10
「一体何の用です?僕も彼女も忙しいのですが」
チャールズ様がヘンリー様との間に入ってくださいました。
「俺を助けて欲しいんだ!頼む、少しで良いから話を聞いてくれ!」
必死に頼み込んでくるヘンリー様は、以前家に来た時よりも切羽詰まっているようです。あの時はお話をせずに追い返してしまいましたから、今回は聞いて差し上げましょうか。
「……話を聞くだけなら」
「ローラ、良いのですか?」
「聞くだけです。ここで叫ばれ続けても迷惑ですので」
少し不満そうなチャールズ様を宥めながら三人で別室へ移動し、とりあえず話だけ聞くことにしました。
「ヘンリー様、話とは何ですか?」
「もうすぐこの国は干ばつに見舞われるらしい。対策を考えるのを手伝ってほしいんだ」
全く公務に興味を持たなかったヘンリー様が干ばつ対策ですって?
「失礼ですが、なぜヘンリー様がそのようなことを気になさるのですか?」
「それは……国王の命だ。これが出来なければ、教会送りにされてしまう。だからっ!」
「それは大変ですね。ですが、一介の子爵令嬢に過ぎない私に手伝えることなどありません。他をあたってください」
「待ってくれ!ローラ、君が子爵領で活躍しているのは知っているんだ!君が必要なんだ……。僕がどうなっても良いのか?!」
都合の良い考えをしていらっしゃるのね。何と言われようと協力する気はないですけれど。どうやったら諦めてくれるかしら……。
悩んでいると、チャールズ様が助け舟を出してくださいました。
「ヘンリー様、本当に国王が、あなたに国の重要な政策を任せるとお思いですか?」
「どういうことだ?!」
「干ばつの対策が失敗に終われば、困るのは国民です。そのような重要なことを、国王があなたへのテストに使いますか?と言っているのです。国王はあなたほど愚かではありません」
「お前、何を言って……」
「私がすでに策を打っているということです。国王直々の命によってね」
そうなのです。チャールズ様は、私と出会う前から干ばつへの対策をしていらっしゃいました。私がそれを知ったのは最近ですが……。だから土壌や作物に精通していらっしゃったのでしょう。
「ち、父上は俺をすでに見限っているというのか?!」
「さあ?国王の胸の内は分かりかねますが、少なくとも信頼はしていないでしょう。本当に対策を講じることが出来れば、信頼を取り戻せたでしょうがね」
「そんな……」
「お分かりいただけたら、もう帰ってもよろしいでしょうか。それと、今後ローラに用がある時は僕に連絡いただけますか?彼女は僕の妻となる女性ですので」
「……嫌だ。嫌だ!俺は教会になんか行きたくない……ローラ、頼む。こんな奴じゃなく、俺を選んでくれ!」
呆れたお方です。誰が私を捨てたか忘れてしまったのですね。
「お断りします。私、ヘンリー様に捨てられてからとても幸せなんです。あなたを選ぶ訳ないでしょう?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます