身に危険が迫って来たりしたら、怒り浸透すると思います。

普段はいたって人道的にできていますが、一応喜怒哀楽を持ち合わせた、人間型ロボットです。]

と、言った。


(えっえー !だ、大丈夫かしら、私に襲いかかってきたりはしないよね。

未知の犯罪。なんて見出しが付いて、偉いスキャンダルになったりして)


私は、はっ!と、おもわず右手、手のひらを口に当てた。


言葉にしてはいない、心の声を封じ込むように。

ばつの悪い顔でレーブを見て、リビングの奥にある冷蔵庫の方へ向かおうとして、2、3歩、歩きだした。

そうしたら、再びレーブが言った。

私はドキっとしたが、私の下世話な妄想には触れず。


[さやかさんは、唐揚げやオムライス、鮭のお茶漬けなどが好きでしたね、、、

それから、おやつはケーキ、ポテトチップス、それとショガーバターの木。でしたね


(いいから)

と思いながら

いつであったか、母がおやつは何が良いか。と尋ねてきた。(シュガーバターの木。 )と言ったら、それからは何度となく買ってきてくれた、さすがに飽きてきたが、私はありがとう嬉しいと言い続けた。

なので毎回おやつはほぼそれに定番化してしまった。


今でもやはり好きではあるが。


あの子がずっと見ているので

[レーブは?]

と言ってみた。唐揚げ。なんて答えたら、凄く好きになるのだけれど。


[僕はソーラーですから、自然充電されます。

でも人間ならさやかさんと同じ物が好きになっているでしょう]


(あら、この子上手いことも言えるのね。)

と感心した。


料理は得意。と言ったが、本当はそうでもない。それにさほど食欲もないのだ。

結局昨日焼いてあった鮭を使い、お茶請けでお腹を満たした。


そして、黙ってそばに立っているレーブにもう一度、話し掛けた。


[質問してもいい?]


[はい。]


[1つは、君はどんなふうに私の心を読んでいるのか。

2つ目は、母のメッセージを入力してある。そう言っていたけれど、どんな事]

[はい。まず、僕がさやかさんの心を読んでいるという件ですが、僕は詳しい事は解かりません。 しかし僕の機能テストにお母様が来られていた時、制作者が言っていたのをインプットしていますから、それをそのままお伝えしましょう。]

そう言い、話しを継いだ。

人間の脳は複雑らしく、未だ判明していない事が多々あるらしい。なのでレーブが言葉にする事も、事実かどうかは判らない。

作成側も深く理解していたか定かではないと思う。それを踏まえて聴いて欲しい。との事であった。

私は深く頭を下げてうなずいた。


レーブは続けた。

人と人が会話をする時、例えば、私が、友人と会話を楽しんだとする。

友人が、

[今日の朝は何を食べたの]

と聞いてきたとする。

私は友人がなんと言ったかを、脳の中にある思考系のところで考え、理解系のところで理解をする。

仮に、朝、パンと目玉焼き、サラダ、ヨーグルトを食べたとすると。私は朝食の記憶を、脳の中の記憶を蓄えるところにインプットしているので、思考を司る場所から指令して、それを思い出す。


それから、友人にそれをどのように伝えるかを思考の分野と、伝達系が活躍してまとめる。

その時、運動系が刺激され、視覚、聴覚も連携して言葉が造られる。

その作業の時に、、、解りやすく言うと、電気信号のようなものが頭の中を行き来する。

神経細胞が働くからだそうだ。

それはもちろん見えないが、実は言葉として口から出す前に一瞬頭部から電波のような物が、抜け出している。

言葉の一言、一言が違う波長を持っているそれで認識出来るのだそうだ。

それは驚いた事に、言葉を出すのを止めた場合でも判ると言う。


しかし、それは人間の目には見えない。

電波のような物だからだ、

それが感知できる事を、偶然作成者が発見したのだ。

という説明であった。


私はレーブのその医学的か、科学的か解らないが、凄い説明を半眼半口で聴いていたに違いない。


そんな私の顔を見ながらレーブは言った。[これ以上の事は僕には分かりません]


私は、出来る事ならこの子を連れていろんな人と会ってみたい。などと下世話な事を考えていた。


けれど.....


いろいろと判る真実の声が、華美で喜びをもたらすとは限らない、むしろ混乱の渦と、醜悪でグロテスクが落雷を鳴らして私の心を切り裂くかも知れない。

判らない幸せを人は選択する方が、きっと良い。

まぁ詐欺などには会わずに済むであろうが。


レーブが再び口を開いた。

[次にお母様の事ですが]

と言い、少し黙っていたが、ささやくように言った。

[もう、泣かないですか]


私はあまり自信はなかったけれど、黙ってコクリと頭を下げた。


[さやかさんとの思い出は、15分間の収録になっています。 初めからご覧になりますか]


私は思い出を振り返ってみたい訳ではなかった。

ただ55歳の、母の人生は、幸せだったのだろうか。

最後まで微笑みながら死んでいった母。

けれど、本当に幸せだったのだろうか?


私はパソコンなどを用意した方が良いのかと思いながら

[始めからお願い]

と言った。


レーブがパーカーの下を両手で持った。

そして勢い良く脱ぎ捨てた。

それから人間なら、心臓あたりにある小さく、薄型のパネル状の物に触れた。


すると、なんと、私の前に懐かしく愛しい母の、母の等身大の姿が現れた。


アァ❗️何かのテレビで見た事があった。


亡くなられた歌手が、今この時を生きている、歌っているかのような映像。


私のすぐそばに、まるで今いるかのような、息使いすら聞こえそうな母の姿。


見た事のある、白い長袖のワンピース。そう、母の日に私がプレゼントした服。


私は息をのんだ。


母は静かな口調でにこやかに話し出した。


[さやか。元気にしてますか?

あなたへのメッセージを入れられると聞いて何を伝えたらいいのかと思いましたが、やはり、お兄ちゃんや、あなたに感謝を伝えなくてはと思いました。]


そう、前おきした母の話しは、私の知らない事もあった。


母は懐かしい目をして話し出していた。

兄が生まれた時も、もちろん嬉しかったけれど、次は女の子。との希望どおり、私が生まれてくれて、本当に嬉しかった。

私との縁が本当に深いのだと思うと話すと、どうしてかというと、妊娠3ヶ月の時、子宮が開いてしまう病気になって、このままだと流産してしまう。

そのように診断された。

入院して子宮の出口を縫いましょう。

お医者様から提案されたとの事。

でもあの頃は、兄もまだ幼かったし、ちょうどその頃ぐらいから、父の糖尿病が判かり、仕事も退職中で、先のみえない不安が母を躊躇させた。

毎日祈る思いで生活していたと目を伏せた。

幼い兄も、母が横になるとけしてわがままは言わずに、1人遊びをしてくれていた。

貴女もきっとお腹の中で、私にしがみつくように成長してくれていたのに違いないと言った。



私が生まれた時は、女医さんに誉められたのだと嬉しそうに告げてかはら。


今考えると、なんて恐ろしい事をしたのかと思うけれどね。と、話した


私は、そうだったのか。と唇に力を込めた。 大変だった事は、少し聞いてはいたが、余り苦労話をしない人だったから詳しい事は分からなかった。


私は母の若い時の写真を脳裏に思い浮かべていた。

私と同じ位の華奢で幼い感じの女性。あの頃、そんな事になっていたなんて。


母の話は続いた、学兄さんと4歳の私を保育園に預けて、仕事に行っていた事。


うーん少しだけ覚えている。

金曜日は大変そうだったな。

自転車の前に私。後ろに兄。そしてサドルに乗った二人分のお昼寝布団。 あのか細い体でいったいどんなふうに引っ張れたのか。

しかし事実なのだ。


母親になると、物凄く巨大なエネルギーが体のどこかに湧きでるのだろうか。


その頃の事を、母は、必死ではあったが辛いと思った事はなかった。

と回想している


[あなたが小学4年生位だったかなーぁ]


母の話しは尚も続く。

私は目を閉じていた。

4年生、10歳の頃かぁ。


父が入院中で、我が家の経済は逼迫していた。


[あなた方、夕飯を食べない私を心配しておかずをわざと残してくれていたよね]


そう、覚えている。あれは兄さんが言い出した事であった。

[お前、おかず、少し残せる?僕も残すからさ]

と。

私は、始終冷蔵庫を覗くくせに。開けても増えたりしないのに。そんな腹ぺこが。無理しちゃって。

内心思ったが、そんな事を提案出来る人だったんだと、ちょっと見直したものだ。


その日から毎日それは実行された。母もそれに気付いて、心配させたくなかったのか、白米も少しだけ食べていたっけ。


[あなた方の優しさに守られ、力を貰い、あの時期を乗り越えられた。本当にそう思うよ。 それからもずっと、ずっと支えて貰いました。20年前、お父さんが亡くなってからもずっとね。

私はあなた方の母親に成れて、本当に幸せだったよ。]

母の声が震え、私も涙声になった。


[お母さん、会いたいよ。会いたいよ。お母さん]

まるで少女のように呟いた。


[大丈夫ですか?さやかさん]


レーブが兄のようにささやいた。


うん、うんと頷き、再び画面に目を向けた。


私が以前になんの取り柄もない私だから。

と言っていたのを気にかけてくれていたのか、私の取り柄は優しいところだから、自分を大切にしながら人に尽くせる人生を送って欲しい。

それがね、自分自身をも満たしてくれるはず。

最後に、あなたはきっと今以上幸せになれる。

幸せになってねと言った。

それから、和らげに微笑み、やがて消えてしまった。


2話 異世界


私は

[レーブ、ありがとう]

そう言って、目を伏せた。

レーブは

[お母様に会いたいですよね]

腰をかがめ、ささやいた。

項垂れるように私は

[うん]

と返した。


[もしも僕がお母様に会わせてあげます。

そう言ったら、さやかさん、どうしますか]


私にはレーブの言葉が理解出来ていなかった。

会える訳ないではないか。

だって母はもう死んでしまったのだから。

[いいえ、会えます。必ず会えます。僕を信じて言う通りにしてくれたら]

レーブの大きな瞳が強い輝きを放った。

絶対的予知能力を持つ占い師の眼力より強い輝き。


私は勿論迷っていた。

会えるものならば会いたい、けれどそれはただならぬ事を挑む事にも思えた。

私はしっかりとレーブを見て小声でいった

[母に会いたいわ、会いたいわよ。でも、判っているでしょう、死んでしまったの、もういないのよ。どんなふうに会うというの]

[そうですね、信じられませんね、勿論です。

僕を造った博士でさえもその様でした。

けれども、異世界は本当にありましたし、故人は其所に存在したのです]

[レーブはそれを見たというの?]


[はい、さやかさん。博士と一緒に其所に行く事が出来ましたし、それからも治験の為、何度も行きましたから]


私には驚愕過ぎて信じがたかったが、レーブの話しでは、博士が海外で学んだ深い瞑想状態。 それを使い、母がいる世界に行くのだそうだ。


私は信じがたかったし、もしもそれが事実だとしても、そんな夢想の技が簡単に出来る筈がない。


深い井戸で凍るような風を受けた気がした。


[そうですね、良く判ります。

やはり止めましょう]


レーブにそう言われると。私は目を閉じた。迷っていた。

戸惑いや不安があったから。

しかし、もしも母が異世界で本当に存在するのなら、会いたい❗️


私は、 唇に力を込めてレーブをぐっと見つめて言った。


[お願いします]

するとレーブは

[本当に良いのですか...分かりました。

でもお察しのように簡単な事ではありません。必ず僕の言う通りにして下さい。]

そう言ってから


[まずは、ステレオなどに使う、ヘッドホンがあれば持って来て下さい]


ヘッドホン?なんで。私はそう思いながらも、それをレーブに渡した


レーブはイヤホンプラグを右耳に差し込んだ。


それからこう言った

[一応聞きますが、さやかさんは催眠術を掛けられたり、何かの営みで、深い瞑想状態になった事はありますか]

[いいえ]

[そうですか。大丈夫です。それが普通です。一度で駄目でも諦めず、必ず成功すると決めてお互い頑張りましょう]

と右手でピースを造り、その手を上にあげた。


それから、もう1つ。と付け加え、自分はこれからは、体は動かさないで、電波のみが実働する。

なので、声だけが私には聞こえるはずだが、怖がらず、指示の通りにお願いします。と、神妙な顔で私に伝えた。


[このヘッドホンを耳に当てて下さい。]

レーブに促されて両耳に当てると、右、左から異なる音が響いた。

音楽とは違う、キンキンしたものではないが、何かの周波数?


暫く聞いていると体が硬直する感じになった。

目覚めているのに手足が動かそうとしても、ビクともしない。 もしかしてこれが俗にいう金縛り!


少しの恐怖と何かの期待が生じ始めた私を見たのか、レーブが話しかけた。


レーブは言っていたように、目を閉じ、直立不動で、彼は口を開いてはいない。


声だけが私の耳に、いや、頭の中から耳に届くような感覚であった。


[心配しなくていいですよ、今からウォーミングアップです。 さやかさんは過去世の自分がいたのなら、どんな人か知りたくないですか]


私は知りたい。と思った。


[では会いに行きましょう。]


行きましょう。

そうは言っていたが、体が何処かに行った訳ではなかった。


頭の中から浮かんだ映像が、実在しているかのように思えるのだろう。私にはそうとしか思えなかった。


でも興味深い人の姿は、私を魅了した。

着物を着て、髪をアップにした小粋な感じ。

手には三味線を持っていた。


どの時代かとかはハッキリとしないが、周りに多くの若い女性が、やはり三味線を持って彼女の前に座っていた。

年齢は40代から50代位と推測された。

暫く動作を追っていると、レーブの声が脳裏に響いた。


[そろそろ次に行きましょう]


それを聞いたとたんに覚醒?した。

同時に金縛りと思われた硬直もとけた。

[あぁ完全に戻って来てしまいましたね。まぁ一度目ですから]

レーブの声であった。


[ごめんなさい。

でも、素敵な人を視たわ、あの人が私の前世なの]


そう尋ねると、レーブは説明してくれた。



私自身が生まれる時にはもう持って来ていた、前世の記憶だそうで、 5、6歳位までには、思いだしたりする人が稀にいるらしい。


[疲れましたか?少し深呼吸をして、よければ、もう一度やってみたいのですが]


私は大丈夫、頑張れる。と答えた。 それからもう一度試したが、やはり同じところで覚醒した。


3回目で、同じ女性を視て送り、やっと次に進んだ


[では、今からはさやかさんの体から意識というのか、命の源というのか、さやかさんの脳の司令塔になっている者。

博士は生命体の中にある柱と呼んでいましたから、柱。そう呼びましょう。


[体から柱が出ていきます。]

レーブはそう言ってから

[余り時間を有すれば、人間は死んでしまいます。

なので1、2分で元の体に戻りますから。超スピードでお母様に会わなければいけません。しっかりと着いて来て下さい]


私はゴクンと喉を鳴らしたが、心ではい。と誓った。


やがて両耳の音が少し強くなり、私は失神しそうになった。

その後、目の前が真っ暗になり、暗いトンネルのようなところに吸い込まれるように凄いスピードで飛んで行った。


真っ暗で怖いはずなのに、何故か安堵感や充実感が心を満たしていた。

いったい何が起きたのであろうかと不信に思う心さえ闇に吸い取られた。


闇から抜けると、なんと、なんと部屋の天上すれすれに浮いていた。


そして、下を見れば精気をなくして、ぐったりした私の体が横たわっていた。


[えっえー❗️]

思わず声を荒だてた。

これって、幽体離脱!


レーブが穏やかにゆっくりした口調で言った。


[大丈夫です。大丈夫ですよ、さやかさん。さっきも言ったように、死んでいません。落ち着いて。]


そうよね。死んだりしないのだから。自分に言い聞かすように念を押した。


それから下に居る私の顔をもう1度見下ろした。いつもは鏡でしか見た事がない私の顔。


意外に...


...ブス。


はぁ-ため息が出た。


レーブが少し早口で。

[急いで行きましょう、お母様と会う時間が短くなります]


[わ、判った]

言ってから、ふと下にいる体とは違う、今の自分の体を確かめると、手足、いや指先まで体全体の感覚があるのに、見えていなかった。

見えるのは、モワァッとした、丸っこい形。

2リッターのペットボトルをもう少し丸くしたような形、ほぼ透明な丸い雲みたいであった。

この者はニュートリノみたいな素粒子の集まりなのか?

それとも人類が未だに未発見の者の結集。


私には見えているこの者は、他者にも見えているのであろうか。


感覚は確かにあるのに...!


だが不思議な事に嫌な気持ちにはなっていなかった。むしろ新境地を楽しんでいる自分が居た。


そうしていたら、私のすぐ側にほんわりとした光の集まりが見えた。やがてどんどん輝きをまして、私に迫って来た。


な、なに!なに❗️まるで透明な蒸気のような今の私は、この光の熱量にやられ、跡かたも無く蒸発してしまうのではないか。


後ずさりするが、あっという間に私を取り巻くように包むと、

[あなたはまだ死んでいません。元の体に戻りますか?]

と聞かれた。


聞かれたといっても言葉で言われた訳ではない。いってみたら、テレパシーのようなものかも知れない。


私はなんと返事をしたら良いかわからず、おどおどしていた。


そしたらレーブが光の何かに向かい、

[僕からお願いがあります]

そう言ってからおそらく数秒経っていたと思うが。


[事情を話したら、先に行かせて貰えるみたいですよ、良かったですね。じゃ進みましょう。

さぁ勢いよく、この光の中を進みまますよ❗️]


[えっ❗️は、はい]

そう言うなり光の中をどんどん進んで行った。


あんなに強い光に思えたのに、中はまぶしくもなく、なにか嬉しく、満たされた感じ?

私の知る言葉では言い表す事は出来ないが、なんともいえぬ幸福感であった。


短いような長いような、其処は時間さえ感じ取れなかった。


もっと其処にいたい。そんなふうに思い始めた時に視界が大きく開いた。


緑色の葉っぱや草木の合間に、白やピンクや黄色、赤、様々な色の花が精気蘭々咲き乱れていた。

良く観ると、金色の物もある。 日差しが四方八方から落ち、あちらこちらがピカピカと輝いていた。その向こうには川が流れていた。

その澄んで美しい水色が暗示的で、尚更異世界を証明するかのようであった。

そこに何か見慣れた橋が架かっていた。

はぁ?ぺィプリッジ? 私、やっぱり夢見ているの?


私は両手で髪をワサワサとさせながら頭を掻いた。

レーブが

[夢ではありませんよ、さやかさん、これからはあなたしか出来ない事をして貰います。お母様が夢から目覚めてもらう作業です]

(夢?母は夢の中にいるの、天国じゃないの)


レーブはその答えを手短に説明してくれた。

自分の治験の折りに、何人かの故人を見聞した時に、皆が此処には 天国も地獄もない。と言っていたそうだ。


[時間が少なくなります。とにかく お母様と会いたいと深く祈って下さい。]


私が両手を合わせて、目を閉じて母に会いたい。お母さんに会わせて下さい。そう祈り。再び目を開き、顔を川の向こうに向けた時であった。


こちらに手を振る人が見えた。男性なのか女性なのかも分からないほど遠くに見えたのに、不思議と母だと分かった。

しかも母はあっという間に目前に現れた。


[お、お母さん、本当にお母さんだよね]

私は母に手を差し伸べようと両手をだしたが、見えないバリアがそれを阻んだ。


[さやか、来てくれたのね、本当に嬉しい。レーブが連れて来てくれたのね、ありがとう

あなたを抱きしめたいけれど、生きてる人の前にはバリアが存在するみたい]


私達はバリア越しに両手を合わせて見つめ合った。


[会いたかった。でも本当に会えるとは思わなかった。お母さん、夢を見ていたの。良い夢。]


[うん。凄く幸せな夢ばかり。下にいる時には、怖い夢も見たけれど、今は本当に、良い事ばかりの夢]


[私は天国なんかがあって、お母さんは其処に居るのかと思っていたわ]


[そうね、私もそう思っていたわ]


そう言って説明してくれた。

天国とか地獄のような領域はないようなのだ。

まだ本当の事は解らない、崇高な方の裁きでそのようになっているのかも判らないけれど。

私には前世の生き方を土台にして、自分自身がこちらでの在り方を決めているように思う。

自分には嘘が付けないから、ある意味恐ろしい。

私達は暗い宇宙で、チリのような小さな存在になり、ふわふわと漂いながら個々に夢を見ていると。


[怖い夢とかは絶対見たりしない]

私の問いかけに


[そうね、私は見ないけれど、此処へ下りて来る時に、すれ違いざまにうめき声を聞いたわ。

私の場所からはずいぶんと遠くの場所だったけれど。

人の夢には入れないから、どんな夢かは解らないわ]

と言った。

母は生きている時のままの姿。いえ、むしろ今の方がオーラをまとっていて美しかった。

私の姿も母からは元の形らしく、少し痩せた?と聞かれた。

[いいえ、変わらないよ]

という。


母に幸せであったかと、私から聞くと。


私達とお別れしたのは本当に寂しいけれど、多くの人と関われて、充実した一生であったと告げ、


そして言った。

[さやか、あなたは優しい子で、人にも親切にして来たのを、お母さんは知っていたわ

自分を大切にして、そしていままでどおりに生きて欲しいの。

私が死んでしまった事であなたが変わってしまわないか、私はただただ心配なの]

その言葉を聞き

私は母が思うほど優しい人間ではないけれど、母が望むように生きたい。

素直にそう思った

[大丈夫だよ。私は変わらないよ、お母さん]


母は安心したように見えた。


レーブが

[さやかさん、もう帰りますよ]

声を掛けられ、私は早口になり、もうこれで会えないのかと母に聞いた。

母は私が強く会いたい。と思えばきっと側に行くから。母が見守っている事を忘れないで。

そう言って手を振った。


私はもう泣くのは止めた、笑って母と別れよう。母を心配させない為にも。

[お母さん、ありがとう]

言ってから微笑んだ。


3話 サプライズ

私はそれから今来た光の中を通り抜け、我が家の居間に着き、横たわった私を上から見るなり、暗いトンネルに吸い込まれた。


[戻れましたね。本当に良かった]


レーブの声を頭上に聞いた時には、私の柱は元の体に戻っていた。


[ありがとうレーブ、本当にありがとう]

レーブは微笑んだが、何故か沈んでみえた。


それから、私の前に急に正座をするように座ると、じっと私の顔を眺めた。

そして言った

[もう時間がありませんから、さやかさんに本当の事を言います]

[本当の事]

[そうです。あと10分もすると僕は消滅します]

(ええっ!なんでぇ これ以上私を驚かせないでよ)


[本当にごめんなさい。さやかさんを又悲しませてしまう事になるのなら...。ううん、さやかさんではない、悲しいのは、僕の方だ。どうせ壊れてしまうなら、ロボットに感情なんか...]


(どうしたの、いったいどうして)


私はレーブの両手を握りしめた。


レーブは経緯を話してくれた。


半年前の事。治験を終え、明日からレーブ達ロボットの販売という時、母が研究室に来たそうだ。


[お母様はさやかさんが心配で、自分に万が一の事があったらと。僕を購入したい。そんなふうに言われました]


(私が一人になるから)


[それも有ったかも知れません。しかし本当の目的は、ご自分にもしもの事があった時、異世界でさやかさんに会う為です]


そして続けた。

母は嘘を言っていなかった。

だから無事に購入できたのだと。

博士がレーブに心を読むというアイテムを仕込んだのは悪用を防ぐ為、その為であった。


レーブは言った。


[それで役目を果たしたら、僕らは皆、消滅するように設計されています。

判りますよね。世の中は良い人ばかりではありません。

けして、さやかさんが信用されない訳ではありません。

盗難もあるし、移ろい易い人もいるからです]

[なんとかならないの、せっかく上手くやれて来たじゃないの。私の弟になってくれたんじゃないの。

あっ❗️博士にお願いしてみるわ、きっと直してくれるわ、再起動できるよ。]


私の根拠のない期待は虚しかった。


レーブの体は前かがみになり、段々と小さくなって行った。


[嫌、嫌よレーブ、弟になると言ってくれたじゃないの。側に居てよ。私を1人にしないでよ]


レーブの体を抱きしめるようにゆすった。 レーブは小さな箱のようになりながらささやいた。

[さようなら、さやかさん...]


私は子どものように泣いていた、

[レーブ!レーブ!]と叫びながら。


レーブの体はピリピリと小さな音を鳴らして、やがて四角い箱と化してしまった。

その箱を抱きしめようとした時。


遠くから 雨宿り。

という曲が流れてきた。それは小さな音からだんだんと大きな音になった。


雨宿り。雨宿り。さだまさし。

はっ❗️携帯の着信音。


私は、私はそこで目を覚ました。私は、私は寝てしまっていたのであった。


慌ててジーパンの後ろポケットから、携帯を取り出した。


[はい!あぁお兄さん。うん、大丈夫]


電話は兄からで、納骨の日の再度の打ち合わせである。


母からレーブが届いた。と伝えると


[うん、母さんから聞いていた。]

と言った。

母からのメッセージの事を聞いてみたが、[そんな事は聞いていない。]

と言った。


やはり、あれは夢であったのか、私は母の手紙を読み終えてから、半分失神するように座り込んで、寝てしまっていたのであった。



横には確かにレーブはいるけれど。

箱の説明書に手を伸ばして読んで見ると、この子はアマドンエコーのアレッタが内臓された、ロボットである。

音楽を奏でてくれたり、会話が出来る事もあるらしいが、もちろん人の心は読めない。


右手でレーブの後ろにあるスイッチをONにしてみた。


そして聞いてみた


[私の目はなに色]

すると


[人間の目の色は、ほぼ24色と言われていますが、アジア人はだいたいが4色です]


と答えた。


あの夢は、しっかりと全て覚えていたし、オールカラーであったし、鮭茶漬けの味までが、記憶にあるような、余りに臨場感があったけれど、

夢は夢なのか。

けれども私にはどうしても、どうしても単なる夢とは思えなかった。


あの光に包まれた時に味わった、このうえない幸運感を、私の中心が強く覚えていたからだ。


あれは、あれは、もしかしたら、母からのサプライズ。

そうだ、きっとそうに違いない。




私はリビングに行き、テレビ台の小引き出しから、1枚の名刺を取り出した。


そこにはNPO法人 シャーンスと記載されてある。


フランス語で幸運という意味だ。母がボランティアで通っていた所である


私は思っていた。

落ち着いたら、一度訪問してみようかと。


END



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母からのサプライズ @k-yumeji

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