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領地の管理に関わるためには、領地の皆さんに信頼していただかなくてはなりません。


私はまず領地の皆さんに謝罪して回りました。


「せっかく送り出していただいたのに、こうして戻ってきてしまいました。ですが、これからはこの領地のために尽力いたします。どうかよろしくお願いします」


私の婚約が決まった時、領地の皆さんは大変祝福してくださいました。私が王家の一員となれば、この領地も少しは繁栄したかもしれません。その機会を壊してしまったのですから、何を言われても文句は言えません。


「ローラ様、頭を上げてください。私達は戻って来てくれてうれしいですよ」

「そうですとも!第三王子にはもったいないと思っていたんだ」

「もっと良い男性が現れますわ。それまでゆっくりしてください」


なんて優しい人達でしょう。この方々のためにも、より良い領地にしていきたいわ。




まず、我が領地の実態を調査することにしました。フィンレー家の持つ領地は本当に小さく、痩せた土地です。人々は農業の他に、裁縫やガラス細工などの手仕事、王都への出稼ぎをして生活をしています。


そのため人々の稼ぎは、天候の悪化や王都の条例変更で簡単に揺らいでしまうような状況です。この状況を少しでも改善したいのですが……。


土壌が改良できれば一番良いのですが、それには時間がかかります。長期的な取り組みとしては良いですが、短期間で効果が出る対策もしなくてはなりませんね。


そうね……我が領地の土は粘土質だから、それを利用して磁器を作れないかしら。最近東の国では分厚い陶器ではなく、薄く白い磁器が流行しているらしいですし。もし作れたら、我が領地の特産品になりそうね。


そうと決まれば、早速土壌の調査をしましょうか。それに陶磁器に詳しい方も探さなくては……。




幸運なことに、領地内の小さな山で採れる粘土が、磁器に向いていることが分かりました。そして東の国から専門家を招き、窯の作成や技術などを少しずつ学んでいきました。元々ガラス細工をしていた職人たちが即戦力になってくれたので、助かりました。


「ローラ様、見てくれ!これが試作品第一号ですよ!」


職人たちが見せてくれたのは、透き通るほど薄いティーカップでした。色も美しい白色で、貴族たちが好みそうな質感です。


「とても素晴らしいですわ!早速いくつか作ってお茶会で披露しましょう」


そうして改良をしながら宣伝をしていき、磁器の食器は少しずつ広まっていきました。




次第にフィンレー領の磁器は有名になっていったのです。

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