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「チャールズ様、ようこそお越しくださいました。本日案内をさせていただきます、ローラ・フィンレーと申します」


「チャールズ・モーガンです。急な訪問で申し訳ありません」


大人数でいらっしゃるのかと思っていましたが、チャールズ様はお付きの方を一人連れているだけでした。


「構いませんわ。磁器に興味を持っていただけるなんて嬉しい限りです。まずは工房を見学なさいますか?」


「えぇ、是非見せていただきたいです」


悪魔の大公などと呼ばれているとは思えないような柔らかい雰囲気の方です。噂はやはり噂でしかないのかもしれません。



チャールズ様を工房に案内して分かったことは、彼はとても博識だという事です。粘土のことも窯のことも、見ただけで性質や構造を理解したようでした。


「チャールズ様は磁器についてお詳しいのですね。説明することがなくなってしまいますわ」


「いえ、少し書物で読んだ程度の知識しかありません。それに、レディの説明はとても分かりやすかったですよ」


軽口にも付き合ってくれますし、噂とは全然違いますね。最初は緊張しましたが、とても話しやすいので友人と話しているようです。


「工房の案内は以上になります。せっかくですので、本日は磁器のティーセットでお茶をお楽しみください」


一通り案内を終えて、休憩がてら磁器のティーカップで紅茶を振舞いました。口当たりの良さを気に入っていただけたようです。


「他にご覧になりたい場所はありますか?」


「磁器とは関係ないのですが、……あれは豆ですか?あまり見かけない葉ですね」


チャールズ様が指さした先には、我が家の畑がありました。家に入る時に横目で見ただけで気がついたのでしょうか。本当に周りをよく見ていらっしゃるようね。


「あれは西の国から仕入れた豆ですわ。土壌を改良するために使えないかと思って植えてみたのです」


「土壌の改良ですか……確か、植えたまま腐らせて土にすき込むと良いと聞いたことがあります」


「まあ、そうなんですの?試してみたいわ!」


「……もし良ければ、モーガンの土地をお貸ししましょうか?僕も興味がありますし、検証結果を共有してくださるのなら、必要なだけ土地と人手を提供しましょう」


意外な申し出です。確かに食料として使えないような方法を試す余裕がないので、土地が借りられるならばありがたいですが……


「ありがたい申し出ですが、検証結果の共有だけでよろしいのですか……?」


「もちろんです。我が領地にとっても、国にとっても必要な技術になるはずですので」


チャールズ様は自分の領地だけでなく、国のことも考えてらっしゃるのね。


「そうですか、ではお願いします」


こうしてチャールズ様のお力を借りながら、土壌改良を進めることになりました。


それにしても、土壌改良をしようとした矢先に支援者が現れるなんて……渡りに船とはこのことね。

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